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14.騎士団長はかく語りき

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「それで? ローラはものすごく強いそうだな」

 その場にいた全員が泣き出して、笑い合った後、仕切り直しに酒が振舞われると、王が笑いながら切り出した。

「それはもう! まさか俺がローラ王女に守って貰う事になるとは思いませんでした」

「いえ、あれはもう必死で」

 慌てるローラに、周囲の視線が集まる。

「『リオン様は、私が守る』と言われた時には痺れました」

「リオン様!」

 ローラの抗議に、リオンは笑顔を向けるばかりだ。

「ほう。我が国の騎士団長を守るとは、なかなか愉快だ。しかし、それほどの腕をどこで身に付けたのだ? 家庭教師にはついた事がなかったということであったが」

「それはその、最初はダンスレッスンを覗き見して、自室で練習をしていたのですが、ちいさな姿見では移動するとすぐに映らなくなるので。それでまったく上達しなくて嫌になった時に、騎士団の練習が目に入りまして。それで、あれなら鏡の前から動かなくても練習になるな、と。クローゼットの中の棒を一本外して、その」

「ずっと振り回していたのか。それで? それだけで?」

「そうです。鏡の前で、ずっと振っておりました! それだけです! もういいではありませんか!!」

 真っ赤な顔をして怒ったローラがひとり席を立つ。

 バルコニーへと出て行く後ろを、王が追おうとするのを周囲が止めに入った。

「その役割は、父上のものではありませんよ」
「ぐぬぬ」
「いいじゃありませんか。わざわざ、あの子が見つめる先にいる男性を探してまで縁づけたのでしょう? 仲がよろしくて何よりだわ」

 王子と王妃に諫められ、王は肩を落として諦めた。
 そっと、婿に定めた男の後ろ姿を見送る。

「さぁ。今夜は飲みましょう。結婚式の準備もやり直さなくては」
「えぇ、時間もお金も使って、盛大なものに致しましょう。王女に相応しいものに」

 ローラの部屋にあったウェディングドレスと思しきものを見せられて、怒りのままに破いたのは王だった。王妃も一緒になって踏んづけた。

 このふたりはある意味お似合いの夫婦なのだ。



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