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第二章
帝都の様子
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(なんだろう)
クラリスはしょんぼりと俯きながら、カイトたちと宿に戻った。
自分では夫の命を救えたことに、でかした! と褒めてやりたい気分だったのに。
(すごく怒らせてしまった)
カイトは自分の着ていた上着をクラリスに羽おらせてくれたが、戻る途中一言も口を利いてくれなかった。
カイトの部下たちは、負傷者を担ぎ、簀巻きにした暗殺者を引きずるので忙しい。
誰も助け舟を出してくれない。
「あの……ごめんなさい」
クラリスは蚊の鳴くような声で謝った。カイトはむっつりしている。
カイトは今、無性に酒が飲みたかった。
もう飲まないって決めたのに。
背後からしょぼしょぼついてくる妻を張り倒してやりたい気分でいた。
この小娘は、どれだけ自分を怒らせたか分かってないだろう。
(俺は、また女に借りを作ってしまった)
もう帝国内にはいない上官を思い出す。
そう、あの女司令官とは別の意味で、借りを返せなくなるところだったのだ。
もしクラリスが死んでいたら、自分は二人の女に守られ、おめおめと生き残った大間抜け野郎、ってことになってしまう。
このカイト・レンブラン様が!
「本当に……後をつけてしまって――言うことを聞かないでごめんなさい」
クラリスはボソボソともう一度謝った。
カイトは深いため息をついて、やっとそれに応えた。
「礼は言わない。俺は自分のせいで誰かが死ぬのはごめんだ。俺のミスで誰か他のやつが死ぬくらいなら――」
カイトはぐっとクラリスを睨みつけた。
「死んだほうがマシだ」
吐き捨てるように言うと、齢の離れた嫁は真っ青になった。
(たぶん俺は軍人には向いてないんだ)
一兵卒からのし上がって士官にまでなったが、けっきょくいつも責任の重さが怖かった。
自分の命令で、自分に命を預けた人間が死ぬ。
それくらいなら、誰かのせいにしてそいつを恨みながら死ぬ立場の方が、ずっと気楽だ。
それを忘れさせてくれるのが、酒や媚薬だった。
自分のこの臆病なところは、すぐリッツ・マルソーに見抜かれてこう言われた。
「力を抜いて、適当にやれ。おまえみたいなのは投げやりくらいがちょうどいいんだ。戦場での数度の失敗くらい、笑って流せ」
自分はまともな状態では、命令を下すことすらできない。
虚勢を張っていないと、自分で手に入れたものとは言え、その地位や階級に押しつぶされそうだった。
カイトはガチガチの階級社会が嫌いで、叩き上げのアーヴァイン・ヘルツに傾倒した。
海の英雄は、生まれや育ちなど笑い飛ばしてしまうかのように、自分の力だけで昇進の階段を駆け上がる。
だが、何度か海戦を経験し、すぐ気づいた。
自分ではアーヴァイン・ヘルツにはなれないこと。
けっきょく、本当に一番嫌いなのは皇族でも貴族でも、この社会でもなく、自分だった。
判断を間違えて部下を死なす度に、部下に庇われて生き延びる度に、パニックを起こす弱い自分。
英雄にはなれない自分。
――クラリスが生きていて良かった。
(本当に、よかった)
ちらりと後ろに目をやると、クラリスは情け無い表情でとぼとぼ歩いている。
貴族のお嬢様がシュミーズ一枚で暴漢を追いかけるなんて、世も末だ。
カイトはそう思ったが、彼女の柔らかい腰のラインから白い太もも、ほっそりした足首にまで眼がいってしまう。
自分の嫁の立場にあるからだろうか、憲兵隊にチラチラ見られるのも癪に障る。
それよりも、追跡途中で他の男に見つからなくて良かった、と心底思った。こんなに物騒なのに。
そういや屋敷で彼女を襲った暴徒ども。
沸々と怒りが湧き起こる。いや、怒りの矛先は自分だ。
嫁の実家のことは、ずっと他人事にしか感じておらず、結果、ほったらかしにしてしまった。
この娘が何かされる前に、間に合って良かった。
それこそ、二度と立ち直れない。
「くしゅんっ」
クラリスがくゃみをした。
(ほら、そんな格好だから風邪ひくんだ)
カイトはイライラした。なにがって、ちゃんとした夫だったら、こんな時は抱き締めて温めてやるだろう。
宿に帰ったら、例えば裸でくんずほぐれつ。あの華奢な体を組みしいて愛撫して火照らして、すみずみまで温めてやれる。
