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図書館デートをしてみた~エイベル視点~
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疑似デートがてら、街の図書館で初めて一緒に勉強した。その時、唐突にボソッと言われたんだ。
「私ね、アイスクリーム初めて食べたの」
石造りの図書館はひんやりしているが、外はまだ暑そうだった。アイスクリームと聞いて、かき氷もいいよな、とペンを浪人回ししながらぼんやり思った。
委員長は眼鏡を押し上げて、目線を斜め下に向け、ふてくされたように言った。
「すごく、美味しかったわ。今度は私がごちそうするね」
眉間に皺を寄せて、迷惑そうに息をつきながらそう言うものだから、僕はペンを落としてしまった。そして、図書館だというのに爆笑しそうになった。
なにこの人。これでお礼言っているつもりなの? この顔で? いやおかしいだろ!
もしかして知的でクールに見えていたのは、感情表現が下手なだけだったのかな?
黙々とノートに数式を書き込む委員長を、僕はつぶさに眺めてしまった。
「……委員長さ、ここが分からないんだけど」
僕は委員長ともっとしゃべりたくなって、参考書を差し出し質問した。
「ただの三角関数じゃない」
こんなのも分からないの? バカじゃないの? という冷たそうな灰色の瞳で見据えられ、背中がゾクゾクした。
それなのに、結局はものすごく丁寧に分かりやすく教えてくれるのだ。
可愛い! ギャップ萌えがこみ上げてきて、ソワソワした。
僕は彼女の顔に改めて見入った。眼鏡の奥……まつ毛、けっこう長かったんだな。
髪の毛が鋼みたいに艶々。いつもぎっちり三つ編みにしているが、白い枕の上にこの髪が広がったら、さぞ綺麗だろう。
肌も綺麗。透き通るように白くて、本当に背景に透けてしまいそうだ。ほんのりピンク色の唇のせいで、やっと妖精じゃなくて人間なのだと分かる。
ほうっと見とれてため息を吐くと、銀縁の眼鏡を直しながら委員長が冷たい声で言う。
「聞いてる?」
はい、聞いてます。夏にぴったりのひんやりした声。声までガラスみたいに透き通っているんだ。
この落ち着いた少し低めの声は、乱れたらどうなるんだろう?
ドキドキしてきた。病気なんだろうか。なんで委員長といると、僕の胃はカッと熱くなるんだ?
しばらく黙々と勉強していたが、僕はまたすぐに委員長としゃべりたくなった。
「委員長、ちょっと休憩しない?」
僕はテーブルに肘を付いてニコっと笑って見せる。
たいていこうすれば女の子たちは──癇癪を起していなければ──言うことを聞いてくれるのだけど、委員長はそのブルーグレーの目で俺の口元を……たぶんだけど、えくぼの辺りをじっと見つめてきた。
しばらく何も言わないものだから、心配になってしまった。怒ったのかな?
「あ、ごめん。嘘です」
勉強に付き合ってくれているのに、何を言ってるんだ僕は。委員長の貴重な時間を貰っているのに……。
しょんぼりすると、委員長は抑揚の無い不思議な声色で応えた。
「いいわ、出ましょうか」
僕はパッと顔を上げた。彼女の表情からも、感情は読み取れない。
「アイスクリーム……食べたい」
僕が我儘を言うと、委員長はそこで初めてフッと笑みを浮かべた。
「エイベル君て、黒いレトリバーに似てるわね」
僕はその綺麗な笑顔に見とれ、犬に似ていると言われたことなどまったく気にならなかった。そして奇跡の瞬間に立ち会えたことを、ガイアス神に感謝した。
委員長の笑顔! 四年に一回くらい? なんて珍しいんだ!
そして……なんて可愛いんだろう。
「私ね、アイスクリーム初めて食べたの」
石造りの図書館はひんやりしているが、外はまだ暑そうだった。アイスクリームと聞いて、かき氷もいいよな、とペンを浪人回ししながらぼんやり思った。
委員長は眼鏡を押し上げて、目線を斜め下に向け、ふてくされたように言った。
「すごく、美味しかったわ。今度は私がごちそうするね」
眉間に皺を寄せて、迷惑そうに息をつきながらそう言うものだから、僕はペンを落としてしまった。そして、図書館だというのに爆笑しそうになった。
なにこの人。これでお礼言っているつもりなの? この顔で? いやおかしいだろ!
もしかして知的でクールに見えていたのは、感情表現が下手なだけだったのかな?
黙々とノートに数式を書き込む委員長を、僕はつぶさに眺めてしまった。
「……委員長さ、ここが分からないんだけど」
僕は委員長ともっとしゃべりたくなって、参考書を差し出し質問した。
「ただの三角関数じゃない」
こんなのも分からないの? バカじゃないの? という冷たそうな灰色の瞳で見据えられ、背中がゾクゾクした。
それなのに、結局はものすごく丁寧に分かりやすく教えてくれるのだ。
可愛い! ギャップ萌えがこみ上げてきて、ソワソワした。
僕は彼女の顔に改めて見入った。眼鏡の奥……まつ毛、けっこう長かったんだな。
髪の毛が鋼みたいに艶々。いつもぎっちり三つ編みにしているが、白い枕の上にこの髪が広がったら、さぞ綺麗だろう。
肌も綺麗。透き通るように白くて、本当に背景に透けてしまいそうだ。ほんのりピンク色の唇のせいで、やっと妖精じゃなくて人間なのだと分かる。
ほうっと見とれてため息を吐くと、銀縁の眼鏡を直しながら委員長が冷たい声で言う。
「聞いてる?」
はい、聞いてます。夏にぴったりのひんやりした声。声までガラスみたいに透き通っているんだ。
この落ち着いた少し低めの声は、乱れたらどうなるんだろう?
ドキドキしてきた。病気なんだろうか。なんで委員長といると、僕の胃はカッと熱くなるんだ?
しばらく黙々と勉強していたが、僕はまたすぐに委員長としゃべりたくなった。
「委員長、ちょっと休憩しない?」
僕はテーブルに肘を付いてニコっと笑って見せる。
たいていこうすれば女の子たちは──癇癪を起していなければ──言うことを聞いてくれるのだけど、委員長はそのブルーグレーの目で俺の口元を……たぶんだけど、えくぼの辺りをじっと見つめてきた。
しばらく何も言わないものだから、心配になってしまった。怒ったのかな?
「あ、ごめん。嘘です」
勉強に付き合ってくれているのに、何を言ってるんだ僕は。委員長の貴重な時間を貰っているのに……。
しょんぼりすると、委員長は抑揚の無い不思議な声色で応えた。
「いいわ、出ましょうか」
僕はパッと顔を上げた。彼女の表情からも、感情は読み取れない。
「アイスクリーム……食べたい」
僕が我儘を言うと、委員長はそこで初めてフッと笑みを浮かべた。
「エイベル君て、黒いレトリバーに似てるわね」
僕はその綺麗な笑顔に見とれ、犬に似ていると言われたことなどまったく気にならなかった。そして奇跡の瞬間に立ち会えたことを、ガイアス神に感謝した。
委員長の笑顔! 四年に一回くらい? なんて珍しいんだ!
そして……なんて可愛いんだろう。
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