【完結】天邪鬼でブラコンなメイベルお嬢様は、お仕置きされたいようです【R18】

世界のボボ誤字王

文字の大きさ
上 下
35 / 63

エイベルお兄様の結婚

しおりを挟む
 そうして迎えたお兄様とルシールさんの結婚式。ネイサンが私のイメージで作らせていた、淡いピンクのAラインのドレスは、サイズもピッタリだった。

 夏に型紙を取っていたのはそのためね、抜け目ない!

 結婚式……結論から言わせてもらうと、まあ……嫌じゃなかった。幸せになる二人を……家族になる二人を見るのは辛いかなって思ったけど、タウンハウスであれだけイチャつかれたから、耐性がついていたみたい。

 ただ──。

 真っ白な花嫁衣裳に身を包んだルシールさんが、あまりに綺麗で……。

 お兄様は四六時中鼻の下を伸ばしているし、鉄面皮家族は真顔のまま泣いているし、うちの両親は「思い出すわねぇ、私たちの結婚式」「ああ、あれは酷かった」なんて二人の世界に入り込んでいるし、なんていうか……。

 うらやましぃいいいい!

 やっぱり、取り残された感だけは消えなかったのだ。

 それどころか、私も結婚したい、白いドレスとかどうでもいいけど、ただああやって誰かの熱烈な視線を一身に浴びて、皆から祝福されたい、そう思ってしまった。

 ガイアス神教会の聖堂から、何故か白い玉葱型のダサい馬車に乗ってホテルの披露宴会場に向かう新郎新婦に、これほどまでに憧れてしまうとは……。

 やっぱり、出席するんじゃなかったかしら?

 感動なのか寂しさなのか分からない嗚咽をこらえ、私はグスグス鼻を啜る。そしてその後のホテルでの宴で、やけ食いをするのだった。



 披露宴は、お兄様の学院時代の同級生が多かった。

 わたし、学院では「伝説の悪役令嬢の再来」とか言われてけっこう有名なのよね、コソコソしちゃう。

 幸い、お兄様の学年では私の噂はあまり広がっていないようだけど……。女性がほとんど呼ばれなかったせいもあるからしら。

 ルシールさんの方のお友達の招待客も少なかった。

 学院時代は学級委員長をやっていたと聞いたのにな。私と同じで友達が少ないのね。士官学校女子寮の同部屋女子しか呼んでないみたい。

 つまり圧倒的に男子が多い。

 そのせいか、宴は男性のノリ。へべれけで芸を披露し始めた余興担当の人たちは、裸同然だった。円盤状のトレイを二つ持って局部で交差させ、スレスレで見えないようにしている裸踊りなんだもん!

 いや、着席する紳士淑女には絶対見えないっていう、すごいテクニックだったけど!

 下品!!

 花嫁の顔色は特に変わっていなかったので、男所帯で慣れているのかもしれない。

「三次会どうする~? 三次会どうする~?」

 と叫ぶ全裸の男性たちに囲まれ、お兄様はさすがにカッカしていた。

「ヒューバート、君に幹事を頼むんじゃなかった。ルシールに下品なものを見せるんじゃない!」
「ああ大丈夫よ、エイベル君。お兄様たちも飲むとよくやるから」

 本当に慣れていた。

 お父様とお母さまに「私、もう帰る」と伝えようとしたところ、二人は二人でなんかしんみりしている。

「私もこういう披露宴したかった」
「ごめんよ、ニーナ。いつかもう一回やり直そうな」

 と二人だけの世界に入っていたので、私はため息をついて大ホールから外に出た。

「あ……れ?」

 大きな花束を持ったネイサンが、従業員にしては身なりのいい男性と、ロビーで話しこんでいた。

 私に気づき、慌ててこちらにやって来るネイサン。よく見ると、テイラー夫人やサム、レイチェル、ミリーら通いのメイドたちもいるではないか。

「来てたの?」
「はい、教会は後ろの方におりました」
「入らないの?」

 バカ騒ぎになってるけど……。

「我々使用人も招待したいと、お二人からお申し出がございましたが──。招待された方々の中には、使用人と同席することに、抵抗がある年配者もいらっしゃる可能性がございます。我々には仕事もございますので、出席は控えさせていただきました」

 そして大きな白い薔薇の花束を見せる。

「退場の時にお渡ししようかと。使用人一同からです」

 律儀ね。サムとテイラー夫人以外は、お兄様が寮に入ってから雇われた使用人なのに。

「念のため、タウンハウスで軽く三次会もできるようにご用意をさせていただいております。どのようなご様子でしょうか」

 それから、少し不安げな声で付け足す。

「あの……それと弟のヒューバートは、何か粗相をしていないでしょうか」
 
 あ、そうか。医者の弟さんが同級生なのよね。え、あの裸踊りの人!? 医者って言うより患者っぽかったけどな……。

「ベロベロよ。たぶん勝手にラウンジか、パブかどこかに行くでしょ。うちより近いもの。私はもう帰って寝るからね! うるさいのは嫌よ。うちで三次会なんてやりませんっ」

 そうして薔薇の花束を受け取る。

「渡してくるから、待ってて。皆で帰りましょう」
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。 でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。 けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。 同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。 そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

今日の授業は保健体育

にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり) 僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。 その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。 ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

赤ずきんちゃんと狼獣人の甘々な初夜

真木
ファンタジー
純真な赤ずきんちゃんが狼獣人にみつかって、ぱくっと食べられちゃう、そんな甘々な初夜の物語。

とある高校の淫らで背徳的な日常

神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。 クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。 後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。 ノクターンとかにもある お気に入りをしてくれると喜ぶ。 感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。 してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。

処理中です...