45 / 63
ハロウィンの夜 8
しおりを挟む「お嬢様は、悪い子だ」
半身を起こしたネイサンは、低くかすれ、さらに上擦った声でそう私に言った。私は震えあがる。今まで聞いたことがない類の声だったからだ。
イヤ。イヤよ、怒らないで。怒らせたいわけじゃないの。
「これを解きなさい」
糸目から覗く黒い瞳が、まるで憎しみを込めるように私を貫く。
こわい、こんなネイサン初めて。
「いやよ」
「解きなさい、お仕置きの時間だ」
ネイサンのおしりペンペンは、たぶんお兄様の、音だけ派手で全然痛くない叩き方とは、違う気がする。
この剣幕だと、金属バットで殴りそう。私は怖くなって怯み、ガクガク震えた。
嫌いにならないで。私を好きになって。
観覧車のテッペンでチュウしたのに、効き目がないわ。どうしてこんな恐ろしい顔で私を見るの? まるで怪我した魔獣でも縛っているみたい。
私の捕縛術でなければ、ロープを引きちぎっていたかも。
謝ればいい? ハムサンにしてごめんなさいって、謝って解けば許してもらえる? いいえ、さっき言っていたじゃない、笑って許すことはできないと。
これ、どうしよう。
例えて言うなら、ゴキブリが出たとして、紙コップを上から被せて捕獲したとするでしょ? その後どうするかっていう、あの問題に直面するのよ。
あらやだ、ネイサンをゴキブリに例えちゃったわ。どちらかというと、飢えた黒キツネね。黒いキツネなんているのかしら、赤いキツネならいそうだけど。
混乱した頭で、猛獣がもがいているのを途方に暮れて見ていた私は、その時思い出したのだ。
占い婆の進言を。
「ネ、ネイサン落ちついて」
私はネイサンの上から降りた。
必死に縄抜けしようとしているネイサンだけど、バカね。辺境伯に伝わる魔獣捕縛用の縛り方よ、いくら古武術経験者だからって逃れられるわけないわ。
いえ……ネイサンのことだから、肩の関節を外して抜け出しかねないわね。
「そ、そうだわ、あなたにいいことをしてあげる」
私はネイサンのズボンのボタンに手をかけた。ネイサンが固まる。
「お、お嬢様、今度は何を──やめっ……あっ!」
あれ? やけに引っかかるわ。
私はスボンの前を全開に寛げ、目的のものを思い切り引っ張り出した。
──長っ。
何これ、長槍? ランスなの? この状態だと、ズボンのウエストからコンニチワしない? いつもコンニチワ、してたっけ?
既視感ですぐ分かった。そうか! あの時のお兄様と同じなんだわ! 教科書でいうところの、勃起状態ってことよね!
でも……おかしいわね、占い婆が教えてくれた方法を試すまでもなく、既に勃っているなんて……。
「ネイサン、もしかして縛られて興奮したの?」
「は?」
ネイサンに睨まれた。なによ、手も足も動かせないくせに。
「バカなこと言ってないで、早くこのロープをんぁ──はぐぅっ!?」
ネイサンの長槍に、私はかぶりついていた。
恋占いはやたら高くついたけど、お兄様とルシールさんがやっていた事の意味が分かったものね!
男性のイチモツを舐めしゃぶると、男性は気持ちよさのあまり、言いなりになるらしいの。
だけど……。
レロレロしながら上目遣いに観察する。
お嬢様なんてことを! と苦しそうに呻くネイサンを見て、不安になった。
額に脂汗をびっしり浮かべているけど、本当に気持ちいいの?
何度も裏筋をぺろぺろし、亀の頭みたいなところを舌で叩く。
吸い付いて、スリスリ口の中で上下させ、唾液でベトベトにしたのに、ネイサンの長槍は赤黒い筋を立てたまま。まるで怒っているみたいに強ばっている。
勃起じゃないのかしら。怒髪天を衝く的な生理現象だったりして。
私は唇を離してしょげた。それとも……。
「私、下手なのかしら」
ネイサンが荒い息とともに、何か言おうと口を開いた。
「聞きたくないわ、黙ってなさい」
叱られるのは嫌い。いつも、はしたないとか慎みを持ちなさいとか、うるさいネイサンだ。ガミガミ説教されるのは目に見えている。
「やっぱりこれにつきるわね」
私はネイサンの胸を、ドンと突き飛ばして倒す。ミニスカを少し持ち上げ、穿いていたビキニ紐パンをずらした。
そして、私の唾液でベチョベチョのネイサンの杭を、そこに入れようと試みる。
『へ~、そうかい、想い人は真面目なんだねぇ。だったらほれ、既成事実を作っておしまい』
既成事実。そう、ドッキング! それは、男女の体の関係になること。
魔法の薬を飲ませて誘惑すれば、相手はこちらが何もしなくても、思惑通りに動いてくれるはず。
あの婆さんそう言っていたのに! 実際は、ネイサンたら、歯ぎしりしながらこちらを激しく睨めつけている。やっぱり惚れ薬はインチキね!
あの、表面だけは穏やかだった紳士なネイサンが。……絶対激怒している。
もう腰を落として、ネイサンとドッキングするしかないの!
そうすればネイサンと私は、執事と主から男女の関係に変わるのだ。
ネイサンを、このメイベルの女の魅力でメロメロにして、グズグズにして、彼の方から私に惚れさせるの。
執事を辞めるなんて、言わせるものですか。来年も、再来年も、ずっと私といるのよ?
──ところが……だ。
ネイサンを篭絡しようと思ったのに、それ以上腰を落とせない。
痛くて。
あれ~? 教科書ではちゃんと入ってたけどな?
穴が違うのかしら?
エイッ、エイッ、と何度も腰を上げ下げし挿れようと試みるも、ランスは入口で弾かれてしまう。オロオロしていると、ネイサンが呻き声を上げた。
「お嬢様、何をなさろうとしているのです?」
5
お気に入りに追加
222
あなたにおすすめの小説

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。


今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

密室に二人閉じ込められたら?
水瀬かずか
恋愛
気がつけば会社の倉庫に閉じ込められていました。明日会社に人 が来るまで凍える倉庫で一晩過ごすしかない。一緒にいるのは営業 のエースといわれている強面の先輩。怯える私に「こっちへ来い」 と先輩が声をかけてきて……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる