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騎士姫
しおりを挟む 他にも可愛い女の子がいないかと商店通りをブラブラした後、ぼちぼち空が暗くなってきたので宿屋に戻る。
長くなりそうな夜の戦の前に先に飯を済ませておくか。
あの酔っ払いパーティがいるからあんまり行きたくないんだよなぁ。
いなきゃいいなぁ。
宿に入るやいなや、ガハハハ!と大きな笑い声が響く。
あ、やっぱりいた。
仕方ない、なるべく奥のテーブルに行こう。
食堂のごついおばちゃんが、料理を運んでくる。
トロトロに柔らかくなった肉と、ゴロゴロ野菜の煮込みだ。
パンとも合うが、酒が飲みたくなってくる味に我慢できず、ビールを注文する。
美味い!戦闘して汗をかいてるからか酒が身体中に染み渡る。
あっという間に三杯目に突入してしまった。
これは飲まなきゃやってられないあいつらの気持ちがちょっと分かるかも。
おっと待ち合わせの時間に遅れてしまう。
急いで立ち上がろうとしたら、トイレに行こうとしてた酔っ払いの戦士に、ぶつかってしまった。
まずい!
「あ、すいませ」
謝罪を言い切る前に、胸ぐらを掴まれたまま壁に叩きつけられる。
凄い腕力だ。
「調子こいて酒飲んでんじゃねぇぞ!コラ!」
まったくもって理不尽な絡みだ。
待ち合わせに遅れたくないし、もう一度謝ろうとしたら、
「冒険者になりてぇのか?俺が稽古をつけてやろうか?」
などと言われ、外に連れていかれた。
ニヤニヤしながら後の二人も同行する。
俺も酒が入ってるせいか段々とイラついてきた。
やってやろうじゃねぇか。
騒ぎを聞きつけた野次馬が数人こちらを伺っている。
あんまり目立ちたくないんだよなぁ。
時間戻そうかなぁ。
「武器は持ってねぇのか?」
「なんだ、案外優しいんだな」
宿屋の側に転がっている棒切れを拾いあげ、戦士に向けて構える。
「これでいいや」
「ふざけやがって!」
戦士が雄叫びを上げ、大剣を構えて突っ込んでくる。
どうせ魔法使うだけだから武器はどうでもいいんだが。
戦士の攻撃はとても遅かった。
グッと魔力を込め、棒切れを戦士の足元に向かって薙ぎ払う。
ボギギッ!
「ぐわぁ!」
両足の骨が折れる嫌な音が手に響く。
戦士が地面でのたうち回り、呻いている。
おっと、魔力を込め過ぎたか?
すかさずナイフ使いが投げナイフを、詠唱を終えた魔法使いが火の魔法を、俺目掛けて放つ。
狙いは完璧だが、見えないくらい薄く創った【風の障壁】により、俺には何も届かない。
「弱いなぁ。
そんなんで本当に魔物がここに来たら防衛出来るのか?」
「なんて事だ。
我々は銀等級だぞ?」
「冒険者じゃないとしたら、どこかのお抱えか?
と、とにかく、我々は降参だ!」
二人の酔っ払いは狼狽しながら戦士を介抱に向かう。
回復してやりたいがそんな魔法あったかな?
【光魔法:回復】
頭に浮かんだ魔法を唱えた瞬間、戦士の身体を光の膜が覆い、程なくして戦士は何事もなかったかの様に、むくっと起き上がった。
酔いもすっかり醒めている様で驚いている。
【回復】すげえ。
「貴方達、何をやっているの!?」
不意に後ろから若い女の声がしたので振り返ると、そこには白い礼服の上に、白銀色の鎧を纏った、気品ある女性が立っていた。
声には少々怒気が混じっている。
おっさんが驚いたように、彼女の名前を叫んだ。
「アディレイ国の騎士姫スカーレット!」
「何故こんなとこに?」
どこの誰か全く分からない……
二つに束ねた青く長い髪、キリッと釣り上がった緑色の大きな瞳、上品さを醸し出す可愛い顔、スラリとしたスタイル。
村人風情には出せない気品を感じる。
だが、彼女を見ていると、何故か胸がズキズキと痛む。
何故だろう?
「見たところ三人がかりで、駆け出しの冒険者を虐めてるところかしら?
しかもこんな小さな村で。
関心しないわね」
スカーレットとかいう女が剣を抜こうとすると、魔法使いのおっさんが手を挙げて慌てて訂正する。
「待て!もう勝負はついたのだ!
