糞ゲーと言われた乙女ゲームの悪役令嬢(末席)に生まれ変わったようですが、私は断罪されずに済みました。

喜楽直人

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3.キング・オブ・糞ゲーの世界に転生していたという驚愕

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 物心ついた時には、自分がこの世界とは全く違った文明を持つ、“地球”という惑星にある“日本”という国で生きていた記憶があることに気が付いていた。

 日本人だった時はブラック気味の会社で社畜生活をしてるような底辺生活をしていたから、子爵家の長女(ちな兄がいるので跡取りではない)という上流という訳でもないけど、上位貴族の責務とかもあんまり関係ないお気楽ポジションで、でもやっぱり庶民の暮らしよりずっと豪勢だよね~っていう幸せ極楽な人生が用意されていた事に、神へ感謝を捧げた。

 オーフトゥン王国って、どこかで聞いたことあるような国の名前だなぁって思ってたんだけど、どっちかっていうとゲームに出てきた国の名前というより“お布団”のネット用語かよって思ったし。それを除けてもなんとなく知ってる言葉や似てる言葉がある気もしてたけど、『デジャヴって奴かな。前世でも散々感じたわー』とか生半な前世の知識が邪魔をしてくれたものだから、それ以上深く考えることもなく過ごしていた訳よ。

 なのにさ!

 貴族学園へ入学する一年ほど前になって、お父様から突然呼び出されて、決定事項として言われたのよ。

「お前の婚約者となるカンパニ君だ。この国、いやこの大陸で最も勢いがあるカルネモッチ商会の跡取り息子である。お前はキゾック学園を卒業したら、即カルネモッチ准男爵家へと嫁に入り、我がシシャック家を後ろから支えるものとなるのだ。いいな、ヴィア」

 あ。この国の准男爵っていうのはお金で買える爵位ね。一代爵だけど代変りの際にまたお金を積めば爵位を継続して持つことも可能なの。
 それと、この時はじめて、皆が言ってるキゾック学園が、貴族の子弟がいく学園って意味じゃなくて、初代キゾック公爵が創立者であるキゾック学園だって知ったって訳よ。でもね、一番の衝撃はこの先にあった。

「初めまして、婚約者殿。カンパニ・カルネモッチです」

 くるんくるんの金色の巻き毛をした小太りの、平均的な身長である私より目線がずっと下にある男の子に、挨拶されたのだ。

 最悪だ。

 いや、最悪なのは見た目じゃない。いや見た目だって良いに越したことはないんだけど、今はそんなの横にポイだ。

 准男爵家の跡取り息子であるカンパニ・カルネモッチ。そしてその婚約者ヴィア。

 このふざけた名前をふたつ揃って聞いた時、私は、初めてここが「神絵師の無駄遣い」と謳われた乙女ゲーム『君は僕と恋をする』の世界だと気が付いたのだ。

 いや、ヴィアっていうのは私の名前なんだけどさ。でもヴィアだけじゃ分らなかった。家名であるシシャックと合わせたって分からなかった。まったくもってピンと来なかったのだ。私の家の名前なんて、ゲームに出てきたのかすら覚えてなかったんだもん。


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