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恋はよく分からないけれど、皆のこと大好きさ~エイベル視点~

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 気になっている女の子がいた。それが委員長だ。

 不愛想なところは、中等部にいる妹のメイベルに似ている。まあ妹は、委員長のように冷めているというより、性格がキツいのだが……。

 見た目はぜんぜん違う。あちこちムチムチしたメイベルと比べると、委員長はほっそりスレンダー。

 光沢のある金属のような髪色の、キリリとした大人っぽい女生徒なのだ。

 幅の狭い銀縁眼鏡が賢そうに見える。目が悪いのかと思いきや、度は入っていないとのこと。

 いつだったか、冷たい輝きのあるブルーグレーの瞳をもっと見たくて「外してみて」と、頼んでみた。

 僕がお願いすると、たいていの女の子はその通りにしてくれるのに、委員長は一言「嫌よ」で終わってしまった。

 僕はあまり好かれていないようだった。でも僕の方は、彼女のそういうところはわりと好き。

 委員長がゴミを見るような目で周囲を見渡すのはかっこいい。なんかこう……見据えられると、自分がダメなやつになったような気分になる。

 僕は、女の子は皆可愛く思えてしまう。だって人間、必ずいいところがあるから。僕はそこをすぐに拾い出してしまうんだ。

 もちろん、男にもいい奴や尊敬できる奴はいるけど、男と女の区別くらいはつく。僕はちゃんと、女の子を違う意味で好きになっている。

 ところが……ドキドキするような子──夢中になれるような女の子は、なかなか現れない。深く知れば、いつかは出会えると思っていたのにな……。

 そんな僕なのに、委員長のことはやけに気になって仕方ない。

 彼女とは付き合ったことがないからだろう。僕に言い寄ってこない女子が、珍しいだけなのかもしれない。

 正直これだけ色々な女性と付き合っているのに、僕は、自分の好みが未だに分からないのだ。

 彼女が士官学校への入学を決めていると聞いた時、僕はさらに興味を持った。

 僕と同じような進路のやつは他にもいるが、彼女は女の子なのに、どうして──。

 女の子って、ドレスと恋バナにしか興味無いのかと思っていたんだ。だから女の子は守られるべき存在なのだと、僕は勝手に思っていた。

 だから、士官になりたいなんていう委員長を面白いと思った。まあ、それだけだ。


 
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