たが、今さら夫づらなんて虫のいい……そこでハッと我に返った。
(くそっ、どうなってんだ)
カイトはどうでもいいはずの小娘の行動と、下着姿に悶々と悩まされている自分に気づいた。
こんな風変わりな小娘相手に、変な気持ちになるなんて、よっぽど女に飢えている。
カイトは深々とため息をついた。
ルチニアの任務から戻ってから、女を抱く気にならなかったからかもしれない。
失った「東艦」と乗組員たち。
そしてもう会えない上官を思うと、ムラムラする暇もなかった。
カイトの股ぐらの息子は、カイトと同じくいつもしょんぼりしていたから。
明日辺り、リッツにもらったエロ本で下の始末でもしとくか。
宿に着くと、宿屋の主人が窓の破けてない――そして給湯管の壊れていない――部屋に移してくれた。
しかしカイトは襲撃のあった部屋でいいと頑なに譲らず、その夜二人は別々の部屋で眠った。
クラリスは損をした気分になった。
シェルツェブルクに戻れば、同じ部屋で眠ることなどもうないかもしれない。
もちろん夫婦の営み的な期待はいっさいしてないのだが――おそれ多い――一緒の部屋に眠るだけでも、ちょっとした思い出になるはずだったのだ。
寝顔とか見ちゃったりして……。
シェルツェブルクの屋敷には、小さい頃から父親が議会に出るときは滞在していた。
だから使用人たちとも馴染みがある。
それでも結婚生活としては、孤独だった。
カイトと顔を合わせる機会なんてほとんど無かったし。
夫婦なのに。軍艦乗りの妻なんて、こんなものなのだろうか。
やはり、自分は邪魔なのではないか。
だが、領地の屋敷にはもう二度と住めない。
毎晩、両親の死に様を思い出すことになるのだから。
(ああ、そうか)
そもそも領地も屋敷も没収されるかもしれないのだ。
改めて、本当に何もかもが変わってしまったのだということを、実感したのであった。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
それからもう一度宿を取る機会があったが、やはりカイトは同じ部屋にはしてくれなかった。
意気消沈したクラリスがシェルツェブルクに着いたのは、その翌日の夜だった。
クラリスが驚いたことに、都は一見何も変わってないようだった。
揃いのお仕着せを着た御者が二頭馬車を走らせるレンガ通りには、煌々とガス灯が林立し、日の暮れた街並みを美しく浮かび上がらせている。
憲兵たちが通常通り街を警備し、劇場の帰りだろうか、身なりのよいご婦人たちの集団が、安心しきったように歩道を歩いていた。
「あの方たち、貴族ですわよね?」
馬車の窓から街を覗き見ていたクラリスが、不思議そうに尋ねた。
「帝政が崩壊したというのに、以前と同じような生活をしているのですか?」
カイトはにんまり笑った。
「直後は殺伐としてたみたいだぜ。都を出る馬車は、徹底的に調べられてたってさ。ある程度落ち着いた今は、大物はとっくに処刑か監獄行き。まあうまくやった連中は財産持って、都から逃亡したけど。だから今、地方が戦々恐々としているんだろうな」
海外の銀行の預金までは押さえられない。カイトはクラリスをじっと見つめた。
「――そもそも俺たちも含めて、貴族たちの領地や家財の処分の基準が、まだ決まってないんだ」
馬車がある屋敷の前を通りかかると、音楽まで聞こえてきた。
「ラッセル卿のご自宅だわ。まあ、こんな時に舞踏会まで……」
「ラッセル卿は元陸軍の士官でもあったからね。俺がまだ子供の頃の領土戦争では、けっこうな功績をあげてたみたいだ。大貴族だけど『高貴なる者に伴う義務』は果たしていたってことで、皇家とある程度懇意にあっても、以前の手柄を暫定政府が考慮したんだろ。免税特権が廃止されるから、遣えるうちに遣っちまおうってことかもな。――それでも、やっぱ外には出ないほうがいいと思うぜ。特に夜は」
馬車は大通りから王宮の敷地内に入った。
噴水の向こうに市庁舎が見えた時、クラリスは息を呑んだ。
市庁舎の向かいの市民広場には、皇帝の像が建っていたはずだった。
粉々に砕かれている。
それによく見ると、市庁舎の壁は落書きだらけだった。
やはりまったく前と同じでは無いのだ。
爪痕を見る限り、ある程度の混乱があったのは確かで、都の兵士たちがこの短期間できちんとそれを制したのだ。
宮殿は立ち入り禁止になっているので、馬車は遠回りして王宮広場の背後にある、水軍省の統括本部が置かれた建物の敷地内に入っていった。
