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異世界
しおりを挟む目を開くとそこには大自然が広がっていた。
見渡す限り山と空。
よく絵葉書に使われるスイス山脈を彷彿させるロケーションに心奪われる。
空気が澄んで心地よい。
深呼吸をすると体内が浄化されるようだ。
耳をすませば鳥さんがピーチクパーチク鳴いている。
あまりにのどかだ。
…………
ハッと我にかえり暫し長考。
いやいやいや、旅行なんてしてないし、ここんとこずーっと仕事続きだ。
旅行なんてしてる暇はない。
「あ、これ夢だ」
あまりに呑気な反応も夢ならではだろう。
このまま丘の上にいてもしょうがない。
とりあえず舗装されてない道を見つけたので丘を下って歩き始めた。
軽く汗ばんでくるくらい歩くと、煙が上がっているのが見えてきた。
集落だ。
このまま田舎を歩くだけの夢だったらどうしようかと思ってたとこだったよ!と安堵しつつ集落の様子を見る。
薪を割っている人や、井戸から水を汲んでいる人がいる。
電気や水道もないし、生活レベルはかなり低い。
ど田舎だ。
鶏や馬といった家畜の存在が見受けられる。
よくて村といったとこか。
村の外れの井戸が歩いて一番近そうだし、そこに向かって歩いていく。
井戸にいる女性に近づいてみると、こちらに気付いたようだ。
「あら、旅の方ですか?」
「み、道に迷いまして」
あかん!めちゃ可愛くてどもってしまった。
サラサラの金髪ロングヘアーに目鼻立ちの整った小さな顔。
年は高校生くらいだろうか、かなり若い。
白を基調とした民族衣装がよく似合っている。
俺にこんな夢を見る才能があったとは。
「ここはスーレの村です。
見た通り小さい村ですが、宿は二軒ありますし、商いもいくつかありますよ。
それに今は……」
あー、可愛いなぁ。
なかなかこのレベルの可愛い子いないぞ。
なんか村について喋ってるけど全然頭に入ってこない。
まぁ、夢だし何してもいいよね?
「あー、向こうはなにがあるの?」
俺が指差すと女が後ろを振り向き、すっと吸い込まれるように背後から抱き付いた。
あー、大胆だなぁ俺。
でも、夢だしね。
両手を回して胸を触る。
現実なら犯罪モンだ。
おおっ、なんて大きいんだ。それに服の上からなのにこの柔らかさ。
「おやめくださいっ!
痛いっ」
「あ、ご、ごめん!」
でも手を放す気は更々無い。
女はじたばたするが、恐怖で力が入らないのか抵抗は弱い。
いや、俺の力が強いからか?
この夢、もう止める気はない。
「ちょっ、こっち来て」
後ろから抱き締めたまま、馬小屋の裏へ引きずっていく。
ちょい臭いけどいい場所があったぞ。
無我夢中で揉み続ける。
服が破れ、そこから白い肌がチラ見えし、興奮は最高潮に達した。
ああ、直に揉みたいな。
服の中に手を入れると、柔らかいリアルなおっぱいの感触が広がる。
このコリッコリッと手と当たるのは、もしや乳首ではないですか?
なんだよなんだよ、なんやかんや、この娘も感じてんじゃないのー?
柔らかい尻に押し当てている俺のイチモツははち切れんばかりだ。
もう、我慢できない!
ワタライテツオ25才、男にならさせていただきます!
ズドッ!
「えっ?えっ?」
突然、俺の胸から刃物が突き出している。
え?もう朝?
夢から覚める?
呑気に考えをよぎらせるといると、突然口から大量の血が吹き出る!
全身に激痛が走る!!
「不埒なヤツめ」
意識が無くなる寸前、そう呟く女の声が聞こえた。
——————
————
——テツオ!起きろ!テツオ!
「うーん、もう食べられないよぉ。ムニャムニャ」
──テツオ、死んでしまうとは情けない
正体不明の声に促され俺は目を覚ました。
そこは見渡す限り真っ白な空間だった。
「まだ夢なのか」
──テツオ!夢じゃない全部!
夢じゃない?
声のする方を見ると光に包まれお姉さんが佇んでいた。
「誰、ですか?」
なんかデキる系のお姉さんを前にするとつい緊張して敬語になっちゃうね。
──ワシが力を与えたにも関わらずあっさり死ぬとは本当に情けない。
ちから?
意味わかんない。
でも夢っていいところで目が覚めちゃうもんなんだよなぁ。
──だから夢じゃないと言っとろうが!
「え?心で思ったことに答えた?」
──ここはワシの精神世界だ。
そしてお前が先ほどいた世界はお前が今後過ごすことになる世界だ。
うーん、突っ込みどころ満載だが。
一番気になる事を聞こう、うん。
「今後過ごすって、俺今死んだんです……よね?」
──ふむぅ。
お前に分かりやすく説明してやろう。
まず、お前はワシが与えた力に依って死なないのだ。
いや、死の苦しみは味わうがその瞬間死ぬ前の時間に戻るといった方がよいかの。
「なん……だと?」
──そしてその時を戻す力は、死んだ時ばかりでなく、あの世界でいう魔力がある限り自在に戻す事ができるのだ。
だから、死にたくなければ時を戻せばいいだけの事。
死の痛みは辛かろう。
胸がズキリと傷んだ気がして手でおさえた。
「いや、ちょっま……待てよ。
え?この世界?日本というか、仕事というか、いつもの俺の生活は?」
お姉さんの表情が少し曇った感じがした。
──思い出す必要はない。
お前は元いた世界を見限り、新たな世界へと旅立つ事を選んだのだ。
お前には時を戻す力だけではなく、あの世界で充分に生きていける数々の力も授けてある。
存分にふるうがよい。
「え?俺さっき一撃で死んでましたよね?」
──ふむ、それくらいは教えてもよいか。
よく聞け。
お前を殺した女は、ゆくゆくは勇者の従者となる英雄の一人なのだ。
無防備のお前なら一撃で屠ってもおかしくはなかろう。
お前は村に立ち寄っていたあの者と出会い、共に旅立つ未来もあったのだ。
その力がお前にはある。
無論、その未来を選ぶかどうかはお前次第だがな。
やれやれ、おしゃべりが過ぎたな。
では、再び戻るがよい。
お姉さんが手をかざすと、視界が光に包まれた。
え?戻るって?え?やだやだ!
俺を殺したヤツと旅なんてしたくないぞ?
というか勇者ってなんだよ。
勇者って何すんの?
そもそもどんな世界なの?
もっと色々教えてよ!
情報量少ないよっ!
——————
────
ほぼ何も分からないまま、気付くと再び丘の上に立っていた。
「……困ったなぁ」
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