我々の完敗だった!」
「なんですって?」
スカーレットが俺を値踏みするかの様に、じいっと観察する。
「銀等級を三人も相手に圧倒するなんて本当かしら?
まさか!?
もしかして貴方、この村に住むエナって女性と知り合いじゃない?」
エナ?あぁ、井戸で水汲みしていた村一番のパツキンボインちゃんだ。
知っているというと、やはりね、と得心いったような顔で頷く。
「貴方は、私がずっと探している人なのかも。
勝手なのだけれど、少し手合わせしてもらえないかしら?」
あ!思い出したぞ。
こいつ俺を刺し殺したヤツだ!
胸がズキズキ痛むのは、刺された記憶が強く残ってるからなのか?
待てよ?
そういえば、時のお姉さんの話じゃ、こいつは勇者を探しているとかじゃなかったか?
となると、俺を勇者とやらと勘違いしている線もある。
ふむ、いいでしょう。
英雄とやらの力、見せてもらいましょうか!
で、サクッと終わらせて、アーニャに会いに行かないと!
「わかりました。
ですが、ここじゃ村に被害があるやも。
丘まで行きましょう。
では、こちらへ」
野次馬を避け、宿の裏へ誘導し、人目が無いのを確認し、彼女を伴って【転移】する。
丘の上まで一瞬で移動した事に、スカーレットは驚愕している。
「え!?そんな!
貴方ほんとに何者なの?
今のは上位空間魔法じゃない!」
俺以外の人間を指定する事で、複数人での同時【転移】に成功した。
成功するかちょっぴり不安だったが可能な様だ。
「ビックリされても困るんですよね」
「まぁ、いいわ。私が勝ったら教えてもらう事にする」
スカーレットが剣を抜くと、青い光が全身を包み込んだ。
【解析】するに、剣による特殊効果発動か、魔法による自動効果発動かは分からないが、スカーレットの能力が飛躍的に上昇した。
【解析】
スカーレット
LV:65
HP:1700→2300
MP:130→260
レベルという概念が追加されたようだが、65という数字はどれくらいの実力なんだろう?
ちなみに魔女エリンはレベル130を超えていたからいまいちピンと来ない。
まぁ、今後比較していくしかない訳だが。
「構えは無しか。では、参る!」
スカーレットが俺に向かって一直線に飛んでくる。
あれ?人間って飛べたっけ?
エリンに教えて貰ってから、独自に自動魔法が発動する様に施した。
エリン程のチートさは無いが、
全能力上昇《バフ》は当然の事、各種属性付与《エンチャント》も行使される。
更に致命傷又は戦闘不能を感知したら数秒間の【時間遡行】を猶予して完全な死を回避できる設定にしてある。
臆病な俺はもう完全な死を体験したくない。
本当は霧等を使っての攻撃無効が欲しかったがどうしても出来なかった。
流石は300年生きる魔女、至高の領域だ。
【時の回避】
今思えば随分と臆病な自動魔法《パッシブ》だと言わざるを得ないな。
スカーレットの剣突を強化された棒で撃ち落とす。
剣を弾き飛ばすくらいは魔力を込めたんだが、スカーレットの剣技がそれをさせない。
高速で襲いかかる連続攻撃に防戦一方になる。
速度も上昇してるのになかなかやるな。
だが、これはどうだ?
空中にいくつもの魔法陣を展開し【氷の矢】を乱射する。
「な!攻撃魔法まで!?羽の盾!」
突如空中に浮いた盾が具現化し、氷の矢の動きに合わせて次々と防ぎ出す。
何そのファンネル?
防御をする必要が無い分、剣撃が止まらない。
なんだこのスタミナは?
もういいや、ちょっと強い魔法を食らって貰おうか。
【炎球】
3メートルはあろう炎の塊が5発、対象を取り囲むように、凄いスピードで襲いかかる。
痛いけど我慢してね。
怪我をしたら治してあげるからね。
「光速剣!」
スカーレットの剣が一際光ったと思ったら、巨大な火球を一撃で粉砕し俺の前に一瞬で現れた。
剣先は確実に胸を狙っており、既に棒で防ぐ余裕はない。
【土魔法:水晶石の障壁】
防弾ガラス並の強度を誇る壁を発動!
まさかこんな魔法があるなんてね。
恐ろしく硬い魔法、俺じゃなきゃ見逃しちゃうね。
ゴン……
「な!?」
透明度が高く、こんな暗い外じゃ見えなくてビックリするだろう?
「この剣技は魔法障壁すら貫通する。防御不能よ!」
止まった剣先から刃を象った光線だけが障壁を貫通して俺の胸目掛けて伸びてくる!
