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31話
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「なに、ここ……?」
目の前に広がっているのは、太陽の光を反射し、キラキラと輝く湖が広がっていた。
周りは色とりどりの花畑。
フワッと心地の良い風に包み込まれ、居るだけで気分が良くなる。
「驚いた?」
レオナがまるでいたずらが成功したみたいに問いかける。
「う、うん。ダンジョンなのに太陽があるし、どうなってるか分からないよ」
「見つけたのはユイよ。ね、ユイ」
「はい。実はボス部屋の先に、宝箱があるんですけど、気になる空間があったので、近づいてみたら何かの気配を感じたんです」
ダンジョンボスを倒すと、自動的に宝箱がある部屋が開かれる。
これは、どのダンジョンでも同じらしい。
だけど、このレベル7ダンジョンの宝箱部屋は、他とは違うみたいだ。
「気になったんですけど、タケルさんやナツも気付くと思ってたので、黙っていました」
「俺は全然気付かなかったわ」
「僕もさ。さっきユイに言われて初めて知ったんだ」
「もちろん、私も知らなかったのよ。ユイに言われてようやく魔力の気配に気付いたわ」
「じゃあ、クリアした他の探索者も知らないのかな?」
「おそらく知らないだろうね。感知が得意なユイじゃないと気付かなかったくらいだし。こんな素敵な場所を下手に調べて欲しくもなかったしね」
「他のダンジョンにはないの?」
「ないな。他と比べて少し広いと感じたけど、それ以外は何も感じなかったしな」
「ダンジョンによっては、海があったり、ダンジョンギミックが複雑だったり、砂漠や溶岩、雪とか環境が変わるとこもあったけど、ここまで綺麗な場所は初めて見たわ」
「そんな場所をどうして僕に?」
「こんな素敵な場所をシオンに内緒にしておくのも嫌だったんだよ。モンスターの気配もないし、安全地帯みたいだったから呼んだのさ」
「ありがとう……今までダンジョンに潜ってこなかったから、本当にびっくりしたけど、ここは凄く心地いいよ」
「ついでにこことシオンの家を繋げたわ。【白夜】なら何時でもここに来れるわ」
「は?」
「ああ、シオンは知らないよな。簡単に言うとどこでも○アを作ったんだ」
「は?」
聞いたことないんだけど。
転移って、すごく難しい事じゃないの?
「転移の仕組みは、空間同士を繋げることで移動できるようにすることよ。だから、ここに行きたいって言う、明確な想像《イメージ》があれば、誰でも出来るのよ」
「嘘つけや。それを可能にするためにはレオナみたいにすげー魔力がいるじゃねえか。近距離の転移が出来ても、長距離ができるのはお前しかいねぇよ」
「それは私が言いたかったのに、なんで言っちゃうのよ!」
「誰が言おうが勝手だろうが!」
おっと、喧嘩が始まった……。
「2人は放っておいていいさ。実は、ダンジョンボスを倒すことで、入口まで転移することが出来る魔法陣がどのダンジョンにもあるんだ」
「じゃあ、このダンジョンも?」
「もちろん。僕らはクリアしたから、レオナがいなくても、入口までなら何時でも戻れるようになってるんだ」
「その魔法陣を私とレオナちゃんで研究して、同じような魔法陣を作れるようになったので、早速ここに設置してみました」
口喧嘩してるレオナとタケルを放っておいて、試しに魔法陣に3人で乗ってみる。
レオナが転移魔法を使ったみたいに、白い光に包まれ、気付くと僕の家に居た。
「わぁ、すごいね!」
「無事に起動して良かったですね」
「ん?無事に?」
「失敗したら身体が爆発してました」
「「……」」
「もしくは一部だけここにいたかも……」
「「……」」
平然としたその様子に、僕とナツはサーッと血の気が引いた。
「じゃあ戻りましょうか」
「「戻れるか!!」」
「そしたらどうやって帰るんですか……。それに、1度成功しているので、失敗はないですよ」
「「ホッ……」」
その言葉で、僕らは胸を撫で下ろした。