カイトは馬車を停めさせると、素早く降りた。
「わるい、ちょっと後ろのやつ届けてくる」
護衛の部下が乗った馬とロープで繋いだ馬の上に、例の刺客が縛り付けられているのだ。
「尋問に時間がかかるだろうから、先に帰ってて」
「あの、でも!」
カイトは引き止めたクラリスに、怪訝そうな表情を向けた。
「なに?」
――旦那様の盾になる者が必要なのでは――
クラリスは、喉元まで出掛かった言葉を飲み込んだ。そこまで心配されても、逆にうっとおしがられるだろう。
「あ、いえ。あの、お勤めご苦労様です、艦長」
見よう見まねで敬礼してみる。カイトが固まった。
何てバカなことをしたんだろう、クラリスは顔を真っ赤に染めた。
カイトは、何かを堪えていそうな顔をしている。
「じゃなくて、その、お気をつけください、だ、旦那様」
旦那様って言っちゃった! 嫁気取りか! もうクラリスのバカバカっ。
頬っぺたをベッチンベッチン叩いて言い直す。
「じゃなくてカイト様」
「あんたって何か挙動不審だよな」
ついには笑いだしたカイトを、クラリスは眩しそうに見つめた。
※ ※ ※ ※ ※ ※
この男を責めたところで収穫無しだと悟ると、カイトはさっさと尋問をやめてしまった。
拷問が大好きで、聞き出すよりも痛めつけるのが好きな輩は殺すまでやるが、カイトに無抵抗な者を嬲る趣味はない。
はっきりいって時間の無駄だ。
第一、戦闘中でもないのに血を見るのは気持ち悪い。
男を強姦する趣味もないし。
「牢獄に放り込んどけ」
部下に命じた声は疲れきっていた。
依頼者はどこぞの貴族らしいが、分かったのはそれまでだ。
長めのフロックコートに、ぴったりした白のトラウザーズにブーツ、鍔広のトップハット。クラバットは白のレースだったとか。
特徴はこれだけ。たまに回顧主義に嵌ってジュストコールを身に着けている者もいるが、それは骨董品好きの皇家や、彼らにへつらう宮廷貴族の影響を受けた一部である。
ひどい時はさらに遡ってピッタリショースやらプールポワンやらコットピースやらを身に着けている者もいるが、たいてい街中ではドン引かれている。
そう、ほとんどの貴族はみんな似たような格好だ。何の手がかりにもならない。
報酬の受け取りも、場所と日時を指定しただけ。愚かなことにこの農民はその約束を守ってもらえると信じていた。
巧妙に正体を隠して遣いっぱしりにカイトを殺させようとしたわけだが、なぜちゃんとしたプロの刺客を雇わなかったのか。
銃の製造番号は用意周到に削ってあるのに、詰めが甘い。脅しが目的でそこまで確実に狙っていたわけじゃないのか、それともそうとうなケチかだ。
(もしあれがヴェルヘルム大佐だったら、おれは確実に撃ち殺されていた)
しまった。
またあの女のことを思い出してしまった。
カイトは苦虫を噛み潰したかのような表情を浮かべ、足早に廊下を歩いた。軍支給品の革のブーツの音がカツカツ響き渡り、その音が複数重なった。
(なんだ?)
後ろを振り返った。
廊下の明かりは抑えてある。
奥に人の気配がするのは確かだが、特に近づいてこようとはしない。
カイトはさりげなくホルスターに手を置く。……が、夜間や休暇中に本部庁舎に入館する際は、入り口の武器庫に銃を預けることになっていた。
そして今はまだ早いとは言え夜間だ。
カイトの額に冷や汗が浮かぶ。
その時、まばゆい光が顔にかかった。すぐ近くの部屋のドアが開いたのだ。
思わず身構えたカイトだが、
「おおっ! どうしたこんな時間に? 領地の視察に行ってたって聞いたけどよ、もう戻ってきたのか?」
ちょうど帰宅しようとしていたのか、軍支給の長い外套を腕に掛けたアルフォンソ・ヴァンダーノの姿を認めて、ホッと肩の力を抜く。
「ちょうどいい、明日ヘルツ中将――いや、元帥の部屋で会わせようと思ったんだが、おまえは先にすましておこう。治安警備艦隊『西風』の艦長候補だ。紹介するぞ」
アルフォンソの背後から、二人の軍人が顔を出した。
「いや、ちょっと待てよ、その前に今そこに――」
カイトは先ほどの気配を思い出して、背後を振り返った。
すると、気配の主は足音を忍ばせることも無く、ツカツカと近づいてきた。
明かりの中にまず革の軍用ブーツが現れる。
そしてほっそりした足。
「警戒させてしまったかしら?」
たおやかな声が聞こえた。
(――女?)
