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エピローグ

妹に何しやがった

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 結局初夜だというのに、あの後何度も何度も──夜が明けるまで愛し合ってしまった美しい淑女のわたくしと、貴公子ヒューバート様です。

 ヒューバート様ったら、わたくしが欲しくて仕方なかったのね! ずっと我慢していたんだわ!

 わたくしはマーガレットに湯浴みを手伝ってもらい、肩を貸してもらって朝食を取りにダイニングに向かいました。

 正直に申し上げますと、お股が痛いのです……。あんなに気持ち良かったのに、今は二度としたくない気分なのです。

 マーガレットに支えられ、覆い被さるように手すりに掴まりながらガクガクする足で一段ずつ階段を降りていくと、ちょうど侯爵邸の玄関ホールに通されたクライヴ兄様とバッタリ出くわしました。

「シンシア! どうしたそのザマは!?」

 そこへ涼しい顔のヒューバート様が、やはり入浴を済ませやってきました。

 こちらはわたくしとは違い、背筋をスッと伸ばし、パリッとモーニングコートを着こなして、艶々した血色のいい頬っぺに笑顔を浮かべていました。白い歯がキラリと光って眩しいですわ。

 朝に相応しい、爽やかな貴公子っぷりです。

「やあ、クライヴ、おはよう。いい朝だね。シンシア、新妻となった君と、朝の散歩に出たいな」

 こんなわたくしを見て、よくおっしゃいましたわね! 痛くて歩くこともままなりません!

「ヒューバート! 君は初めてのシンシアにどんな無体を働いたんだ!?」

 詰め寄って胸倉を掴むクライヴ兄様を、わたくしは止めました。

「お兄様、おやめ下さい! わたくしがいけないの!」
「何を言うんだ、フラフラじゃないか!」
「わたくしが、可愛くて美しすぎるからいけないの!」
「バカを言うな、君は誰よりも可愛い──え!?」

 クライヴ兄様は、ヒューバート様の胸倉を掴んだまま、固まりました。

「シンシア、今なんと?」
「わたくしの罪です。わたくしが誰よりも可愛くて美しすぎるから、色っぽくてエッチすぎるから、ヒューバート様は止められなかったの。わたくしのせいなの」

 シンシア……とクライヴ兄様は呆然となり……その瞳がウルウル潤みはじめたではございませんか。

「良かった、やっと前のポジティブな君に戻ったね」

 ところがお兄様は、再びヒューバート様をキッと睨みつけました。

「だがヒューバート、君はやはり許さん! 一晩に一体何回俺の可愛いシンシアと──!」
「五回よ」

 声は、玄関扉の方から聞こえました。

 足をガクガクさせながら、這い蹲るように屋敷に入ってきたミラベルを侯爵邸のメイドが慌てて出迎えました。

「この鬼畜眼鏡! 私はもう無理って言ったのに!」

 ヒューバート様が「おい」と言って、クライヴ兄様の胸倉を掴み返します。

「クライヴ、君は人のことを言えるのか」
「言えるさ、君は何回だ」
「……六回だ」

 殴り合いが始まったのを、わたくしとミラベルは抱き合って床にへたり込みながら、情けない顔で見ておりました。

 跡継ぎが生まれるのは、どちらが早いのかしら。




【完】ご愛読ありがとうございました!


続いて番外編
みなさん、クライヴ&ミラベルの初夜を覗きましょうか。
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