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12.調査報告

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 結論として、新女官長とその仲間たちがローラ王女への背任行為により捕まった。

 王女の専属侍女として真面目に働いていた筈のその侍女は、母を亡くした王女の世話をしている振りをして、実際には私腹を肥やしていたのだ。

 「王女は私以外とは話をしたくないと仰って泣いている」と迫真の演技つきで受けた報告を皆、信じていた。実際の所ローラは自分に専属侍女がいることすら理解していないほど、まったく世話などしていなかった訳だが。
 亡き母の母国から王女を国に戻せという横暴な要求が繰り返され、その態度があまりにも悪いことから元の場所にいたままでは誘拐されてしまうのではないかと不安げに進言したのも彼女だった。
 少人数による世話を提案し、実際には仲間内で王女の為の予算を使いこみ、それがバレるのを畏れて、王女に家庭教師がつくことを嫌い、「王女が会いたくないと部屋に閉じこもっている」などと嘘をついては解雇させていたのだ。
 前女官長が高齢により体調を崩し、後任として選ばれた時も、王女の為の予算を賄賂として配ったのだという。

「それでローラは、女官長に聞くようにと言ったのに、前女官長のところへ行ったのか」

 関係者を一堂に集めての説明の場で、国王陛下は頭を抱えた。

 新しい女官長を気に入っていた王妃も額を押さえて目を閉じた。
 そうでもしないと叫び出したい気分だった。
 重用ちょうようしていた相手から自分が騙されていたということに、腸が煮えくり返っていた。

「そうか。私達が見せられていた妹の姿は、すべてあの女狐が作り上げた幻想だったのか。可哀想なことをしてしまった」

 次代を継ぐ者として呼ばれた兄王子も顔を顰めた。
 勉強嫌いの偏屈な異母妹。綺麗なドレスを厭い、化粧もせず、勉強もせず、ふらふらと王城内を歩き回っている変人だと思い込まされていた自分が情けなかった。

 「あれはボロに見えるようなデザインの新作ドレスなどではなく、まったくの古着でした」という報告がされた時は、全員が頭を抱えて会議が止まったほどだ。

 そうして、王妃や王子が悔やんだ気持ちのその何倍も、国王は悔やんでいた。
 呼び出しても来ないのではない、ローラは何も知らされていなかっただけだった。

「あの子がしたいようにして欲しいと周囲に伝えたことが間違いだった」
 母親を亡くした幼い娘への愛情の発露の仕方を間違えていたのだと、最悪の形で結果が出てしまった今なら分かる。

 女官長が交代し、今やその役職が元の自分の専属侍女へとなっていることすらローラには知らされていなかった。それが許される状況を作り上げたのは、王自身だった。

 今この席に前任の女官長がいないのは、ローラの訴えについて新任の女官長と言い争いをしている内に激昂したのか、倒れたままになっているからだ。
 その事についても、調査してようやくわかった有様だ。

 王女が古着を与えられそれ以外の予算を使い込まれていたことに誰も気づかなかったのは、王城内の女性使用人たちの長となる人間になった者の犯行だったからだった。

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