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10.初めて好きになった人

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「私の事はお気になさらないでくださいませ。婚姻中もお世話をお掛けしないで済むように、在野で暮らしますわ」

「え、どういうことですか」

 突然伸びてきた腕をローラは手で払い退けると、飛んできた矢を、後ろ手で掴んだ。

「え?」

「危ない! 伏せて下さい、リオン様」

「え、あ。それは俺の台詞っ。うわっ」

 カンカンと、飛んでくる矢を、最初に掴んだ矢で弾く。

 いつも使っている棒より細いのでやり難くはあったものの、ローラのてのひらには細すぎるという程のことも無い。

 むしろ軽い分だけ取り回しがいい。

「襲撃だ! 武器を持った賊が入り込んでいるぞ」

 リオンが叫んで助けを呼ぶ間も、飛んでくる矢の数は減らなかった。
 どうやら、どうあってもローラ達のどちらか、もしくはふたり揃って殺したいようだ。

「許さない。リオン様は、私が守る」

 時に首をスウェーして避け、左手でも新たに矢を掴んで弾き続ける。

 その時、「ぎゃっ」と声がして黒装束の男が転び出てきた。
 ようやく近衛が走ってやってきて、男を取り押さえる。

「くそっ。変人王女っていうのは本当だったのか」
「あら、私の知らない綽名ね。初めて聞いたわ。誰が言っていたの?」

 ローラの問い掛けに、男は答えようとはしなかった。

「お前、少し訛りがあるな。やはりあの国はまだ諦めてなかったのか。後でじっくり尋問させて貰いこの件は国王陛下へ報告を急がねばならないな。お前、簡単に死ねると思うなよ」

 リオンは賊を睨みつけた後、その後ろにいる近衛たちへ視線を向けた。
 その視線は、どこまでも冷たい。

「王城内へ賊の侵入を許すとは近衛は何をしていたのか。その男の尋問は、我が騎士団で行う。すぐに引き渡しを。今夜の警備をしていた近衛たちにも一人残らず事情を聴きに行くからそれまで各自心して以降の仕事を続行せよ。いいな、覚悟してかかれ」

 リオンの指示に、近衛が顔を引き攣らせながら頭を下げた。
 後ろ手に縛られ、自死されないように猿轡を噛まされた賊が引き立てられていくのを見送った。

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