現れたのは、金の長い髪。
一瞬心臓が止まるかと思った。アルフォンソが茶化す。
「驚くなよ、俺も最初はびびったんだ」
そんなはずはない。そんなはずは――。
「私も艦長候補の一人、ダグレス・ネイロンと申します」
……違った。あの女じゃなかった。
カイトは薄明かりに照らされた顔を見つめ、ふーっと息をついた。
上背もあの女よりあるしがっちりしてるし、それに髪の色も白金ではなく茶金で、微かに波打っている。
よく日に焼けた肌の色は健康的で、瞳の色は赤みを帯びた茶色だった。
(大佐かと思った)
ダグレス・ネイロンはにっこりと、だが艶っぽくほほ笑んだ。
あの女では断じてない。ヴェルヘルム大佐はこんな風には笑わない。
「ちょっとお手洗いに。貴方が『南風』艦長のレンブラン大佐ですね。お会いできて光栄です」
握手を求めて手を差し出され、カイトはたじたじになった。
なかなかの美人だ。そして何よりも――。
男の性で、下に目線がいく。アルフォンソがワクワクしながら肘でカイトを小突く。鼻の下が伸びている。
軍支給のつまらない白シャツが、はじけそうに膨らんでいたのだ。
わぁ、すてき。
なんて巨乳。
ダイナマイト級だ。
「これから四人で飲みに行くところでしたのよ? もちろんレンブラン大佐もご一緒できますわよね?」
はっきりいって他の候補者なんてどうでもいい。カイトはガクガクと頷いた。
クラリスはしょんぼりと俯きながら、カイトたちと宿に戻った。
自分では夫の命を救えたことに、でかした! と褒めてやりたい気分だったのに。
(すごく怒らせてしまった)
カイトは自分の着ていた上着をクラリスに羽おらせてくれたが、戻る途中一言も口を利いてくれなかった。
カイトの部下たちは、負傷者を担ぎ、簀巻きにした暗殺者を引きずるので忙しい。
誰も助け舟を出してくれない。
「あの……ごめんなさい」
クラリスは蚊の鳴くような声で謝った。カイトはむっつりしている。
カイトは今、無性に酒が飲みたかった。
もう飲まないって決めたのに。
背後からしょぼしょぼついてくる妻を張り倒してやりたい気分でいた。
この小娘は、どれだけ自分を怒らせたか分かってないだろう。
(俺は、また女に借りを作ってしまった)
もう帝国内にはいない上官を思い出す。
そう、あの女司令官とは別の意味で、借りを返せなくなるところだったのだ。
もしクラリスが死んでいたら、自分は二人の女に守られ、おめおめと生き残った大間抜け野郎、ってことになってしまう。
このカイト・レンブラン様が!
