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本当に優しくできなかったフェルナンド

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 ミチミチ音を立てながら侵入してきたフェルナンドの股間の船長は、まるで略奪するように我が物顔で奥まで突き進んだ。

「あっ──っ……あぐぁっ!」

 ジョセフィーナは苦痛の喘ぎをあげる。

 ……フェルナンドが必死に突き進む船を止めよう戦っているのが、その困惑し歪んだ形相から伝わって来た。

 どうやら本人にも制御不能らしい。

 これではまるで海賊船ではないか。ぶつかって乗り込んでくる衝角戦法そのもの。

 根元まで入ったところで、フェルナンドはやっと止まった。

 串刺しにされてもがいているジョセフィーナに、絶望的な眼差しを向ける。

「くそ……ごめん……どうしてこんなことに……俺……俺は……もっとゆっくり、少しずつ港に入れようと……」

 声に後悔を滲ませながら、短い息を繰り返すジョセフィーナの乳房に顔を埋め、ぎゅっと抱きしめてくる。

「吸い込まれたんだ……渦潮に巻き込まれるように」

 ジョセフィーナは彼の弁明を聞きながら、呼吸と共に痛みを逃した。

 フェルナンドがそのまま動かずにいてくれたので、徐々に痛みが引いていく。

 たしかに、引き裂かれるように痛くて、押しつぶされるような圧迫感だ。

 それなのに、フェルナンドとぴったり密着した喜びは、その痛みを忘れさせてくれた。

 合体している。もう二度と会えないと思っていた人と……。

 ジョセフィーナはフェルナンドの首に強くしがみついた。耳元で囁く。

「わたくしたち、今、ひとつになっているのね」

 離れてはいけない存在なのね、とジョセフィーナは妙に納得していた。

 フェルナンドが驚いて顔を上げ、ジョセフィーナの顔をのぞき込む。

 苦痛と非難の色を探そうとしているようだ。不安そうに、眉尻が下がっている。ジョセフィーナは微笑んで安心させようとした。

 今や、固い胸板に押しつぶされた乳房も、彼と同化したがっている。唇も……。

「キスは、してくれないのですか?」

 上も下も、深く繋がっていないとダメなことが、この人には分からないのかしら?

 フェルナンドは額から汗を滴らせながら、ジョセフィーナの瞳を食い入るように凝視していたが、やがてドロリとした低い声で言った。

「やめろ、体をバラバラにしてしまいそうだ」
「キス」

 目を閉じてせがむと、毒づく声が聞こえ、薄い唇が覆い被さる。柔らかい舌が入ってきたので、ジョセフィーナは夢中で啜った。

 気持ちいい。彼の星型の痣が、心地よい痺れをもたらしてくれる。媚薬とは、こんな感じなの?

「──ぐっ!?」

 ズルッと熱い肉が抜かれた。でも舌から注入される甘い痺れ薬のせいで、それほど痛くなかった。

「──んぐっ……んぐあっ!」

 また突かれた。滑るように抉られたので、やはり痛みはあまりなかった。その代わり、全身を駆け登るむず痒さに、ざわっと鳥肌が立った。

 また引き抜かれた。あ……擦れて気持ちいい。恍惚となった時、ズンッと奥に当たるほど貫かれる。

 ぶわっと涙が溢れた。おかしい、なぜか涙が出るの。痛いわけではないのに。

 そう、もう痛いわけではない。気持ち良すぎて、感極まった涙が止まらない。

 ふと、顔に雫が落ちてきたことに気づき、目を見開く。フェルナンドも泣いている? 唇を離した。

「フェルナンド?」

 フェルナンドは汗をパタパタ落としながら、ごめん、ごめん、と突き上げてくる。

「止められない、絡みついて……」

 抱きしめながら、腰をぶつけてくるフェルナンドの声は欲望にざらついているが、自責の念に駆られているようにも聞こえた。

「こんなはずじゃないのに」

 ズルッ……。

「気持ちよすぎて」

 ズンッ!

「痛いよな」

 ズルッ……。

「ごめん」

 ズンッ!


 フェルナンドは、己が理解できなかった。艦乗りなんぞやっていたのだ。

 陸にあがれば、あちこちの女で欲望を満たしてきた。こんな風に制御できなくなったことなど、今まで一度もないのに。まるきり止められないのだ。

 そうか……。

 華奢なジョセフィーナの腰を左手で抱き、指を絡めるように右手を繋ぎ、さらに深く抉りながらやっと気づいた。

 俺、素人童貞だったわ。

 恋焦がれた女とやったことなどなかった。

 フェルナンドを夢中にさせていたのは大海原と血なまぐさい戦いであり、そこに愛だの恋だの入る余地はなかった。

 ジョセフィーナ……可哀想に。

 彼女は海賊に魅入られた、宝の船。略奪されるだけの。

 ジョセフィーナのか細い声が上がる度に、身を引き裂かれそうなのに。どうしよう、カクカク攻める腰を止められない。

 どうして、初めての時に痛いのは男じゃないんだ。どうして、女ばかりこんな目に……。

「フェルナン……ド……うぁっ……く」

 泣きながら訴えてくる腕の中の天使。こんな清らかな可愛いものを、醜い怒張は抉り嬲る。

 そう、苦痛を与えているのだ。

「ジョセフィーナ……許して」
「あんっ! ちがっ……ひゃん! 聞いて──」

 ジョセフィーナが必死に訴える。

「痛いわけではありません。気持ちいいの。もっと速く乱暴にして平気よ」


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