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ヤリチンの苦悩~エイベル視点~
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僕のせいで女の子たちが大喧嘩した時、僕はすごく悲しかった。女の子は殴り合いなんてしてはダメだ。守られるべき存在なんだから。
僕のせいなんだろう。傍から見たら僕はただのヤリチン。一人に決められないダメなやつなんだ。
長期休暇で領地に帰省した際に父に相談したら、辺りをキョロキョロ見渡した後「店じゃだめなのか?」って言われた。
ちがう、そうじゃない。論点がズレている。僕は別に彼女たちとセックスしたいわけじゃないのに……。
彼女たちと付き合うようにしたのは、中身をよく知り、気持ちに応えてあげられるか試したかったからなんだ。
それに、女の子たちが僕と付き合いたいって思うのも、たぶんヤりたいからじゃない。僕の体が目当てなわけじゃなく、いつか僕が好きになってくれると思っているからなんだ。
僕は申し訳なくて、彼女たちにたくさん奉仕した。心は僕の意思でどうにかなるものではないから……いや、僕の意思なんだけど、自分の気持ちをごまかして愛することは、相手に嘘をつくことになるから。
だから彼女たちが、少しでもその期間心地よく過ごせるように──はっきり言うと、身体的に気持ち良くなってもらえるように、彼女たちの好む抱き方をした。
「早くちょうだい!」「そこよ!」「もっと激しくして!」
そんな要求の全てを呑んで大事にしてあげたせいか、契約期間が来て僕が別れを切り出すと、皆びっくりした顔をする。
裏切られたと泣きわめく子や、期間延長を申し出てくる子までいるのだ。
おかしいよ、先約がいるのに、どうして皆契約を守らないんだ。あまりに揉めるから、しまいには先に契約書にサインさせるまでに至った。
僕はバカだ。彼女たちと付き合ううちに、いつか運命の人に変わるかもしれないのだと思っていた。心も体も相性ピッタリの人になる、そう思っていたんだ。
だけど、やっと気づいた。こうやっていろいろな子と全力で付き合うのは、僕から特別に愛されていると勘違いさせ、ただ傷つけているだけなんだって。
ついには物理的に委員長にまで迷惑をかけてしまい、僕は自分が嫌になっていた。
委員長が恋人役を買って出ると言ってくれた時、この人は何でこう、見た目と行動が違うのかなと思った。
見た目は厳しそうなクールビューティ。自分の問題は自分で片付けなさいよ、って言いそうなタイプなのに、どうして?
委員長を押し付けられた時も、嫌々ながらだったくせに、いざやるとなったら文句ひとつ言わず、すべての仕事をきっちりこなす。僕は彼女を尊敬している。
しゃれっ気はない。学院のシックな制服が一番似合うが、私服もグレーや紺色という、すっきりしたダークな色を好んでいるようだ。
ただ、飾り気のないシンプルな服は、よけい彼女のスラリとした体の線を美しく引き立てている。街で会った時は、どこの有名劇団の女優かと思った。大人っぽくて、色っぽくて。
既に何人かの男子生徒が目を付けていることも知っている。怖くて近づけないらしいが、隠れファンは多いんだ。
彼女の方から恋人契約を持ちかけてくれたのは、願ったり叶ったりだった。
なぜかは分からないけれど、委員長が他の男にそんな目で見られるのは、なんとなく不快だったのだ。
だから委員長の提案に、僕は大喜びで食いついていた。
でもその後、委員長はボソッと付け足した。
「試験期間だけでも──。その方が勉強に集中できるし」
それを聞いて、ちょっとがっかりした自分に首をかしげた。なんだフェイクか、と意気消沈してしまったのだ。
変だな、それで十分なはずなのに。あの勉強以外に興味無さそうな委員長と、疑似とはいえ恋人関係になれるなんて、すごく光栄なことだ。
そんなわけで僕たちは、表面上付き合うふりをすることになった。
僕のせいなんだろう。傍から見たら僕はただのヤリチン。一人に決められないダメなやつなんだ。
長期休暇で領地に帰省した際に父に相談したら、辺りをキョロキョロ見渡した後「店じゃだめなのか?」って言われた。
ちがう、そうじゃない。論点がズレている。僕は別に彼女たちとセックスしたいわけじゃないのに……。
彼女たちと付き合うようにしたのは、中身をよく知り、気持ちに応えてあげられるか試したかったからなんだ。
それに、女の子たちが僕と付き合いたいって思うのも、たぶんヤりたいからじゃない。僕の体が目当てなわけじゃなく、いつか僕が好きになってくれると思っているからなんだ。
僕は申し訳なくて、彼女たちにたくさん奉仕した。心は僕の意思でどうにかなるものではないから……いや、僕の意思なんだけど、自分の気持ちをごまかして愛することは、相手に嘘をつくことになるから。
だから彼女たちが、少しでもその期間心地よく過ごせるように──はっきり言うと、身体的に気持ち良くなってもらえるように、彼女たちの好む抱き方をした。
「早くちょうだい!」「そこよ!」「もっと激しくして!」
そんな要求の全てを呑んで大事にしてあげたせいか、契約期間が来て僕が別れを切り出すと、皆びっくりした顔をする。
裏切られたと泣きわめく子や、期間延長を申し出てくる子までいるのだ。
おかしいよ、先約がいるのに、どうして皆契約を守らないんだ。あまりに揉めるから、しまいには先に契約書にサインさせるまでに至った。
僕はバカだ。彼女たちと付き合ううちに、いつか運命の人に変わるかもしれないのだと思っていた。心も体も相性ピッタリの人になる、そう思っていたんだ。
だけど、やっと気づいた。こうやっていろいろな子と全力で付き合うのは、僕から特別に愛されていると勘違いさせ、ただ傷つけているだけなんだって。
ついには物理的に委員長にまで迷惑をかけてしまい、僕は自分が嫌になっていた。
委員長が恋人役を買って出ると言ってくれた時、この人は何でこう、見た目と行動が違うのかなと思った。
見た目は厳しそうなクールビューティ。自分の問題は自分で片付けなさいよ、って言いそうなタイプなのに、どうして?
委員長を押し付けられた時も、嫌々ながらだったくせに、いざやるとなったら文句ひとつ言わず、すべての仕事をきっちりこなす。僕は彼女を尊敬している。
しゃれっ気はない。学院のシックな制服が一番似合うが、私服もグレーや紺色という、すっきりしたダークな色を好んでいるようだ。
ただ、飾り気のないシンプルな服は、よけい彼女のスラリとした体の線を美しく引き立てている。街で会った時は、どこの有名劇団の女優かと思った。大人っぽくて、色っぽくて。
既に何人かの男子生徒が目を付けていることも知っている。怖くて近づけないらしいが、隠れファンは多いんだ。
彼女の方から恋人契約を持ちかけてくれたのは、願ったり叶ったりだった。
なぜかは分からないけれど、委員長が他の男にそんな目で見られるのは、なんとなく不快だったのだ。
だから委員長の提案に、僕は大喜びで食いついていた。
でもその後、委員長はボソッと付け足した。
「試験期間だけでも──。その方が勉強に集中できるし」
それを聞いて、ちょっとがっかりした自分に首をかしげた。なんだフェイクか、と意気消沈してしまったのだ。
変だな、それで十分なはずなのに。あの勉強以外に興味無さそうな委員長と、疑似とはいえ恋人関係になれるなんて、すごく光栄なことだ。
そんなわけで僕たちは、表面上付き合うふりをすることになった。
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