「本当に……後をつけてしまって――言うことを聞かないでごめんなさい」
クラリスはボソボソともう一度謝った。
カイトは深いため息をついて、やっとそれに応えた。
「礼は言わない。俺は自分のせいで誰かが死ぬのはごめんだ。俺のミスで誰か他のやつが死ぬくらいなら――」
カイトはぐっとクラリスを睨みつけた。
「死んだほうがマシだ」
吐き捨てるように言うと、齢の離れた嫁は真っ青になった。
(たぶん俺は軍人には向いてないんだ)
一兵卒からのし上がって士官にまでなったが、けっきょくいつも責任の重さが怖かった。
自分の命令で、自分に命を預けた人間が死ぬ。
それくらいなら、誰かのせいにしてそいつを恨みながら死ぬ立場の方が、ずっと気楽だ。
それを忘れさせてくれるのが、酒や媚薬だった。
自分のこの臆病なところは、すぐリッツ・マルソーに見抜かれてこう言われた。
「力を抜いて、適当にやれ。おまえみたいなのは投げやりくらいがちょうどいいんだ。戦場での数度の失敗くらい、笑って流せ」
自分はまともな状態では、命令を下すことすらできない。
虚勢を張っていないと、自分で手に入れたものとは言え、その地位や階級に押しつぶされそうだった。
カイトはガチガチの階級社会が嫌いで、叩き上げのアーヴァイン・ヘルツに傾倒した。
海の英雄は、生まれや育ちなど笑い飛ばしてしまうかのように、自分の力だけで昇進の階段を駆け上がる。
だが、何度か海戦を経験し、すぐ気づいた。
自分ではアーヴァイン・ヘルツにはなれないこと。
けっきょく、本当に一番嫌いなのは皇族でも貴族でも、この社会でもなく、自分だった。
判断を間違えて部下を死なす度に、部下に庇われて生き延びる度に、パニックを起こす弱い自分。
英雄にはなれない自分。
――クラリスが生きていて良かった。
(本当に、よかった)
ちらりと後ろに目をやると、クラリスは情け無い表情でとぼとぼ歩いている。
貴族のお嬢様がシュミーズ一枚で暴漢を追いかけるなんて、世も末だ。
カイトはそう思ったが、彼女の柔らかい腰のラインから白い太もも、ほっそりした足首にまで眼がいってしまう。
自分の嫁の立場にあるからだろうか、憲兵隊にチラチラ見られるのも癪に障る。
それよりも、追跡途中で他の男に見つからなくて良かった、と心底思った。こんなに物騒なのに。
そういや屋敷で彼女を襲った暴徒ども。
沸々と怒りが湧き起こる。いや、怒りの矛先は自分だ。
嫁の実家のことは、ずっと他人事にしか感じておらず、結果、ほったらかしにしてしまった。
この娘が何かされる前に、間に合って良かった。
それこそ、二度と立ち直れない。
「くしゅんっ」
クラリスがくゃみをした。
(ほら、そんな格好だから風邪ひくんだ)
カイトはイライラした。なにがって、ちゃんとした夫だったら、こんな時は抱き締めて温めてやるだろう。
宿に帰ったら、例えば裸でくんずほぐれつ。あの華奢な体を組みしいて愛撫して火照らして、すみずみまで温めてやれる。
たが、今さら夫づらなんて虫のいい……そこでハッと我に返った。
(くそっ、どうなってんだ)
カイトはどうでもいいはずの小娘の行動と、下着姿に悶々と悩まされている自分に気づいた。
こんな風変わりな小娘相手に、変な気持ちになるなんて、よっぽど女に飢えている。
カイトは深々とため息をついた。
ルチニアの任務から戻ってから、女を抱く気にならなかったからかもしれない。
失った「東艦」と乗組員たち。
そしてもう会えない上官を思うと、ムラムラする暇もなかった。
カイトの股ぐらの息子は、カイトと同じくいつもしょんぼりしていたから。
明日辺り、リッツにもらったエロ本で下の始末でもしとくか。
宿に着くと、宿屋の主人が窓の破けてない――そして給湯管の壊れていない――部屋に移してくれた。
しかしカイトは襲撃のあった部屋でいいと頑なに譲らず、その夜二人は別々の部屋で眠った。
クラリスは損をした気分になった。
シェルツェブルクに戻れば、同じ部屋で眠ることなどもうないかもしれない。
もちろん夫婦の営み的な期待はいっさいしてないのだが――おそれ多い――一緒の部屋に眠るだけでも、ちょっとした思い出になるはずだったのだ。
寝顔とか見ちゃったりして……。
シェルツェブルクの屋敷には、小さい頃から父親が議会に出るときは滞在していた。
だから使用人たちとも馴染みがある。
それでも結婚生活としては、孤独だった。
カイトと顔を合わせる機会なんてほとんど無かったし。
