美醜逆転世界でフツメンの俺が愛されすぎている件について

いつき

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12 これからも一緒に

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「______________これからについて話し合おか」


その一声に、部屋の中は先ほどの興奮状態から打って変わり静まり返る。


ラインハルトさんは少し拳を握りしめ、考え込むような素振りをすると体を僕に向ける。
改めて互いに向かい合う形になり、僕は自然と少し背筋が伸びた。


「イツキ。正直.....これが最後になるかもしれないから、はっきりと言いたいんだ」

「は、はい。わかりました...」


緊張したように少し深呼吸をすると、ラインハルトさんは口を開く。


「俺は今まで、この顔や体型でその........差別を受けてきた。街を歩くと、塵を見るような目で見られ、目が合えば悲鳴を上げられる。手が少し触れただけで糾弾されて、晒し者にされることもあった」

「..............」

「だから、イツキを助けた時に....................一瞬後悔してしまったんだ」

「えっ⁉︎」


衝撃の一言に思わず声が出る。

あ、あの時そう思ってたんだ.......。


「またいつものように悲鳴を上げられて罵声を浴びせられると思っていたんだ。冒険者や騎士として、多くの人を助けてきたが、感謝の言葉をかけられた事は一度もなかった」


ラインハルトさんはそう言い切ると、少し俯くようにしていた顔を上げ僕の目を力強く見つめる。


「だから、あの時イツキが俺にありがとうと言ってくれた事が........................凄くっ....嬉しかったんだ」


そう言って今まで硬い表情をしていたラインハルトさんは、綻ぶような笑顔を見せる。

普段とのギャップに思わず僕もドキッとしてしまった。


「そんな、僕はただ...普通のことをしただけですよ」

「その普通の事が俺にとっては凄く嬉しかったんだ。だから.....その、それで...........」


突然言い淀み、頭をゆるく掻き始めるラインハルトさんに首を傾げる。


「それで........?」

「...それで、もし叶うなら。これからも、イツキと一緒にいたい」

「えぇ⁉︎」


突然の告白のような言葉に思わず驚きの声が出る。

い、いやいや‼︎友達としての意味なのかもしれないし...。


突然のラインハルトさんからのお願いに驚きはしたものの、僕の答えはすでに決まっていた。


「勿論!ラインハルトさんと、僕も一緒にいたいよ」


ラインハルトさんは優しいし、ここまでどうすればいいか分からずにいた僕を助けてくれた。

だからどんな形であれ、この恩を返したいと思っている。


「ほ、本当か⁉︎よかった.....断られたら、俺は.....どうしようかと」


勢い余って僕の脇に手を入れて持ち上げるラインハルトさん。

僕、これでも男なんだけどこんなにあっさり持ち上がるんだ....。

少しショックを受けていると、突然コホンッと態とらしい咳払いが響く。


「あ~~、感動のところ失礼すんで......。とりあえず、2人とも一緒に行動するって事でええんやんな?」

「あぁ、イツキの同意も得たからな」

「そうなるとそのうち神託が下されるから、必ずこの街の近くで神様の祝福を受けた子がおるってバレるから......。捕まったら囲い込まれて無理矢理に王侯貴族と結婚コースになんねん」

「け、けけけけ結婚⁉︎⁉︎いやですよ僕⁉︎」


僕恋愛結婚希望なんですけど⁉︎今まで彼女も出来たことないのにいきなり結婚は厳しすぎる。


「そうなると早めに街を出たほうがええんやけどなぁ.....。今の時期やと大会とかの関係で街の外に出る乗合馬車もないし」

「騎乗竜はどうした?」

「それも今は全部領主様が大会の余興に使うって全部お買い上げしてもうたんや。お陰で新しい子たちが来るまでしばらくは動けへんねん」

「騎乗竜?竜がいるの⁉︎」

「あぁ、竜とは言っても移動に優れた体長3、4m程の小さい部類に入るが.......。個人での所有は専門のスキルがないと出来なくてな。俺も普段はレンタルで使っているんだが...」

「あの子たちが居らんと移動も一苦労やからな。やから暫くは此処で過ごすことになるけど......堪忍な?クエストもいいの結構あるし、またいつでも来てや。歓迎すんで」

「はい、ありがとうございます!」

「イツキ、疲れただろうから今日はひとまず宿を取って休もう。バラード、また近いうちに来る事になるだろうから頼んだぞ」

「はいはい、わかったで」


バラードさんに別れを告げ、部屋を出る。


ギルドのホールに僕たちが出ると、かなり時間が経っていたのか人が先ほどよりも減っていた。

「さぁ、行こうか。イツキ」

「はい!」


ギルドを出て歩き出したラインハルトさんの横に、元気よく返事をして並び歩く。


正直、まだまだ不安なことはあるけれど.......ラインハルトさんが一緒なら何とかなるだろう。


そうなんとも言えぬ安心感に身を包まれながら、少し日が傾き出した大通りを進んだ。


















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