【完結】あなたに醜い女と言われたので、身の程知らずのこの豚めは姿を消しますね

世界のボボ誤字王

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第一章

呼び出されてしまいました……

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 ナディーン様からあっさり振られたヒューバート様は、たいそうな落ち込みようでした。

 この世に自分を振るような令嬢がいるとは、思わなかったに違いございません。

 立ち去ったナディーン様を偲ぶヒューバート様に罪悪感を持ちながらも、長期休暇が終わる前にあの鮫令嬢を追い払えて良かったと胸を撫で下ろすわたくしでした。

 わたくはヒューバート様を、魔の手から護ったのですわ!



 ところがです。

 ハートフィールド伯爵に当てられた縁談の手紙がいくつか残されており、その消印がすべて王都からであったことに気づかれてしまいました。

 不審に思ったヒューバート様は中身を確認し、そこにクライヴ兄様からの紹介であることが書かれた一文を、見つけてしまったのです。

 わたくしは彼の執務室に呼び出され、どういうことか説明するよう言われました。

「クライヴに、ナディーン嬢のことを話したかい?」

 いつもの、幼児にかけるような優しい口調ではなく、固くて事務的な問いかけでした。

「もしかして……彼女の縁談は、君がクライヴに頼んだのか?」

 わたくしは、ヒューバート様に嘘をつくのが嫌で、正直に申し上げました。

「はい。だって、ハートフィールド伯爵令嬢は、ヒューバート様の財産狙いでしたから」
「……そんなことは最初から知っていたよ。領地が困窮しているから僕に支援を頼みに来たと、君だって聞いただろう?」
「だ、だって、妻の座まで狙っていたのですよ? そんな方、ヒューバート様にふさわしくございませんわ!」

 ヒューバート様は、ニコリともせずにおっしゃいました。

「シンシア、ふさわしいかそうでないかは君が決めることじゃないだろう? ナディーン嬢が立ち去る前に言っていたが、侯爵家の財産が危ういとか、僕がワキガだとか、根も葉もないことを彼女に吹き込んだね? 彼女はうちもハートフィールド伯爵家同様破産寸前であると、君から聞いたと言っていたよ」

 そこまで申してはいませんけど……。

「半分は本当のことですわ。このまま放牧を続けて、さらにハートフィールド伯爵家という重荷を背負えば、やがて困窮するに違いございません。わたくしの実家でしたら、ヒューバート様を逆に援助──」
「やめてくれないか!」

 ヒューバート様に怒鳴られ、わたくしは全身を硬直させました。

 あのヒューバート様が声を荒らげるところなど、初めて見ました。ましてや、わたくしに敵意剥き出しなんて……。

 ワナワナと親に叱られた幼児のように震え、涙をこぼすしかないわたくしを見て、ヒューバート様は口を噤みました。

「いや……僕が馬鹿だった。ナディーン嬢が支援を目的に近づいたことは確かだ。幼い君が義憤に駆られる気持ちもおかしくないし、巷の噂を真に受けて僕の領地を心配するのも分かるよ」

 わたくしはこの時愚かなことに、彼の気持ちを逆撫でしてしまったのです。

「わたくしでよいではありませんか、ヒューバート様」

 勇気を振り絞ったつもりでした。

 眉間を摘んでソファーに座り込んでいた彼が、顔を上げました。

「……?」
「わたくし、ずっとヒューバート様をお慕いしておりました」

 ヒューバート様が、怪訝な目をわたくしに向けます。

「なんだって?」
「ヒューバート様。偽装などではなく、わたくしと結婚すればいいのです」

 彼が何も言ってくれないので、わたくしはさらに言い募りました。

「だって、わたくしのこと愛しているでしょ? だったら──」

 ヒューバート様は、何を言っているのか分からない、といったように首を横に振ります。

「君とは兄妹のようなもので──」
「わたくしにそんなつもりはございませんでしたっ」

 目に見えて分かるほど、ヒューバート様の顔から血の気が引いていくのを、わたくしはどこか冷静に見ておりました。

 頭の隅で、何か大変なことを言ってしまったのだと、なんとなく分かりました。
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