夫婦なのに。軍艦乗りの妻なんて、こんなものなのだろうか。
やはり、自分は邪魔なのではないか。
だが、領地の屋敷にはもう二度と住めない。
毎晩、両親の死に様を思い出すことになるのだから。
(ああ、そうか)
そもそも領地も屋敷も没収されるかもしれないのだ。
改めて、本当に何もかもが変わってしまったのだということを、実感したのであった。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
それからもう一度宿を取る機会があったが、やはりカイトは同じ部屋にはしてくれなかった。
意気消沈したクラリスがシェルツェブルクに着いたのは、その翌日の夜だった。
クラリスが驚いたことに、都は一見何も変わってないようだった。
揃いのお仕着せを着た御者が二頭馬車を走らせるレンガ通りには、煌々とガス灯が林立し、日の暮れた街並みを美しく浮かび上がらせている。
憲兵たちが通常通り街を警備し、劇場の帰りだろうか、身なりのよいご婦人たちの集団が、安心しきったように歩道を歩いていた。
「あの方たち、貴族ですわよね?」
馬車の窓から街を覗き見ていたクラリスが、不思議そうに尋ねた。
「帝政が崩壊したというのに、以前と同じような生活をしているのですか?」
カイトはにんまり笑った。
「直後は殺伐としてたみたいだぜ。都を出る馬車は、徹底的に調べられてたってさ。ある程度落ち着いた今は、大物はとっくに処刑か監獄行き。まあうまくやった連中は財産持って、都から逃亡したけど。だから今、地方が戦々恐々としているんだろうな」
海外の銀行の預金までは押さえられない。カイトはクラリスをじっと見つめた。
「――そもそも俺たちも含めて、貴族たちの領地や家財の処分の基準が、まだ決まってないんだ」
馬車がある屋敷の前を通りかかると、音楽まで聞こえてきた。
「ラッセル卿のご自宅だわ。まあ、こんな時に舞踏会まで……」
「ラッセル卿は元陸軍の士官でもあったからね。俺がまだ子供の頃の領土戦争では、けっこうな功績をあげてたみたいだ。大貴族だけど『高貴なる者に伴う義務』は果たしていたってことで、皇家とある程度懇意にあっても、以前の手柄を暫定政府が考慮したんだろ。免税特権が廃止されるから、遣えるうちに遣っちまおうってことかもな。――それでも、やっぱ外には出ないほうがいいと思うぜ。特に夜は」
馬車は大通りから王宮の敷地内に入った。
噴水の向こうに市庁舎が見えた時、クラリスは息を呑んだ。
市庁舎の向かいの市民広場には、皇帝の像が建っていたはずだった。
粉々に砕かれている。
それによく見ると、市庁舎の壁は落書きだらけだった。
やはりまったく前と同じでは無いのだ。
爪痕を見る限り、ある程度の混乱があったのは確かで、都の兵士たちがこの短期間できちんとそれを制したのだ。
宮殿は立ち入り禁止になっているので、馬車は遠回りして王宮広場の背後にある、水軍省の統括本部が置かれた建物の敷地内に入っていった。
カイトは馬車を停めさせると、素早く降りた。
「わるい、ちょっと後ろのやつ届けてくる」
護衛の部下が乗った馬とロープで繋いだ馬の上に、例の刺客が縛り付けられているのだ。
「尋問に時間がかかるだろうから、先に帰ってて」
「あの、でも!」
カイトは引き止めたクラリスに、怪訝そうな表情を向けた。
「なに?」
――旦那様の盾になる者が必要なのでは――
クラリスは、喉元まで出掛かった言葉を飲み込んだ。そこまで心配されても、逆にうっとおしがられるだろう。
「あ、いえ。あの、お勤めご苦労様です、艦長」
見よう見まねで敬礼してみる。カイトが固まった。
何てバカなことをしたんだろう、クラリスは顔を真っ赤に染めた。
カイトは、何かを堪えていそうな顔をしている。
「じゃなくて、その、お気をつけください、だ、旦那様」
旦那様って言っちゃった! 嫁気取りか! もうクラリスのバカバカっ。
頬っぺたをベッチンベッチン叩いて言い直す。
「じゃなくてカイト様」
「あんたって何か挙動不審だよな」
ついには笑いだしたカイトを、クラリスは眩しそうに見つめた。
※ ※ ※ ※ ※ ※
この男を責めたところで収穫無しだと悟ると、カイトはさっさと尋問をやめてしまった。
拷問が大好きで、聞き出すよりも痛めつけるのが好きな輩は殺すまでやるが、カイトに無抵抗な者を嬲る趣味はない。
はっきりいって時間の無駄だ。