1度魔法陣から出て、もう一度その上に立つと、視界が白く染る。
ダンジョンの中の魔法陣の上にいた。
「……今回も成功して良かったですね」
「「まてまてまてまて!!」」
「冗談ですよ」
今日のユイ、なんだか発言が恐ろしいんだけど……。
帰ってくるまでの数分で、タケルとレオナは落ち着いたようだった。
「私も体験してみたかったわ」
「でもレオナは自分で転移できるだろ」
「ああ?」
「……なんでもないです」
もうレオナは怒らせないようにしよう。
絶対に。
「そろそろ小腹も空いたし、ポテトチップス食べたいんだけど」
ナツの一言でハッとした僕らは、腰を下ろせる場所を探した。
「あそこがいいわね」
レオナが指さした場所は、縄文杉を彷彿とさせる大きな木の下だった。
「うん、あそこなら花畑も見れるし日差しもいい感じに防げるから良いね」
ナツも同意する。
5人で輪になるように座り、真ん中に野菜チップスを置いた。
さわさわと風が心地よい。
「うまっ」
「ほんと。レンコン美味しいわね」
「私はさつまいもが好きです」
「あの、俺の分は?」
「「「つまみ食い……」」」
「ひぃ……」
「タケルはこれだよ」
「シオン……!!やっぱ最高だ!!ありがとうな」
勢いよくポテトチップスを食べる。
ふっ……。
「辛っ!!!!!」
「「「「あっはっは!!!」」」」
塩を入れすぎたチップスに、タケルは悶絶してる。
それを見た僕らは笑った。
あー、楽しい。
「たまにはみんなでこうやって食べるのも良いね」
「「「「そうだね!」」」」
「あの魔法陣は私たちなら何時でもここに来れるわ。ここはモンスターも出てこないみたいだし、シオンも安心して来れるわよ」
良かった。
ここで演奏するのも楽しそうだし、モンスターも来ないなら安心だ。
「今度はここで雑談配信するのもいいな」
「「「「良いねぇ」」」」
楽しい時間が続いた。
目の前に広がっているのは、太陽の光を反射し、キラキラと輝く湖が広がっていた。
周りは色とりどりの花畑。
フワッと心地の良い風に包み込まれ、居るだけで気分が良くなる。
「驚いた?」
レオナがまるでいたずらが成功したみたいに問いかける。
「う、うん。ダンジョンなのに太陽があるし、どうなってるか分からないよ」
「見つけたのはユイよ。ね、ユイ」
「はい。実はボス部屋の先に、宝箱があるんですけど、気になる空間があったので、近づいてみたら何かの気配を感じたんです」
ダンジョンボスを倒すと、自動的に宝箱がある部屋が開かれる。
これは、どのダンジョンでも同じらしい。
だけど、このレベル7ダンジョンの宝箱部屋は、他とは違うみたいだ。
「気になったんですけど、タケルさんやナツも気付くと思ってたので、黙っていました」
「俺は全然気付かなかったわ」
「僕もさ。さっきユイに言われて初めて知ったんだ」
「もちろん、私も知らなかったのよ。ユイに言われてようやく魔力の気配に気付いたわ」
「じゃあ、クリアした他の探索者も知らないのかな?」
「おそらく知らないだろうね。感知が得意なユイじゃないと気付かなかったくらいだし。こんな素敵な場所を下手に調べて欲しくもなかったしね」
「他のダンジョンにはないの?」
「ないな。他と比べて少し広いと感じたけど、それ以外は何も感じなかったしな」
「ダンジョンによっては、海があったり、ダンジョンギミックが複雑だったり、砂漠や溶岩、雪とか環境が変わるとこもあったけど、ここまで綺麗な場所は初めて見たわ」
「そんな場所をどうして僕に?」
「こんな素敵な場所をシオンに内緒にしておくのも嫌だったんだよ。モンスターの気配もないし、安全地帯みたいだったから呼んだのさ」
「ありがとう……今までダンジョンに潜ってこなかったから、本当にびっくりしたけど、ここは凄く心地いいよ」
「ついでにこことシオンの家を繋げたわ。【白夜】なら何時でもここに来れるわ」
「は?」
「ああ、シオンは知らないよな。簡単に言うとどこでも○アを作ったんだ」
「は?」
聞いたことないんだけど。
転移って、すごく難しい事じゃないの?
