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そうして、偽物聖女たちを王都から追い出した王子と侯爵令嬢は、ついに悲願を達成することにした。
真なる聖女として侯爵令嬢を立たせ、王子と正式に婚姻を結ぶのだ。
愛で結ばれた本物の夫婦として国を背負い立つために。
教会の大聖堂にて、偽聖女の家族によって盗まれていた聖女の守り石を、不運にも石を盗まれ擦り替えられた本当の聖女たる侯爵令嬢へ返還する儀式が始まった。
聖女教会の新しい枢機卿が差し出した金のトレイへと載せられた、聖女の石を侯爵令嬢が手に取った、その瞬間――。
透明であったその石が、黒く濁った。
突如湧き出た黒い雲があっという間に天から降り注いでいた陽の光を遮り、地面が激しく揺れ、荘厳なる聖女教会の総本部たる棟は無残に崩れ落ちていく。
雷が激しく鳴り響き、不吉な光が幾度もその真っ暗な空を切り裂いた。
そうして人々の悲鳴が上がる中、割れた地面から、真っ黒な獣、魔物たちが這い出てきて、その場にいた聖女を騙った侯爵令嬢とその婚約者であるこの国の王子、
王子可愛さに偽物の聖女を擁立しようと本物の聖女を偽物だとした王や王妃、金に目がくらんで嘘だと知りながら受け入れた聖女教会の新しい枢機卿以下司祭や王宮の関係者等々、その場で偽りの真の聖女の誕生を祝おうと集まっていた民衆もすべて、魔獣の餌食になった。
惨たらしく生きたまま齧られ、五体をバラバラにされて踏み躙られて死んでいたらしい。
そうして。魔獣はその場にいたすべての人の命を奪いつくした後、国中へと散らばっていった。
平和の上に胡坐をかいて、神との約束を忘れ安易に反故にした人間へと、思い知らせるが如くに。
そうして、偽物聖女たちを王都から追い出した王子と侯爵令嬢は、ついに悲願を達成することにした。
真なる聖女として侯爵令嬢を立たせ、王子と正式に婚姻を結ぶのだ。
愛で結ばれた本物の夫婦として国を背負い立つために。
教会の大聖堂にて、偽聖女の家族によって盗まれていた聖女の守り石を、不運にも石を盗まれ擦り替えられた本当の聖女たる侯爵令嬢へ返還する儀式が始まった。
聖女教会の新しい枢機卿が差し出した金のトレイへと載せられた、聖女の石を侯爵令嬢が手に取った、その瞬間――。
透明であったその石が、黒く濁った。
突如湧き出た黒い雲があっという間に天から降り注いでいた陽の光を遮り、地面が激しく揺れ、荘厳なる聖女教会の総本部たる棟は無残に崩れ落ちていく。
雷が激しく鳴り響き、不吉な光が幾度もその真っ暗な空を切り裂いた。
そうして人々の悲鳴が上がる中、割れた地面から、真っ黒な獣、魔物たちが這い出てきて、その場にいた聖女を騙った侯爵令嬢とその婚約者であるこの国の王子、
王子可愛さに偽物の聖女を擁立しようと本物の聖女を偽物だとした王や王妃、金に目がくらんで嘘だと知りながら受け入れた聖女教会の新しい枢機卿以下司祭や王宮の関係者等々、その場で偽りの真の聖女の誕生を祝おうと集まっていた民衆もすべて、魔獣の餌食になった。
惨たらしく生きたまま齧られ、五体をバラバラにされて踏み躙られて死んでいたらしい。
そうして。魔獣はその場にいたすべての人の命を奪いつくした後、国中へと散らばっていった。
平和の上に胡坐をかいて、神との約束を忘れ安易に反故にした人間へと、思い知らせるが如くに。
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