【完結】天邪鬼でブラコンなメイベルお嬢様は、お仕置きされたいようです【R18】

世界のボボ誤字王

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覗きをするお嬢様~執事視点~

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 壁を頼りに進んでいくと、ランプの灯が見えた。

 客室の扉の前で、お嬢様が立ち尽くしている。

 何をやっているんだ?

 近づこうとして、一瞬足が止まった。少し干渉しすぎではないかと迷ったのもあるが、気まずさもあった。

 いや、いいんだ。……俺は使用人。

 自分の感情など二の次にし、お嬢様のお世話に徹する。これだけ考えていればいい。

 吹っ切って、お嬢様の方に歩いていった。お嬢様は、俺に気づかない。

「……?」

 お嬢様は、何かに気を取られていた。坊っちゃまとルシール嬢の寝ている部屋だが……。

 よもや、エイベル坊っちゃまとルシール嬢の間に潜り込んで、無理やり添い寝でもさせる気か、と最初は疑った。

 しかし、小さなオレンジの光に照らされたお嬢様の横顔は、明らかに戸惑っていた。目をまん丸に見開き、口を開け、眉をひそめ、驚愕と困惑の表情を貼り付けている。

 そこでピンと来た。これは不味い!

 お嬢様は知識だけの頭でっかち。世間知らずで無垢なお嬢様に、いきなりそんな場面を見せてはいけない!

 部屋の中の二人に気づかれないよう、そっとお嬢様に近づく。

 お嬢様の頭の上からチラ見えした中の様子は、想像を超えた淫猥さだった。

 なんでルシール嬢が体にロープを巻き付けられてるんだ!? 坊っちゃまもマニアックなのか!?

 兄妹揃って変態とは……。俺は慌てて目を逸らし、お嬢様がうっかり悲鳴を上げないよう口に蓋をして、ズルズルその場から引きずっていった。

 押さえた手のひらに柔らかい唇が当たり、胸がザワついた。

 お嬢様は俺の腕の中から逃れようと、ジタバタしている。

 力……弱いな。俺が誘拐犯だったら簡単に攫えるぞ。

 このまま攫ったら、どうなるかな?

 不穏な考えが浮かんだ自分にゾッとする。何を考えているんだ俺は!

 客室から十分離れたところで、俺はお嬢様を解放した。

 お嬢様はハァハァ言いながら俺の胸を叩く。

「窒息するところだったわよ、鼻の穴まで押さえないで!」
「し~っ! 夜中ですよ!」

 俺が人差し指を口元に当てた。お嬢様が口を閉じる。

 ところが、途端に遠くから女性の嬌声が響いてくる。

 ルシール嬢、声でけぇよ!

「お嬢様、早くお休み下さ──」

 お嬢様の顔が真っ赤に染まっている。気まずそうに俯いているものだから、俺までなんだかいたたまれなくなった。

「あー、猫でも鳴いているのでしょうかね」

 俺たちは気づいてない。いやーん! とかアハーン! とか、全然聞こえない!

「さ、早く部屋の中へ!」

  俺はお嬢様を寝室に押し込んで扉を閉め、そこに背をつけて安堵の息をついた。

 まったく、無垢なお嬢様になんてものを見せるのか! 鍵をかけろ鍵を。


 翌朝、鍵をかけること、声を抑えること、この二つをぼやかしてさりげなく注意すると、二人は俺が伝えたいことを察したようで、大変恐縮していた。

「ここに滞在中も、我慢しましょう」

 と、ルシール嬢が小声で提案した時の、坊っちゃまの顔は見ものだった。

 この世の終わりか!


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