糞ゲーと言われた乙女ゲームの悪役令嬢(末席)に生まれ変わったようですが、私は断罪されずに済みました。

喜楽直人

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11.蓼食う虫も好き好きとはよくいったモノだよねー

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「配当金に関しては『努力致します』ね。では、こちらは父へ渡しておきます。カルネモッチ准男爵へは、お願いしますね?」
「あぁ。勿論だ。まぁ、新しい婚約者としてドーラ・クィンを紹介すればわかってくれると思う」

 うわぁ。なんだ自分の親に対する根回しもしないで婚約破棄を宣言しちゃったのか。良かった、こんな人との婚約を白紙にできて。

 それに……あー、まぁいいか。もう婚約者でもないだし。『キミコイ』の名前付けの法則についてなんか、説明するのも面倒臭い。

「それにしてもすごい美人な方ですね。どこでお知り合いになられたのですか?」

 でも好奇心だけは押さえらんないので、つい訊ねた。

「彼女は、我がカルネモッチ商会のデザイナーで不動の一番人気なのだ」

「まぁ、そうなのですね」

 思わず口元に扇を翳した。
 同意はしてみたものの、ドレスデザインは王妃様お気に入りのドレッサ様こそが不動の人気デザイナーであることは周知の事実だ。ドーラ様という名前でもクィン様でもない。多分。あんまり興味ないんで自信ないけど。

 つい視線をカンパニから後ろのドーラさんに移すと、にっこりと笑顔を向けられる。

 う。尊い。この美形の少ない駄目乙女ゲームの世界において、これほどの美形はなかなかいないんじゃないかな。なんで攻略対象じゃないんだろう。一部の層には熱く支持されるだろうに。この人を攻略する為ならば、カンパニだって幾らでも攻略するって程に。

「あの、ドーラ様は、カンパニ様の、どこに惹かれましたの?」

 無粋だってわかってるけど、聞かずにはいられないよね。だって誰がどう考えても、さすがにオッジ殿下は世継ぎのこととか考えなくちゃ駄目だから無理かもしれないけれど、もっと高位貴族の恋人の地位だって狙えたんじゃないかと思っちゃう。のよね

「勿論、お金ですわ」

 私の無粋な問いに、ドーラ様が眩しいほどの笑顔でハッキリと言い切っちゃった。うーわー。

「カンパニ様は、私が望むもの全てを与えて下さいますもの。地位や名誉があっても使えるお金は限られるものです。自ら増やす事のできる方が一番です」

「そ、そうですか」
 ニッコリ笑顔でとんでもなくエゲツナイ構想を口にするドーラ様に思わずドン引く。でもそうかぁ。財布といわず金庫の中身を空っぽにする勢いで使いたい、ということか。そうだね、商人としてのカンパニというか、カルネモッチ家は確かに有能だと思う。うん。

 しかも、なんでこの言葉を聞いたカンパニはすっごいいい笑顔なんだろう。え、キモい。

「いいだろう、ドーラのこのハッキリとした物言いが好きなんだ。僕も金が好きだからね。高価な物が大好きだ。そしてドーラも、金が掛かる。最高じゃないか!」

「私も、カンパニ様のぶ厚い金離れの良い財布が大好きですわ」

 カンパニの言葉に、ドーラ様がぎゅっとカンパニを抱きしめた。
 むぎゅっと音がしそうなほど、豊かなお胸の山にカンパニのでかい頭がめり込んで形を変える。おぉ、すごい。アニメの中でしか観た事の無い光景だ。作り物なのかしら。でもすごい。

 思わずじっと見すぎたようだ。ドーラ様がにやっと嗤った後、カンパニの視界に入らない角度で私に向かって片目を瞑ってシーっと指を口元へ当てた。うおっ。セクシー。

「まぁこんなことを言ってはいるが、実際のドーラは僕個人よりずっと金持ちだと思う。彼女はセクシーランジェリーというものを初めてこの世に売り出した素晴らしき伝道者なんだ!」

 それでヴィアには名前も分からないのかと得心した。
 さすがに学生には早い。嫁入り前に興味を持つなどはしたないとされてしまう部類の話題だからだ。

「うふふ。ランジェリーは女性の身体をより美しく魅せる為のラッピング。私、それをより華やかに彩り魅せる術を考えるのが好きなのです」

「そうだ。ドーラの才能はランジェリーだけじゃないんだ。カルネモッチ商会のディスプレイを任せた店舗の売り上げは倍増したほどだ。ドーラと一緒に沢山儲けて、ドーラの為に沢山使う! 最高だろ」

「確かに」

 これは……うん、お似合いだね!

 良かった。これならカルネモッチ准男爵もふたりの婚約を認める事だろう。

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