【完結】天邪鬼でブラコンなメイベルお嬢様は、お仕置きされたいようです【R18】

世界のボボ誤字王

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お嬢様に伝わっていなかった件~執事視点~

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 お嬢様に好きだと言われた。

 坊っちゃまの代わりではなく、好奇心でセックスしたかったわけでもないと、確かにこの耳で聞いた。

 ──やっと言ってくれた。

 となると、自分のやることはひとつしかない。

 まず、ウィンドカスター辺境伯宛に速達を出した。執事を辞める許可、お嬢様との結婚の許可を求めて。

 雪に閉ざされた辺境伯からの返事は待たず──どうせ反対されても強行するわけだし──さらに準備を進めた。

 そう、次は代わりの執事を探すこと。男手は必要だ。お嬢様に手を出す心配のない、かつ護衛にもなる執事が。そこで師範に打診した。

 俺は、アダムソン家の執事を早急に辞める必要があった。次の仕事が決まるまで、などと悠長なことは言ってられない。

 同じ屋根の下にいたら、結婚前だろうがまだ学生だろうが、雇用関係にある預かり物のお嬢様だろうが、手を出しそうな予感があったからだ。

 お嬢様のそばにいては、ダメだ。またドロドロにする自信しかない。

 とにかく一刻も早く、お嬢様の執事という立場から解放されたかった。

 並行してやらなければならない事は、次の職を探すこと。無職で求婚などととんでもない!

 それに今ある財産のほとんどは、アダムソン家の執事としてお嬢様のご実家から頂いた給金。

 これでお嬢様との結婚準備を進めるのは気が引けた。

 馬車馬のように働き、婚約指輪諸々相応しいものが揃えられるよう、そしてお嬢様がタウンハウスを出たあと始まるであろう新婚生活に備えての資金を、かき集めなければいけない。

 そう頭を悩ませている時だ。

 手頃な労働者向けホテルが空いておらず、実家は母や弟らが無職の俺を心配しそうで寄れず、仕方なく王都ホテルのスタンダードシングルに、一時的に身を寄せた俺。

 去年の坊っちゃまの披露宴時、ホテルの支配人に声をかけられたことがあるのだが、またその友人から頼み込まれた。うちで働かないかと。

 当時は断ったが……コンシェルジュか……。

 資格はある……。しかし経験はない。そして執事より給金は低い。

 ただよく考えれば、執事という職に就けば収入は上がっても、結婚などできるわけがないのだ。

 だからその話を受けることにした。

 慌ただしく、お嬢様を幸せにするための基盤を整えていたある日、気づいた。

 先に生誕祭があるじゃないかと。新年の祝いもだ。

 雪に閉ざされた辺境伯からは誰も来られない。卒業を控えた勉強三昧の時期とは言え、寂しいに違いない。

 お誕生日にぬいぐるみを渡したら「子供じゃないのよ!」と酷く立腹されたので、靴やドレスがいいだろう。

 卒業パーティーに渡すものの準備でうっかりしていたが、お嬢様はドレスの用意をしているのか?

 あの人のことだ、坊っちゃまの結婚式のドレスをまた着ようとするに違いない。

 店に行き、式の前に無理やり作らせたドレスの型紙が残っているか、問い合わせる。

 お嬢様の成長期──主にお胸の──はさすがに終わっただろうと、また勝手に作らせて頂いたが、まさか逆に痩せているとは。

 卒業研究の論文がキツいのだろうか。それとも他に何か嫌なことがあったのだろうか……。俺が傍に居られれば、全ての悲しみからできるだけ遠ざけてやるのに。

「卒論を早く提出して、卒業パーティーを晴れ晴れした気持ちで迎えましょう。幸いお嬢様はダンスは習得している訳ですし、あ、ご安心を。私もアカデミー時代にみっちり教えこまれております。男性パートも女性パートもできるよう、特訓されており──」
「……ない」
「え?」

 お嬢様が、俯いたまま方をふるわせている。

 いきなりテーブルに身を乗り出し、俺のネクタイを掴んで引き摺り寄せた。

「まず、貴方からパートナーの申し込みなんて、一切されてない! って言ったの!」



 
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