何だよ貫通って!反則やん!
し、死ぬ!!
長くなりそうな夜の戦の前に先に飯を済ませておくか。
あの酔っ払いパーティがいるからあんまり行きたくないんだよなぁ。
いなきゃいいなぁ。
宿に入るやいなや、ガハハハ!と大きな笑い声が響く。
あ、やっぱりいた。
仕方ない、なるべく奥のテーブルに行こう。
食堂のごついおばちゃんが、料理を運んでくる。
トロトロに柔らかくなった肉と、ゴロゴロ野菜の煮込みだ。
パンとも合うが、酒が飲みたくなってくる味に我慢できず、ビールを注文する。
美味い!戦闘して汗をかいてるからか酒が身体中に染み渡る。
あっという間に三杯目に突入してしまった。
これは飲まなきゃやってられないあいつらの気持ちがちょっと分かるかも。
おっと待ち合わせの時間に遅れてしまう。
急いで立ち上がろうとしたら、トイレに行こうとしてた酔っ払いの戦士に、ぶつかってしまった。
まずい!
「あ、すいませ」
謝罪を言い切る前に、胸ぐらを掴まれたまま壁に叩きつけられる。
凄い腕力だ。
「調子こいて酒飲んでんじゃねぇぞ!コラ!」
まったくもって理不尽な絡みだ。
待ち合わせに遅れたくないし、もう一度謝ろうとしたら、
「冒険者になりてぇのか?俺が稽古をつけてやろうか?」
などと言われ、外に連れていかれた。
ニヤニヤしながら後の二人も同行する。
俺も酒が入ってるせいか段々とイラついてきた。
やってやろうじゃねぇか。
騒ぎを聞きつけた野次馬が数人こちらを伺っている。
あんまり目立ちたくないんだよなぁ。
時間戻そうかなぁ。
「武器は持ってねぇのか?」
「なんだ、案外優しいんだな」
宿屋の側に転がっている棒切れを拾いあげ、戦士に向けて構える。
「これでいいや」
「ふざけやがって!」
戦士が雄叫びを上げ、大剣を構えて突っ込んでくる。
どうせ魔法使うだけだから武器はどうでもいいんだが。
戦士の攻撃はとても遅かった。
グッと魔力を込め、棒切れを戦士の足元に向かって薙ぎ払う。
ボギギッ!
「ぐわぁ!」
両足の骨が折れる嫌な音が手に響く。
戦士が地面でのたうち回り、呻いている。
おっと、魔力を込め過ぎたか?
すかさずナイフ使いが投げナイフを、詠唱を終えた魔法使いが火の魔法を、俺目掛けて放つ。
狙いは完璧だが、見えないくらい薄く創った【風の障壁】により、俺には何も届かない。
「弱いなぁ。
そんなんで本当に魔物がここに来たら防衛出来るのか?」
「なんて事だ。
我々は銀等級だぞ?」
「冒険者じゃないとしたら、どこかのお抱えか?
と、とにかく、我々は降参だ!」
二人の酔っ払いは狼狽しながら戦士を介抱に向かう。
回復してやりたいがそんな魔法あったかな?
【光魔法:回復】
頭に浮かんだ魔法を唱えた瞬間、戦士の身体を光の膜が覆い、程なくして戦士は何事もなかったかの様に、むくっと起き上がった。
酔いもすっかり醒めている様で驚いている。
【回復】すげえ。
「貴方達、何をやっているの!?」
不意に後ろから若い女の声がしたので振り返ると、そこには白い礼服の上に、白銀色の鎧を纏った、気品ある女性が立っていた。
声には少々怒気が混じっている。
おっさんが驚いたように、彼女の名前を叫んだ。
「アディレイ国の騎士姫スカーレット!」
「何故こんなとこに?」
どこの誰か全く分からない……
二つに束ねた青く長い髪、キリッと釣り上がった緑色の大きな瞳、上品さを醸し出す可愛い顔、スラリとしたスタイル。
村人風情には出せない気品を感じる。
だが、彼女を見ていると、何故か胸がズキズキと痛む。
何故だろう?
「見たところ三人がかりで、駆け出しの冒険者を虐めてるところかしら?
しかもこんな小さな村で。
関心しないわね」
スカーレットとかいう女が剣を抜こうとすると、魔法使いのおっさんが手を挙げて慌てて訂正する。
「待て!もう勝負はついたのだ!
我々の完敗だった!」
「なんですって?」
スカーレットが俺を値踏みするかの様に、じいっと観察する。
「銀等級を三人も相手に圧倒するなんて本当かしら?
