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第四章 ハンカチ屋の様子見

5.魔法の授業 2

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「要するに、イメージですわ!傷を治す時は、わたくし、治るところを想像するのです」


ロザリーは、みんなの講師と化した。

リーナとニムルスは、にやにやしながらそれを見ている。ロザリーは、二人に習ったのかな。いいな。

でもとりあえず、今はロザリーの話だ。
同じようにやって制御できないのは困るけど、とりあえずできるようになったら後は練習あるのみ。

学校はあと二年もある。とりあえず魔法を使えるようになるのが先決だ。魔法が使えたら、非力な私でも冒険者になって暮らしていける。ギルド職員も狙える。

侍女にならなくても。
おてつきに、ならなくても。

ロザリーの技を盗みたい。


私は、意を決してロザリーに話しかけた。

「ねぇ、ロザリー。さっき、何か小さな声で喋ってたような気がするんだけど……どうやったの?」


そう、それを覚えたら、私にもきっとできる。
さっきの台詞を、まじめに聞いていなかったのが悔やまれる。
厨二病でもなんでもいい。むしろハマりたい。

そういえばここって剣と魔法のファンタジー世界だよね。厨二でもなんでもなく、日常だよね。最高じゃない。ロザリー天才。


びくっと肩を震わせて、ロザリーはそっとこっちを見る。ちょっと顔が赤い。

やっぱり恥ずかしいのか。ちょっと笑いそうになった。いけない。こっちの秘密がばれる。


「あ。ええと、そうですわね。とにかくかっこいい台詞……ではなくて!そうではなくて!!火の神や精霊に語りか」

ぽん。ロザリーの肩に、手が置かれた。

「ちょっとよろしいかな。リーナ、ニムルス、君達も」


司祭様は、少し怖い顔をしていた。

何だろう。そのグレーの瞳には、底が見えない何かの力があった。


ロザリーは、リーナとニムルスと一緒に、司祭様の応接室に連れていかれた。
魔石は回収され、私たちは自由時間になった。


みんなは、ロザリーがいい商家の子供だから、やっぱりどこかで貴族の血が入ってるんじゃないかとか、あの髪の毛のくるくるが火を呼ぶんだとか、そういう噂話で持ちきりになった。

うん、これは、魔法を使いたい、っていう流れじゃなくなってるね。私だけ追及して目立っちゃいけない。

様子見は、得意だ。


とりあえず私は、ロザリーがシナリオ通りにいじめられないようにしなきゃと咄嗟に思った。


そっと囁いたのは、あの縦ロールに触ると燃やされるかもよ、という、ちょっとした怪談だ。

あの髪触りてぇ、という男子は、いなくなった。

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