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第六章 ハンカチ屋奪還作戦

ハンカチ会議第二回 2

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「いや、ちょっと待てよロザリー復帰すんのか?実家は許可出してるのか?」

ふふっ、そんなこと織り込み済みよ!
ニムルスがなんだか心配性ね。わたくしのこと、そんなに詳しく知らないでしょうに。


「いつまでも隠れているわけにはいきませんし。お世話になっている国王様の生誕祭に、一家揃って出ないわけにはまいりません。わたくしももうすぐ12才。あと一年後には、貴族魔法学園には入るのですから」


「はい!しつもん!」

カイルがばっと手を上げた。ふふ、かわいいわね。

「どうぞ?」

「俺、平民だから生誕祭は多分教会で参加すると思う。ハンカチ屋、アリスはこっちに来るのかな?それともお貴族様向けの王城での催しに行くのかな」


「……王城だと思うぞ」

はぁ、とため息をついてニムルスが答える。

ふふ、私がなにを言うのかわかっているご様子ね?


「そうなのです!アリスは王城でカーライル家の隠されていた娘として紹介されるでしょう。大規模なパーティだから、接触する機会もあるはずなのよ!」

ふん、と鼻息を荒くするロザリーに対して、カイルはふるふると首を横に振った。

「じゃあ、俺は今回何にもできないんだな……。王城になんか入れねぇよ。アリス、心配だけどさ」


ふふふ。そんなことないのよ。

「大丈夫よ!三人とも、平民であっても成績優秀、将来有望で貴族魔法学園に既に推薦予定ということにしていただければいけるわ!会えるのよ、アリスに!」


そう。あの司祭様は、明らかにアリスの母親を預かっている。まだエリサさんから回答は貰えていないけど、これまで回答がなかったっていうことは裏がとれていないだけで限りなく怪しいということ。

司祭様も、アリスは心配なはずよ。


お願いすれば、いけるわ!

推薦は、カイルの将来の為にもなるしね。王城で兵士になるならば、身分差は重大な問題よ。貴族魔法学園卒というゲタをはくことはカイルにとってよいことのはずだわ!


カイルがへにゃりと丸い顔を歪めて悲しそうに俯く。ふわふわの淡い茶色の毛が揺らめいた。

うん、かわいい。さくさくしたい。やっぱりわん……あ、その呼び方やめたんだったわね。

「え、いや、会えるってさ……リーナやニムルスは行けるだろうけど、俺は勉強ができないから……」


ふん、とニムルスがため息をついて、口を開いた。

……余計なことを言わなければよいのだけど。
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