まさか!?
もしかして貴方、この村に住むエナって女性と知り合いじゃない?」
エナ?あぁ、井戸で水汲みしていた村一番のパツキンボインちゃんだ。
知っているというと、やはりね、と得心いったような顔で頷く。
「貴方は、私がずっと探している人なのかも。
勝手なのだけれど、少し手合わせしてもらえないかしら?」
あ!思い出したぞ。
こいつ俺を刺し殺したヤツだ!
胸がズキズキ痛むのは、刺された記憶が強く残ってるからなのか?
待てよ?
そういえば、時のお姉さんの話じゃ、こいつは勇者を探しているとかじゃなかったか?
となると、俺を勇者とやらと勘違いしている線もある。
ふむ、いいでしょう。
英雄とやらの力、見せてもらいましょうか!
で、サクッと終わらせて、アーニャに会いに行かないと!
「わかりました。
ですが、ここじゃ村に被害があるやも。
丘まで行きましょう。
では、こちらへ」
野次馬を避け、宿の裏へ誘導し、人目が無いのを確認し、彼女を伴って【転移】する。
丘の上まで一瞬で移動した事に、スカーレットは驚愕している。
「え!?そんな!
貴方ほんとに何者なの?
今のは上位空間魔法じゃない!」
俺以外の人間を指定する事で、複数人での同時【転移】に成功した。
成功するかちょっぴり不安だったが可能な様だ。
「ビックリされても困るんですよね」
「まぁ、いいわ。私が勝ったら教えてもらう事にする」
スカーレットが剣を抜くと、青い光が全身を包み込んだ。
【解析】するに、剣による特殊効果発動か、魔法による自動効果発動かは分からないが、スカーレットの能力が飛躍的に上昇した。
【解析】
スカーレット
LV:65
HP:1700→2300
MP:130→260
レベルという概念が追加されたようだが、65という数字はどれくらいの実力なんだろう?
ちなみに魔女エリンはレベル130を超えていたからいまいちピンと来ない。
まぁ、今後比較していくしかない訳だが。
「構えは無しか。では、参る!」
スカーレットが俺に向かって一直線に飛んでくる。
あれ?人間って飛べたっけ?
エリンに教えて貰ってから、独自に自動魔法が発動する様に施した。
エリン程のチートさは無いが、
全能力上昇《バフ》は当然の事、各種属性付与《エンチャント》も行使される。
更に致命傷又は戦闘不能を感知したら数秒間の【時間遡行】を猶予して完全な死を回避できる設定にしてある。
臆病な俺はもう完全な死を体験したくない。
本当は霧等を使っての攻撃無効が欲しかったがどうしても出来なかった。
流石は300年生きる魔女、至高の領域だ。
【時の回避】
今思えば随分と臆病な自動魔法《パッシブ》だと言わざるを得ないな。
スカーレットの剣突を強化された棒で撃ち落とす。
剣を弾き飛ばすくらいは魔力を込めたんだが、スカーレットの剣技がそれをさせない。
高速で襲いかかる連続攻撃に防戦一方になる。
速度も上昇してるのになかなかやるな。
だが、これはどうだ?
空中にいくつもの魔法陣を展開し【氷の矢】を乱射する。
「な!攻撃魔法まで!?羽の盾!」
突如空中に浮いた盾が具現化し、氷の矢の動きに合わせて次々と防ぎ出す。
何そのファンネル?
防御をする必要が無い分、剣撃が止まらない。
なんだこのスタミナは?
もういいや、ちょっと強い魔法を食らって貰おうか。
【炎球】
3メートルはあろう炎の塊が5発、対象を取り囲むように、凄いスピードで襲いかかる。
痛いけど我慢してね。
怪我をしたら治してあげるからね。
「光速剣!」
スカーレットの剣が一際光ったと思ったら、巨大な火球を一撃で粉砕し俺の前に一瞬で現れた。
剣先は確実に胸を狙っており、既に棒で防ぐ余裕はない。
【土魔法:水晶石の障壁】
防弾ガラス並の強度を誇る壁を発動!
まさかこんな魔法があるなんてね。
恐ろしく硬い魔法、俺じゃなきゃ見逃しちゃうね。
ゴン……
「な!?」
透明度が高く、こんな暗い外じゃ見えなくてビックリするだろう?
「この剣技は魔法障壁すら貫通する。防御不能よ!」
止まった剣先から刃を象った光線だけが障壁を貫通して俺の胸目掛けて伸びてくる!
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