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7.野良王女の結婚

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 結局、採寸に来る者もないまま日は流れ、国王陛下から告げられた式を執り行なうすら半分以上も過ぎてしまったある日、突然部屋にウェディングドレスらしきものが運び入れられていた。

 伝統的なデザインと言えなくもないが、古めかしいというか実際に誰かが着た物なのだろう。
 それを洗い直しただけ、という風情の少し黄ばんだ白いドレスだった。

「オフホワイト、というか生成り色に戻ってしまったというか」

 どこまでも自分の結婚はお荷物処理なのだと突き付けられているようで、ローラは涙すら出て来なかった。

 なんなら笑いすら出てくる。

 多分きっと、これは子爵家の出身にもかかわらず上位貴族を差しおいて王族のみに許されてきた騎士団長という役職に就くことになった花婿殿への嫌がらせを兼ねているのだろう。

 そうでなくては、こんな黄ばんだドレスを身に纏った花嫁を横に並ばせようと思うはずがない。

 今月も残すところあと半分を切っている。
 本当に挙式は行われるのか、そんな根本的な部分ですら、ローラは懐疑的になっている。

 爪先が擦り切れた白いサテンのヒールはサイズすら合っていなくて、踵がカパカパだった。

「愛も無ければ周囲からの祝福もない。この婚姻に、意味などあるのかしら」

 城内は今、ローラが最初に考えた通りの噂で持ち切りだった。

 騎士団長の後任となれる王族が見つからなかったが故に、腕自慢の下位貴族に不良品の野良王女をあてがうことで地位を補うことにしたのだと。
 役立たずな王女を受け入れたからこそ騎士爵どまりの男が伯爵位を得て騎士団長になれたのだと揶揄する声も多い。

 すぐ横に、その王女が立っていても誰も気しない。まるで聞かせる為に噂をしているようだとすらローラには感じられて辛かった。

「ううん。私より、リオン・ボッカルディ騎士団長の方が、ずっと迷惑だと思っているわね」

 まだ顔も知らない未来の旦那様の不運に、苦笑した。

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