最強パーティーのリーダーは一般人の僕

薄明

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 いつからの夢だったのか、僕はもう覚えてない。


確かなことは、

『5人で世界に名を轟かせる探索者になる!』

ということだった。



簡単なことでないことぐらい、僕もみんなも理解している。



最初は探索者になることを目指していたが、5人一緒にいるうちに、みんなで最強を目指すことに変わっていった。



探索者になること自体は、ダンジョンに潜る者たちのことを総称して定められているため、ダンジョンに入る資格さえあれば、探索者を名乗ることが出来る。


みんなでダンジョンに潜る資格を得ることができ、中学生になった頃には晴れて探索者となった。


そこから、僕と4人に圧倒的な差が現れ始めた。


各々が戦闘の才能に気づき、レベル1のモンスターを1人で粉砕している頃には、僕の気分は真っ暗だった。



僕だけが戦闘において、なんの才能もなかった。


スライムに遭遇すれば食べられそうになったし。


ゴブリンには舐められ、素手でボコボコにされそうになったし………


ダンジョンで死亡者がいないとまで言われたレベル1ダンジョンの、唯一の死亡者になりかけた。



そんなことがあって、僕は親友達5人に言った。


「僕にはみんなみたいな才能はないみたい。だから探索者の夢はみんなに頑張って……」


涙がボロボロとこぼれ落ち、僕のセリフは最後まで言えなかった。


そんな僕に、みんなは言った。

「シオンが弱いからって、なんで仲間はずれにしないといけないんだ?」

「そうですよ!私たちがシオンさんの分まで頑張ればいいだけじゃないですか!」

「シオンがいないと僕達も寂しいよ」

「しっかりしなさいシオン。みんなの夢なんだから、諦めるなんて言わないで」


みんなは笑って言ってくれた。

僕は見捨てられてなかった。

そう思えると、自分の心が救われた気持ちになった。

5人の中で、いちばん弱い僕なんて……っていうくらい気持ちになることが多かった。


だからこそ、みんなの一言に、僕は安堵することが出来た。



「そこで僕からの提案があるんだけど」


「なんだ?」

「シオンはリーダーやればいいと思うんだ」


「「「賛成」」」

「えっ」

「っていうか、実際シオンはリーダーなんだよね」

「えっ?」

「あっ、そういやダンジョンに入る時の手続きにパーティー申請の欄があったわね」

「??」

「シオンさんに内緒で私たちで書きましたもんね」


なにそれ……知らないんだけど。


「そういやそんなことあったな。すっかり忘れてたわ!!」

「えっ、でも、僕よりナツの方が……」


「僕らの4人をまとめるのは、やっぱりシオンしかいないよ。頼まれてくれないかな?」

「俺からも頼む」

「まさか断るなんて言わないわよね」

「いやなんて言いませんよね」

みんなの視線が僕に刺さる。

というか圧が凄い……。

でも、このままの関係でいられるなら!!!

「やるよ」

中学2年生で、僕は、パーティーのリーダーになったのだった。
みんなの無言の圧に負けたからではない……そうと思いたい。

ちなみにだが、高校2年生となった今でも、リーダーになった理由を教えて貰っていない。


なんで?

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