【完結】あなたに醜い女と言われたので、身の程知らずのこの豚めは姿を消しますね

世界のボボ誤字王

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第一章

偽プロポーズ大作戦

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 ヒューバート様は、懇願するようにわたくしにそうおっしゃいました。

「シンシアは年齢的に一年……いや、あのシスコンの兄のことだ、まあ二年は結婚しないだろ?」
「え……ええ」
「なんだったら二年後、君の方から婚約破棄してもらっていいし……。うん! いくらおままごとみたいな婚約でも、君の評判に傷がつくのは嫌だしな。君から手酷く僕を振ってくれればいいんだ」

 困惑しているわたくしに気づき、安心させようと微笑んできたヒューバート様でございます。

「離婚はそう軽々しくできないが、昨今巷で流行している婚約破棄ものの小説の影響で、何かと婚約破棄したがる男が多くなった。あちこちの舞踏会で、令嬢たちが婚約破棄されているよ。婚約の解消くらいでは、名誉は傷つかないから大丈夫さ」

 ある意味ゆゆしき事態ですわ!

 ヒューバート様は再びわたくしの太腿に頭を預け、一点の曇りもない澄んだ瞳をわたくしに向けました。

「僕が嫌悪感を抱かない数少ない女性は、亡き母とミラベル、それに君くらいだから。さすがにミラベルと婚約はできないだろ?」

 ヒューバート様はわたくしの太腿をペチペチやると、よっこらしょと腹筋で起き上がり、伸びをしました。

「相変わらずいいクッションだった。婚約の話、受けてくれてありがとうシンシア。これでようやく眠れそうだ。おやすみ、いい夢を」

 おでこにチュウをして、彼は客室から出ていきました。

「…………」

 わたくし、お返事しましたっけ? 彼を見送ったあと、しばらく呆然としていたわたくしでございました。

「ミラベルと同レベル……」

 わたくしはやっと、自分が大きな勘違いをしていたのだと気づきました。

 完全に妹扱いであったことを、思い知らされたのですから。



 翌日ヒューバート様は、ご自分の親族とわたくしの家族に、わたくしたちが婚約することをお伝えしました。

 ヒューバート様の親族は──いえ、わたくしの両親も、そしてクライヴ兄様も、突然のことにポカンとしております。

「そういうわけで、僕とシンシアは熱烈に愛し合っていることが分かりました。ぜひとも二人の婚約をお許し願いたい」
「あ、いや、それは願ってもないことだが──」

 お父様が目を白黒させながらどうにか答えると、すかさずヒューバート様は畳みかけます。

「さっそくですが、新当主の挨拶を兼ねた舞踏会を開き、その場で婚約も発表しようと思います。そうですね、ひと月後、両親の忌が明けしだい、王都の屋敷で開催いたします。ですから叔父上、叔母上、見合いはすべて断ってください」

 爽やかにそうおっしゃったヒューバート様に、前ヘビントン侯の弟らが異を唱えました。

「待ちなさい、ヒューバート。分かっているのかね、ステイプルトン家は新興貴族成金だぞ。格式高いヘビントン侯爵家を継ぐとなると、それなりの家柄の娘を──」

 それに対して両親が気まずそうな表情をしたことに気づき、わたくしは申し訳なくなりました。

 確かに、身分の違いはございますわ。わたくしたち資本家階級は今でこそ貴族の仲間入りをしておりますが、昔からの貴族との間には、隔たりが残っているのです。

 ましてやヒューバート様は高位貴族ですものね。

 すると彼は、キッと親族を睨みました。

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