「転移の仕組みは、空間同士を繋げることで移動できるようにすることよ。だから、ここに行きたいって言う、明確な想像《イメージ》があれば、誰でも出来るのよ」
「嘘つけや。それを可能にするためにはレオナみたいにすげー魔力がいるじゃねえか。近距離の転移が出来ても、長距離ができるのはお前しかいねぇよ」
「それは私が言いたかったのに、なんで言っちゃうのよ!」
「誰が言おうが勝手だろうが!」
おっと、喧嘩が始まった……。
「2人は放っておいていいさ。実は、ダンジョンボスを倒すことで、入口まで転移することが出来る魔法陣がどのダンジョンにもあるんだ」
「じゃあ、このダンジョンも?」
「もちろん。僕らはクリアしたから、レオナがいなくても、入口までなら何時でも戻れるようになってるんだ」
「その魔法陣を私とレオナちゃんで研究して、同じような魔法陣を作れるようになったので、早速ここに設置してみました」
口喧嘩してるレオナとタケルを放っておいて、試しに魔法陣に3人で乗ってみる。
レオナが転移魔法を使ったみたいに、白い光に包まれ、気付くと僕の家に居た。
「わぁ、すごいね!」
「無事に起動して良かったですね」
「ん?無事に?」
「失敗したら身体が爆発してました」
「「……」」
「もしくは一部だけここにいたかも……」
「「……」」
平然としたその様子に、僕とナツはサーッと血の気が引いた。
「じゃあ戻りましょうか」
「「戻れるか!!」」
「そしたらどうやって帰るんですか……。それに、1度成功しているので、失敗はないですよ」
「「ホッ……」」
その言葉で、僕らは胸を撫で下ろした。
1度魔法陣から出て、もう一度その上に立つと、視界が白く染る。
ダンジョンの中の魔法陣の上にいた。
「……今回も成功して良かったですね」
「「まてまてまてまて!!」」
「冗談ですよ」
今日のユイ、なんだか発言が恐ろしいんだけど……。
帰ってくるまでの数分で、タケルとレオナは落ち着いたようだった。
「私も体験してみたかったわ」
「でもレオナは自分で転移できるだろ」
「ああ?」
「……なんでもないです」
もうレオナは怒らせないようにしよう。
絶対に。
「そろそろ小腹も空いたし、ポテトチップス食べたいんだけど」
ナツの一言でハッとした僕らは、腰を下ろせる場所を探した。
「あそこがいいわね」
レオナが指さした場所は、縄文杉を彷彿とさせる大きな木の下だった。
「うん、あそこなら花畑も見れるし日差しもいい感じに防げるから良いね」
ナツも同意する。
5人で輪になるように座り、真ん中に野菜チップスを置いた。
さわさわと風が心地よい。
「うまっ」
「ほんと。レンコン美味しいわね」
「私はさつまいもが好きです」
「あの、俺の分は?」
「「「つまみ食い……」」」
「ひぃ……」
「タケルはこれだよ」
「シオン……!!やっぱ最高だ!!ありがとうな」
勢いよくポテトチップスを食べる。
ふっ……。
「辛っ!!!!!」
「「「「あっはっは!!!」」」」
塩を入れすぎたチップスに、タケルは悶絶してる。
それを見た僕らは笑った。
あー、楽しい。
「たまにはみんなでこうやって食べるのも良いね」
「「「「そうだね!」」」」
「あの魔法陣は私たちなら何時でもここに来れるわ。ここはモンスターも出てこないみたいだし、シオンも安心して来れるわよ」
良かった。
ここで演奏するのも楽しそうだし、モンスターも来ないなら安心だ。
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楽しい時間が続いた。
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