第一、戦闘中でもないのに血を見るのは気持ち悪い。
男を強姦する趣味もないし。
「牢獄に放り込んどけ」
部下に命じた声は疲れきっていた。
依頼者はどこぞの貴族らしいが、分かったのはそれまでだ。
長めのフロックコートに、ぴったりした白のトラウザーズにブーツ、鍔広のトップハット。クラバットは白のレースだったとか。
特徴はこれだけ。たまに回顧主義に嵌ってジュストコールを身に着けている者もいるが、それは骨董品好きの皇家や、彼らにへつらう宮廷貴族の影響を受けた一部である。
ひどい時はさらに遡ってピッタリショースやらプールポワンやらコットピースやらを身に着けている者もいるが、たいてい街中ではドン引かれている。
そう、ほとんどの貴族はみんな似たような格好だ。何の手がかりにもならない。
報酬の受け取りも、場所と日時を指定しただけ。愚かなことにこの農民はその約束を守ってもらえると信じていた。
巧妙に正体を隠して遣いっぱしりにカイトを殺させようとしたわけだが、なぜちゃんとしたプロの刺客を雇わなかったのか。
銃の製造番号は用意周到に削ってあるのに、詰めが甘い。脅しが目的でそこまで確実に狙っていたわけじゃないのか、それともそうとうなケチかだ。
(もしあれがヴェルヘルム大佐だったら、おれは確実に撃ち殺されていた)
しまった。
またあの女のことを思い出してしまった。
カイトは苦虫を噛み潰したかのような表情を浮かべ、足早に廊下を歩いた。軍支給品の革のブーツの音がカツカツ響き渡り、その音が複数重なった。
(なんだ?)
後ろを振り返った。
廊下の明かりは抑えてある。
奥に人の気配がするのは確かだが、特に近づいてこようとはしない。
カイトはさりげなくホルスターに手を置く。……が、夜間や休暇中に本部庁舎に入館する際は、入り口の武器庫に銃を預けることになっていた。
そして今はまだ早いとは言え夜間だ。
カイトの額に冷や汗が浮かぶ。
その時、まばゆい光が顔にかかった。すぐ近くの部屋のドアが開いたのだ。
思わず身構えたカイトだが、
「おおっ! どうしたこんな時間に? 領地の視察に行ってたって聞いたけどよ、もう戻ってきたのか?」
ちょうど帰宅しようとしていたのか、軍支給の長い外套を腕に掛けたアルフォンソ・ヴァンダーノの姿を認めて、ホッと肩の力を抜く。
「ちょうどいい、明日ヘルツ中将――いや、元帥の部屋で会わせようと思ったんだが、おまえは先にすましておこう。治安警備艦隊『西風』の艦長候補だ。紹介するぞ」
アルフォンソの背後から、二人の軍人が顔を出した。
「いや、ちょっと待てよ、その前に今そこに――」
カイトは先ほどの気配を思い出して、背後を振り返った。
すると、気配の主は足音を忍ばせることも無く、ツカツカと近づいてきた。
明かりの中にまず革の軍用ブーツが現れる。
そしてほっそりした足。
「警戒させてしまったかしら?」
たおやかな声が聞こえた。
(――女?)
現れたのは、金の長い髪。
一瞬心臓が止まるかと思った。アルフォンソが茶化す。
「驚くなよ、俺も最初はびびったんだ」
そんなはずはない。そんなはずは――。
「私も艦長候補の一人、ダグレス・ネイロンと申します」
……違った。あの女じゃなかった。
カイトは薄明かりに照らされた顔を見つめ、ふーっと息をついた。
上背もあの女よりあるしがっちりしてるし、それに髪の色も白金ではなく茶金で、微かに波打っている。
よく日に焼けた肌の色は健康的で、瞳の色は赤みを帯びた茶色だった。
(大佐かと思った)
ダグレス・ネイロンはにっこりと、だが艶っぽくほほ笑んだ。
あの女では断じてない。ヴェルヘルム大佐はこんな風には笑わない。
「ちょっとお手洗いに。貴方が『南風』艦長のレンブラン大佐ですね。お会いできて光栄です」
握手を求めて手を差し出され、カイトはたじたじになった。
なかなかの美人だ。そして何よりも――。
男の性で、下に目線がいく。アルフォンソがワクワクしながら肘でカイトを小突く。鼻の下が伸びている。
軍支給のつまらない白シャツが、はじけそうに膨らんでいたのだ。
わぁ、すてき。
なんて巨乳。
ダイナマイト級だ。
「これから四人で飲みに行くところでしたのよ? もちろんレンブラン大佐もご一緒できますわよね?」
はっきりいって他の候補者なんてどうでもいい。カイトはガクガクと頷いた。
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