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あっという間に卒業パーティー

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 できる限り、綺麗にしてもらった。

 人気の理容師さんにお願いして、他の令嬢やレディたちがやっているみたいに髪をアップにしてうなじを見せて、落ち着いた深い赤のリボンと一緒に編み込んでもらった。

 エイベル君の瞳の色。気づかないだろうけど、自己満足。

 今日は、度の入っていない眼鏡を外すの。

 夜会服はエイベル君に選んでもらったものだ。シンプルな鳩羽色の大人っぽいデザインで、光沢のあるシルク素材は、歩くたびに体に纏いつく。けれど、テロッとしていて着心地はいい。このまま寝られそうなくらい飾り気がないから、いつもの地味な私にぴったりかも。

 でもエイベル君はそれでいいのかな……。一度しかない卒業記念日。華の無いパートナーを隣に連れていて、いいのかな……。


 女子寮の外には、馬車が並んでいる。自宅や男子寮から、パートナーが迎えに来ているのだ。

 王宮の大ホールを借りての卒業パーティーは、学院側の気合いも感じられた。国王陛下のお言葉が賜れるので、ピリッとした緊張感がある。

 パリピ女子らを含めた他の女生徒たちは、同じ場所で待つ私を驚いたように見ている。なによ、私だってたまには化粧しますけど?

 ……やっぱり似合わないかしら。不安になって俯いてしまう。

 眼鏡……外さなければ良かったわ。

 その時、馬車回しに四人掛けの優美な馬車が停まった。窓の中に、エイベル君の横顔を見つける。

 彼って確か中等部の妹さんと一緒に、街のタウンハウスから通っているはず。だから、馬車も家紋入りの自前の物かと思っていた。

 でも違う。白に金の縁取りで玉ねぎみたいな形の、実用性があるとはとても思えない、とんでもなくゴージャスな馬車だった。しかも白馬四頭立て。夕闇が訪れる中、くっきり浮かび上がっている。

 私を含め、パートナーを待っていた女子寮の生徒たちは、顎を落としてポカンとなった。

 ちょっとエイベル君、どれだけ気合いを入れているのよ。

 この時期、私立学園や他の公立学校でも、どこかしらのホールを借りて卒業パーティーをする。だからレンタル会社は混み混みらしいの。

 借りられなくて駅馬車や辻馬車、あと学院から王宮までは割と近いので、徒歩でいい? ってなると、女性パートナーは舌打ちするらしい。

 さすがエイベル君、こういうの要領が良さそう。でもどこから借りたのかしら、こんなセレモニー用みたいな馬車!

 ずいぶん前から馬車会社に予約していたに違いない。それか知り合いのコネを使ったのかな。

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