【R18】ハメられましたわ!~海賊船に逃げ込んだ男装令嬢は、生きて祖国に帰りたい~

世界のボボ誤字王

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おしっこがもれそうなのですが

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「縄梯子も上れねーってどういうこった!?」

 人相の悪い水夫は、舷側を登りきってからジョセフィーナを露甲板に放り投げた。ジョセフィーナを片腕に抱えてここまできた彼は、床板の上に尻もちをつく彼女の横で、はぁはぁ息を荒げながら汗を拭った。

「ちょ……お前、船乗りの養成所にいたなんて嘘だろ! 船長に怒られるのは俺だぞ、よし返そう!」

 預かった瞬間、一瞬で粗悪品を掴まされたと見抜いた水夫は、慌てて舷縁から海を覗き込んだ。

「あ、おい!」

 さっさと離れていく漁火を見て、唖然とするコワモテ水夫である。

「あーくそ」

 スカーフの上から頭をがりがり掻き、ランタンを掲げて厄介者を照らすと、その水夫は言った。

「今日の当直はついてないぜ」

 しかしすぐに彼は、もうどうしようもねぇけどな、と観念したようなため息をついた。

「船員不足だし、無料だし、今からみっちり教え込むしかねぇ。まあ、厳しく指導すりゃー、三ヶ月後には使える船乗りになっていることだろうしな」

 まごつくジョセフィーナに、水夫は吹っ切れたように明るく聞いてきた。

「俺はアリリオ、お前は?」

 ジョセフィーナはジョセフと名乗った。

 灯りを近づけると、顔をじっくり見てくるアリリオ。

「ほう、あれだな。女と間違って攫ったら、男だったってやつかな。ルナ教では男色は鞭打ちだから、レガリアでは売れなかったんだろう。それでポイされたんだ、ズバリ?」

 ジョセフィーナは顔を背けた。

「ええ、そんなところで──で……がんす 」
「がんす!?」

 ……危なかった、お嬢様言葉をどうにかしなければ、とジョセフィーナは思った。でも、ですわ、ますわ、ざます、などのお嬢様言葉以外、彼女は話したことなどないのだ。

 難易度高すぎですわ!

 とりあえず漁師らの話し方を真似るとして、少年にしては高いこの声のこともある。なるべく口を開かないにこしたことはない。

 ただ、たった今どうしても伝えなければならないことがある。

 命に関わるくらい大事なことだ。

「アリリオさん」

 プルプル震えながら、涙目で水夫を見上げた。アリリオはその顔を見て、おおっ、かわゆいな、と呟いたがジョセフィーナは今、それどころではなかった。

「トイレを貸してくださいでげす」

 実はもう限界だった。

 アリリオはそんなことか、と軽い調子で船の舳先を指さす。

「ほれ、やってこい」

 ただの舳先だ。

 きょとんとしていると、ロープでゴチャゴチャした甲板を先に立って歩き出す。

「この下だ」

 舳先の下、船嘴に踊り場のようなスペースがある。

 そこに穴の空いた木の箱が六つ打ち付けてあった。下は格子床、その下は海だ。

「海が荒れる日は落ちて死ぬからな、気をつけろ」

 わなわなしている子供の様子に気づいたのだろう、アリリオは首を傾げた。

「風下だから船も汚れねえぜ。波が全て洗い流してくれる。大きな水洗トイレだ、きんもちいいぜ~。連れションするか?」

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