最強パーティーのリーダーは一般人の僕

薄明

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47話

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『歌詞出来た』

ミオからそうメールがあったのは、初めて会った時から3日後の事だった。

ついでに、LINEの友達招待も来ていた。

そういえば交換してなかったんだっけ。

早速、招待されたURLを読み込み、友達招待を受け入れる。

初期アイコンだ……。

よく考えると、全部初期アイコンな気がする。
Twitterも、YouTubeも。

ミオの性格を考えると、アイコンを設定するのが面倒くさいのかもしれない……。

「また、マンションに行けばいいのかな?」

そうLINEメッセージを送ると、

『ん』

との返信。

多分来いって事だよね……。

準備をして、【白夜】のグループメッセージにも、

『ミオのところに行ってくるよ』

と、家には居ないことを伝えておく。

『お、デートか?』

とタケル。

『楽しんでおいで』

とナツ。

『コラボの続きでしょうが!シオン、楽しみにしてるわよ』

とタケルへの返信と、僕への返信をするレオナ。

『了解です!』

自作スタンプで返信するユイ。

みんなの返信も来たため、ミオの待つマンションへと向かった。


ちなみにだけど、ユイは自作でLINEスタンプを作っている。

ミニキャラ風に【白夜】のみんなを描いてて、例えば、ミニキャラナツのありがとうスタンプや、タケルの挨拶スタンプ、ユイのにこやか了解ですスタンプなどがある。

しっかり販売してるようで、その収入はユイのポケットマネーになっているとかいないとか。

作成したのは、雑談配信後らしい。

【白夜】スタンプは全部で15種類ほどあるけど、特に5人集まってポーズを取ってる、【白夜】と書かれたスタンプは、今や僕らのお気に入りになっていて、グループメッセージのアイコンになっている。


最近ユイが、新作を出していて、そのスタンブが、やけにリアルに描かれた『石抱きを受けるタケル』シリーズ。

謎に10種類ある。

意外と人気らしい……。


ーーーーーー
ーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーー

ミオの待つマンションに着き、この前と同じレコーディングスタジオみたいな部屋を目指す。


例のごとく、鍵は開いていて、すんなりと入ることが出来た。

「お、お邪魔しまーす」

2回目とはいえ、緊張していて、恐る恐るといった感じでレコーディングスタジオのような部屋の中に入る。

待ち構えたミオは眠っていた。

「ぐぅ……ぐぅ……」

「そんな寝方をする人はなかなかいないよ!!??」

「私は寝ています」

「めっちゃ起きてるよね……」

「む……襲い放題を……逃した」

「そんな勇気はありません」

「……つまり……襲ってたって……こと?」

「……そういえば歌詞が出来たんだって?」

「むぅ」

ミオのペースに飲まれそうだったため、本題に入ることにした。

「これ」

ミオはパソコンを弄り、とあるファイルを開く。

「音源は……貰ってたから……試しに歌ってみた」

「ほんとに!?聞いてみても良い?」

コクコクと頷いたため、早速音声を再生させた。

「ーー!!!」

時間にして2分30秒。

明るくポップな曲調で出来た音楽に、ミオの歌声が絶妙にマッチしていて、聴いてるだけで自然と笑顔が溢れてくる。

「凄く良いよ!」

「……ほんと?」

「もちろん!聴いてるだけで楽しくなってきたよ!」

「……良かったぁ」

ホッと胸を撫で下ろすミオ。

その目には涙が浮かんでいる。

「作詞は……初めてだった……シオンくんの……曲に応えられる……歌詞を作りたかった……本当にこれで良いのか……何度も、何度も書き直してて……本当に……良かった」

ポロポロと涙を流すミオ。
その姿に思わず僕は彼女を抱きしめる。

「あ……」

どうしてこんなことをしたのか、正直分からない。
でも、こうしないといけないと思った。

「僕も1から作曲することは初めてのことだった。正直どうなるか分からなかったよ。僕とミオの魂をこの曲に込めることが出来たと思う。むしろ、僕とミオじゃないと出来なかったかもしれない」

僕も涙を流してミオに言う。

「コラボを依頼してくれて、本当にありがとう。」

「……これからも……コラボ……しよ?」

「もちろん。これからもよろしくお願いします」

「……うん」

「でもちょっと恥ずかしいから、そろそろ離れてもいい?」

「や」

「……ちょっとだけで勘弁してください」

さっきは勢い任せて抱きしめたけど、今はめちゃくちゃ恥ずかしい。
甘い香りが鼻腔をくすぐって、理性が飛びそうになる。

ダメだ。理性を保たないと。

何か別の話で気を紛らわせないとダメだ。

「作詞……寝ないで大変だったよね」

「うん……夜しか眠れなかった」

「夜に眠れたら、それは充分なんじゃないかな……??」

「ふふ……ちゃんと寝たし……ご飯も食べた……」

「そうなんだ……」

「うん……」

「……」

「……」

「そ、そろそろ離れてもらっても……良いですか?コラボ動画を撮らないと!」

「ん……」

「……」

「……」

ゆっくりと……名残惜しそうにミオは離れてくれた。


色々と危なかった……。
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