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好きの意味が違う

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「僕も……好きだ……」

 呆然とこぼすエイベル君に私は困ってしまい、唇を歪めた。笑うしかなかったのだ。

「えとね……そういう『好き』じゃないのよ」

 これまでの彼女たちの気持ちが分かるなぁ。もどかしいっていうか……。好きになると欲張りになっちゃう気持ち、この人には分からないんだろうなぁ。

「皆と一緒よ。あなたを独り占めしたくなっちゃうくらい好きなの。分かるかな──きゃっ!?」

 抱きよせられ、唇を奪われていた。半年間、ずっと見ていた彼の薄い唇。こんな風に、キスされたらどんな気分かな? なんて想像していたけど、やっぱり温かい。

「──!?」

 舌が入ってきた。キスって、こういうやつなんだっけ?

 ぬるりと口内をかき回され、すすられ、もうどちらの舌なんだか分からなくなるくらい絡め合って……。

 やだ、思ったより素敵。

「は……ぁ……」

 唇を離すと、そっと息をついた。

「気持ちいい、一つになったみたいね」

 私がそう言うと、エイベル君は泣きそうな顔で私を睨む。

「やめてよ、何言っているか分かってるの? 君を好きなようにしたくなるじゃないか」

 私は首を傾げた。

 そうか、エイベル君は奉仕の人。いつだって、女性の方の望みを叶えてきたんだわ。そうすると、エイベル君は自分がやりたいことを我慢してきたってわけだわ。

 ふと、興味を引かれた。エイベル君が好きなようにしたいって、どういうことだろう?

 分からないわ。わたし、こういうことには疎いもの。

 でも私は、いつも彼が女性にやってきたことを、返してあげたいわ。

「エイベル君を気持ちよくしてあげたい。だけど私、処女だから……。教えてくれる?」

 エイベル君は絶句した。そのまましばらく沈黙している。

 はしたなかったかしら? まあ、嫌われてもほら、どうせ明日からは関わらなくなる人だ。

 胸に走る痛みを無視した。

 別れたくないと我儘を言って、彼を困らせる気にはなれない。本末転倒だ。それに、ちゃんとした短期彼女でもなかったわけだし。

 とりあえず、教室で耳に入れた知識をエイベル君に提案してみた。

「私が小耳に挟んだパリピたちの話の中では、男性の○○○をアイスクリームみたいに舐めしゃぶると──」
「すとーっぷ!」

 エイベル君は私の口を大きな手で塞いだ。下を向いたまま、沈黙して肩を震わせているエイベル君。私、変なこと言ったかな?

「ありがとう。確かにそういうことを僕にしてくれようとした子たちもいた。でも僕は、別に奉仕してほしいわけではないんだよ」

 顔を上げて、口を塞いでいた手を放す。

「そういうことをしてもらったからって、相手を好きになるわけじゃなくて」

 くそっ、どう言えばいいか分からない、と小さく毒づくエイベル君。

「僕はただ、君に欲望をぶつけたいんだ。僕が君を好きなように抱きたくなってしまったんだ」

 私はそんなことか、と微笑んだ。

「いいのよ、たまには女性の気持ちなんて考えないで、自分の好きにしてみたら? これが最後だし」

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