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5.女官長との会話・1

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 久しぶりに顔を合わせた女官長が、あまりにもちいさくなっていてローラは驚いた。

 これほど年老いた人だったろうか。顔色も悪く、刻まれた皺は深い。

「お久しぶりですね。ご婚約おめでとうございます。このような場所においでになっている時間などないのではありませんか? きっと自室へ採寸係が向かっているでしょうに」

 挨拶早々、詳しく聞くようにと指名された相手から会話すら成り立たない内に叩き切られ部屋を追い出されそうになって、ローラは焦った。

「あ、あのっ」

 知りたいことは山ほどある。伝えたいことも。
 しかし取りすがろうにも不機嫌な顔をした女官長からじろりと睨まれるだけで、言葉が喉の奥に詰まった。

 それでも最低限の情報だけでも教えて貰わなくてはと、ローラは自分を励ました。

「婚姻に関する詳しいことはすべて女官長に教わるようにと、陛下から申し付けられております。日取りとか、その……お相手のこととかも」

「女官長に訊けと言われてこちらへいらしたのですか。何かお間違えではありませんか? それに、お相手のことと言われましても、私も騎士団長様に関することはお名前と爵位以外には存じません」

「え! お相手って、ドヌス・パルシー公爵様なんですか?」

 栄えある騎士団長に就かれているドヌス・パルシー公爵は御年59歳。
 二人の子息にも恵まれ妻の公爵夫人もいらっしゃるのにとローラは衝撃を受けた。
 まさか国内の後妻どころか愛妾としての降嫁を父から言い渡されるとは、さすがに想像の範囲を超えていた。

「何を馬鹿なことを仰っているのですか。ドヌス・パルシー閣下の奥様が近年体調を崩されていらっしゃるそうなのです。それで、「ずっと傍にいてやりたい」と陛下へ直訴なさいました。陛下はそれを受け入れ、パルシー閣下は騎士団長職を降りられることになられたのです。その後任としてリオン・ボッカルディ様を御指名されました。貴女様のご伴侶となられるのは、そのリオン・ボッカルディ様です。ボッカ子爵家のご次男で、騎士団長を任命された際にボッカルディの名と伯爵位を陛下より授けられております。現在は大隊長を任されて三年目だそうです」

「大隊長に就かれて三年で騎士団長として指名を受けるなんて。とても優秀な方なのですね」

 思わず目を瞠る。ましてや、この国では騎士団長の職には代々王族が就いている。
 それを子爵家のご次男という立場で受けるとは、どんな方なのだろう。ローラには想像もできなかった。

 とてもお強いことは間違いないだろう。背の高い筋骨隆々とされている方なのだろうかと想像の羽を広げていると、女官長から訝し気な視線で見られていることに気が付いて、ローラは自分を恥じた。

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