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6.攻略対象(末席)カンパネ・カルネモッチ
しおりを挟む「ヴィア子爵令嬢、僕との婚約を君の有責で破棄して貰おう。大丈夫、君の領地に残る借金を埋め合わせるだけの慰謝料は払う。というか我が家に負った借金は無かったことにしてやるから感謝しろよ。さぁ今すぐこの書類にサインしろ」
ぴらりと差し出されている書類に目を見張る。
特記事項として『ヴィア・シシャックの不貞行為による破棄』と書かれている事の不快さに、思わず盛大に眉を顰めた。
その根も葉もない内容の書類を掲げているのは、『キミコイ』の攻略対象者様でもある、私の婚約者。誰もが攻略を嫌がった男、カンパニ・カルネモッチだ。
今はその短い首に、ビジョンヌ様を上回る美しい女性の腕を巻きつけながら、偉そうに有責での婚約破棄を認めろと迫っている。
学園の卒業イベントに、外部の人連れてくんなよ。
カンパニへ凭れかかるようにして甘えた様子で立つ美しい女性が、真っ赤に塗られた唇を、にいっと持ち上げ私に嗤い掛けた。
身に纏っている高級そうな薄地のドレスは、その女性の、ぷるんぷるんしててめっちゃ重そうなふたつのお山をほんの少しだけ、なんなら絶対に見せちゃいけないラインぎりぎりを隠しているだけだ。っていうかこれってドレスってことでいいの? 前世で水着の上に巻きつけて着るパレオをもっと細くて薄い布で作った感じ。なんならエッチすぎる布切れだ。案の定、背中はがっぱり開いているらしい。美しい薄衣が胸元でクロスするようにして肢体に巻きつけられ、首の後ろで華やかにリボン結びされている。
この結び目の端っこを引っ張ったら、どうなっちゃうんだろうと想像するだけでドキドキする。
じゃなくて!
「どういうことでしょうか、カンパニ様」
財力では負けていようが、シシャック家は子爵家だ。……くそっ。日本のゲームが元だと思うと、それまでなんとも思ってこなかった自分の家名が駄洒落すぎて名乗る度に地味にくるものがある。辛い。
家同士による取り決めで結ばれた政略としての婚約相手でしかないカンパニから、そんな不当な要求をされる筋合いはない。婚約が無くなること自体は目出度いが、条件が気に入らないので突っぱねた。
「キミの家が我がカルネモッチ家にしている莫大な借金を棒引きにしてやるからさ、婚約破棄の汚名を被って欲しいんだよ。借金まみれの無様な家が相手だろうと、爵位が上の本物のお貴族様との婚約を、准男爵家でしかない僕の有責で反故にしたら、その後の商売に傷がついちゃうだろ? それ位、すぐに理解しろよ」
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