14 / 27
これが女たらしか!
しおりを挟む
どうしても奉仕したくなるのかしら……気の毒な人だわ。私は哀れみを込めて列の方を見やった。
けっきょく並んでいるエイベル君。女の子たちからいいように振り回されてきたのが、目に見えるようだ。でも、マメで優しいから苦にならないのだろう。
私に向かって、嬉しそうに手を振ってくる。ご機嫌なワンちゃんみたい。うん、哀れむのはおかしいわね。女性に尽くすのが、生きがいなのでしょうから。
どう表現すべきか。
……可愛い。
そう思った瞬間、ズキッと胸に痛みが走った。
本物の彼女になったら辛いだろうな、と容易に想像できてしまったからだ。
博愛主義者の彼氏か……。
やっぱり人間は欲張りだ。私もエイベル君を独り占めしたくなってしまうだろう。
でも自分が誰かを好きになる気持ちって、なんだかいっぱしの女の子みたいでくすぐったいというか、悪い気持ちではない。
今日は図書館で勉強だったけど、一応デートだからリップを塗って、髪はがんばってフィッシュボーンに編み込んだ。
たぶん、彼には三つ編みと区別ついてないだろう。それでもいいの。オシャレしたくなる自分は大発見。エイベル君といる時だけ、私は可愛げのない鉄仮面じゃなくなる。
「期間は入試が終わって、卒業パーティーまで。ううん、合格発表までにしてもらおう。それまでは、私も楽しもう」
自分に言い聞かせるように小さく呟いた時、エイベル君がアイスを持ってやってきた。
「はい」
エイベル君は、クッキー&クリームを渡してくれる。
「本当に前と同じ味でいいの?」
「うん、あれが美味しかった」
「だって、他のは食べたことないんだよね?」
戸惑ったように聞かれて、私は目を細めた。
「いいの、これで」
だってエイベル君の気遣いの分、美味しくなったアイスだもの。他のより美味しいに決まっているじゃない。美味しさの半分は、優しさと空腹でできているって、昔のえらい人が言っていたもの。
「絶対に、これが一番美味しいの」
「じゃあ……お互い味見しよっか」
「え?」
エイベル君は、自分のアイスを差し出す。私は目を丸くした。
「なにこれ、緑と赤が混じってる」
興味深くてしげしげ眺めてしまう。綺麗。
「スイカだって」
「へー!」
私はオズオズと受け取ると、スイカアイスを持ち上げ、さらに観察した。黒と白の粒粒がある。
「黒の粒々がチョコで、白の粒々はホワイトチョコだって」
エイベル君が説明してくれる。
「偽物の種なのね」
偽物、という自分の言葉が胸に刺さる。私と同じか……。
気持ちを誤魔化すように、ペロッと舐めてみた。うわぁ、本当にスイカの味がする。すごい。
感激して、エイベル君のなのにもう一口舐めてしまった。ふふ。冷たくて、甘くておいしい。
ふと、彼を見ると真紅の瞳が見開かれている。私が首を傾げると、彼の瞳孔がきゅっと締まった。
「なんか、そのアイスが羨ましい。……僕も舐められたい」
けっきょく並んでいるエイベル君。女の子たちからいいように振り回されてきたのが、目に見えるようだ。でも、マメで優しいから苦にならないのだろう。
私に向かって、嬉しそうに手を振ってくる。ご機嫌なワンちゃんみたい。うん、哀れむのはおかしいわね。女性に尽くすのが、生きがいなのでしょうから。
どう表現すべきか。
……可愛い。
そう思った瞬間、ズキッと胸に痛みが走った。
本物の彼女になったら辛いだろうな、と容易に想像できてしまったからだ。
博愛主義者の彼氏か……。
やっぱり人間は欲張りだ。私もエイベル君を独り占めしたくなってしまうだろう。
でも自分が誰かを好きになる気持ちって、なんだかいっぱしの女の子みたいでくすぐったいというか、悪い気持ちではない。
今日は図書館で勉強だったけど、一応デートだからリップを塗って、髪はがんばってフィッシュボーンに編み込んだ。
たぶん、彼には三つ編みと区別ついてないだろう。それでもいいの。オシャレしたくなる自分は大発見。エイベル君といる時だけ、私は可愛げのない鉄仮面じゃなくなる。
「期間は入試が終わって、卒業パーティーまで。ううん、合格発表までにしてもらおう。それまでは、私も楽しもう」
自分に言い聞かせるように小さく呟いた時、エイベル君がアイスを持ってやってきた。
「はい」
エイベル君は、クッキー&クリームを渡してくれる。
「本当に前と同じ味でいいの?」
「うん、あれが美味しかった」
「だって、他のは食べたことないんだよね?」
戸惑ったように聞かれて、私は目を細めた。
「いいの、これで」
だってエイベル君の気遣いの分、美味しくなったアイスだもの。他のより美味しいに決まっているじゃない。美味しさの半分は、優しさと空腹でできているって、昔のえらい人が言っていたもの。
「絶対に、これが一番美味しいの」
「じゃあ……お互い味見しよっか」
「え?」
エイベル君は、自分のアイスを差し出す。私は目を丸くした。
「なにこれ、緑と赤が混じってる」
興味深くてしげしげ眺めてしまう。綺麗。
「スイカだって」
「へー!」
私はオズオズと受け取ると、スイカアイスを持ち上げ、さらに観察した。黒と白の粒粒がある。
「黒の粒々がチョコで、白の粒々はホワイトチョコだって」
エイベル君が説明してくれる。
「偽物の種なのね」
偽物、という自分の言葉が胸に刺さる。私と同じか……。
気持ちを誤魔化すように、ペロッと舐めてみた。うわぁ、本当にスイカの味がする。すごい。
感激して、エイベル君のなのにもう一口舐めてしまった。ふふ。冷たくて、甘くておいしい。
ふと、彼を見ると真紅の瞳が見開かれている。私が首を傾げると、彼の瞳孔がきゅっと締まった。
「なんか、そのアイスが羨ましい。……僕も舐められたい」
10
お気に入りに追加
239
あなたにおすすめの小説
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

淡泊早漏王子と嫁き遅れ姫
梅乃なごみ
恋愛
小国の姫・リリィは婚約者の王子が超淡泊で早漏であることに悩んでいた。
それは好きでもない自分を義務感から抱いているからだと気付いたリリィは『超強力な精力剤』を王子に飲ませることに。
飲ませることには成功したものの、思っていたより効果がでてしまって……!?
※この作品は『すなもり共通プロット企画』参加作品であり、提供されたプロットで創作した作品です。
★他サイトからの転載てす★

黒の神官と夜のお世話役
苺野 あん
恋愛
辺境の神殿で雑用係として慎ましく暮らしていたアンジェリアは、王都からやって来る上級神官の夜のお世話役に任命されてしまう。それも黒の神官という異名を持ち、様々な悪い噂に包まれた恐ろしい相手だ。ところが実際に現れたのは、アンジェリアの想像とは違っていて……。※完結しました
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる