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アリビア帝国編 Ⅱ

リンファオ、また脅される

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 リンファオはニコロスの刺客としては実に立派に働いたが、情報部の仕事の方はまったく駄目だった。

 護衛相手を守れていない。

 もし自分が本気で警護したら、誰も死ななかっただろう。

 だが、リンファオが警護した相手は、ことごとく暗殺された。

 他でもない、リンファオが殺しているのだから当然なのだが。


「申し訳ありません」

 四人目が殺されたとき、リンファオは上官に平謝りしていた。

「全て夜中に起こったことなので。私は寝室にまで入ることができません」

 言い訳しながら、もう止めたいと思った。

 こんなこと、止めたい。自ら死を選ぶことさえ、リンファオには許されていないのだが……。

 息が詰まり、敵の目の前ですら、演技し通すのが難しくなってきた。

 この男に言ってしまいたい。全て自分がやっていると。

 そうすれば殺してくれるかも。

 もちろん……そんなことできない。この命は抵当に入っている。どんな形であれ、自分が死ねば、価値の無くなったシャオリーたちの命運も尽きることになる。

 フランソル・ミシュターロは、リンファオの顔色を気づかったのか、慰めの言葉をかける。
 
「実はかなり前から、とんでもない刺客が都を跋扈しているんだ。君のせいではない。きっと相手は、土蜘蛛並みの身体能力を持つ刺客なのだろう」

 言われて、ドキッとした。顔をあげると、ミシュターロ大尉はにっこり笑った。

「私は情報部を離れることになった。治安警備艦隊の艦長に任命されてね。しばらく艦に乗ってないので、演習に出なければならない。君はまた少し事務作業に戻りなさい。それでも指示は、私から行くから覚えておいてくれ」

 リンファオは首をかしげた。

 配属替えに──情報部では無くなるのに、どうして彼がまだリンファオに指示するのだろう。



※ ※ ※ ※ ※ ※ ※



 それから二年、皇帝からも情報部からも、危険な依頼を受けなかった。

 もう殺し尽くしたのかもしれない。

 ほっとしていた。

 敵ではない者、向かってこない者を殺さなくて済むことが、こんなにも心の平穏を保ってくれる。

 ここのところ、軍関係者の反意が無くなってきているようだ。

 下院議員は、議会で発言も控えているらしい。

 やけに従順なのが気になる、とニコロスは気にしていたが、とっくに一連の暗殺が皇帝の差金だと気づいているのだろう。そりゃあ、おとなしくもなる。

 ニコロスは今は、警戒していた水軍より、上院の大貴族たちの税制改革案に腹を立てていた。

 そろそろ事業主でもある大貴族たちを、リンファオに命じて粛清させる日が近そうだ。

 リンファオは仕事をするとき、命に対する感覚を麻痺させ、心の一部を殺した。

 ヘンリーの護衛をしていた時は、ここまで命を奪うことへの抵抗は無かったのに。

 相手が無防備だから? それとも、母親になったからだろうか。殺す相手がおっさんでも、ちょっと前までは赤ちゃんだったんだよな、とチラっと頭に浮かんでしまうのだ。

 もう、相手を人形だと思うことにした。

 それでも、今度殺しの依頼がくれば、耐えられるか分からなかった。早く解放してほしかった。

 ニコロスの政権に陰りが無くなれば、自由にしてくれるのではないか。そんな儚い望みだけを糧に、日々を過ごしていた。

 未だに情報部という機密機関に疑いをもっているニコロス。彼の命令で、ずっと翡翠宮に戻ることができず、寮で寝泊りしていた。

 ヘンリーやシャオリーに会いたい気持ちが募っていくが、それはかなわぬ願いだった。

 生きていることを慰めにした。

 ほかの情報部の人間は各地に派遣されて活躍しているようだが、役立たずのリンファオには護衛の命令も無かったので、実にのんびりした二年だった。



 しかしその二年で、ニコロスの言動の異常性はますます臣や国民に不安を与えていた。誰が見ても、常軌を逸したものになりつつあったのだ。

 特に最近は、夜中に死んだ妃の名前を呼びながら徘徊し、まともな睡眠をとってないという噂を聞いた。 

 アルコールの摂取のしすぎ、あるいは、深刻な病による自暴自棄。巷ではそんな噂が密やかに囁かれていた。

 時折見えるあの瞳の中の深淵。不信感、猜疑心、憎しみ、孤独、そして虚無。それが年を重ねるごとに、皇帝の心を確実に壊しつつある。

 その間に、水軍の勢力はいつの間にか増していた。

 皇帝の命令を凌ぐほどの勢いで、領地を広げていっている。軍が一人歩きしているような状態の中、ニコロスは後宮と琥珀宮にこもり、宮廷貴族たちと遊びに興じる毎日を送っていた。

 政務にも興味を失ってきたようにも見えた。

 だからだろうか、密偵の役割をあまり果たしていないのに、何も言われない。

 アル中のニコロスはついにリンファオのことを忘れた? これほど放っておかれると、今こそヘンリーとシャオリーを連れて逃げられるのでは? という気持ちになってくる。

(でも、この両手では抱けない)

 リンファオは癖のように、自分の手を見つめるようになっていた。

 ロクサーヌの言葉が頭から離れない。ほんとうにその通りだと思うから。今更だが、無抵抗なものを殺しすぎたのだ。


 里を出て、もう十年近くになる。本当なら二十五、六、の大人の女になっているはずのリンファオは、相変わらず少女のような風貌のままだった。




※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


 そんな、油断していたある日のことだ。

 シャオリーの成長を思い描きながら、ぼんやりと資料室の整理をしていると、バンッと勢いよく扉が開いた。

 棚がグラグラと揺れ、地図帳や辞書が落ちてきそうになる。リンファオは慌ててドミノ倒しにならないように本棚を支えた。

「なんなんですか、あなたは!?」

 リンファオは腹を立てて相手を睨みつけた。

 いかつい顔の軍人が立っている。

 軍人と分かったのは軍服を着ていたからだが、シャツははだけているし、上着は肩から羽織っただけだ。

 しかも、無精ひげだらけ。

 火気厳禁の資料室に、くわえ煙草で入ってきたこの男は、どう見ても不審者だった。

 ところが、襟元の階級章を見ると、将校のバッジが付いている。


「おまえが、土蜘蛛か?」

 口から心臓が飛び出す、という比喩が現実になりそうになった。

 あたふたと当たりを見渡し、聞き間違えじゃないかともう一度相手を見つめる。

 え?

「土蜘蛛か、と聞いているんだ」

 唖然として黙っているリンファオ。

 そんな彼女につかつかと近づいてくると、問答無用で顔の包帯をむしりとった。

 動揺していたので防ぐことも忘れ、素顔をさらしてしまう。

 慌てて顔を覆うが、晒された一瞬を、男は見逃さなかった。

 男は、うめき声をあげた。

「すごいな。身の毛がよだつ美、なんてのが本当にあるとは。土蜘蛛が顔を晒さないわけだ」

 リンファオはやっと我に返った。

「お、おまえは何だ?」

 男は面白くもなさそうに肩をすくめる。

「何って……おまえの上司の代理だよ。あいつは別の任務についていて来られないからな。俺が直接指揮する」
「何を言っている?」
「皇帝がおまえを呼び戻そうとするだろうが、おまえは行かなくていい」

 後ずさるリンファオ。訳が分からず、恐怖に囚われている。

「大丈夫だ。おまえの家族は保護した。ニコロスの元に戻る必要なない」

 家族を保護した、という言葉に目を見開いて棒立ちになる。

 どうして、この男が……。

「俺はアーヴァイン・ヘルツ。階級は中将だ。信じてないようだが、治安維持活動から戻ったばかりでこんな姿なんだ。ことは早急に進めなければならん。今までも協力してくれていたようだが、これからが本番なんだ」
「な、何を言っているか分からない」

 リンファオは泣きそうになっていた。家族は……ヘンリーとシャオリーは何処だろう。

「保護したって……」
「ああ、土蜘蛛に狙われないように、とある場所に身を隠させている。おまえの協力次第では、ことが済んだら国外に逃亡させよう」

 翡翠宮から家族を連れ出すことは、リンファオにとっても簡単だ。

 だが、連れて逃げるとなると別である。皇帝は必ず裏切ったリンファオへの報復として、ほかの土蜘蛛に知らせるからだ。

 つまり、番人たちが──おそらくロウコが来る。

 何の力も無い夫と子供を連れて、気配を消しながら何処に逃げればいいのか、リンファオには分からなかった。

 だから皇帝の飼い犬になっていたのだ。

「何てことをしてくれるんだっ」

 リンファオは、男に掴みかかった。

「土蜘蛛の力を舐めているの? 私を追って恐ろしい奴らが来るんだぞっ。シャオリーは、あいつらにとっては生まれてはならない子だ。存在がばれたら、地の果てまで追ってくる」

 アーヴァインは鼻で笑った。

「シャオリーというのはおまえの娘か? もう土蜘蛛の、その気配とやらを放っているのか?」

 リンファオは言葉に詰まった。

 よく分からないが、さすがに修行も受けていない混血の子供の気配は分からないのではないか、と思った。

 だって、母親である自分にその居場所がわからないのだもの。あの、爆発的な「気」の放出さえ無ければ。

「しばらくは大丈夫だ。一家三人で狩場の森に遊びに行くところを、賊に拉致られたことした。が、実際は皇帝の命令という名目で、丁重にお連れした。本人たちは拉致されたことに、気づいてもいないだろう」

 なるほど。目的が保護で、殺気が無かったから、青虎が反応しなかったんだ。リンファオは唇を噛んだ。

 アーヴァインは、熱を込めて説得する。

「要は、おまえが家族に近づかなければいい。おまえは、自分の身ならば守れるだろう?」


 それは、境遇的には今までと同じだった。リンファオは歯噛みした。

 いや、もっと悪い。

 同族に自分とシャオリーの存在が知られるのだから。

 リンファオは青ざめた顔で、しばらく黙っていた。

 アーヴァイン・ヘルツはその奇跡のように整った顔を見つめながら、もう一度答えを迫った。

「あまり時間がない。家族の安全は絶対に約束する。だから決断してくれ。俺の下についてほしい」
「断れば夫も娘も殺すのでしょう?」

 リンファオは食いしばった歯の間から、絞り出すように言った。アーヴァインは肩をすくめる。

「まあ、そうなるな」
「だったら、命令しろ。その方が潔い」
「あの男はそうだったのか?」

 アーヴァインの目が光る。リンファオは、その憎悪に満ちた目を見ながら頷く。

 この男の妻、ナターリアの顔を思い出した。

 そうだ……。この男は、リンファオよりはるかに皇帝を憎んでいる。

「ならばよけいおまえに選ばせよう。泣いてニコロスにすがるか、俺の指示通り動いて家族を守るか、どっちかだ」

 どこまで里の事情を知っているのかは分からない。だが、リンファオの苦悩には気づいているようだった。

「俺たちだって、土蜘蛛の脅威は知っている。だからお前に賭けているんだ」

 どういうことだろう。リンファオは訝しげに思った。しかし諦めたように肩を落とした。

「ニコロスに縋っても、もう無駄だよ。おそらく奴は、今すぐにでも里に連絡する。もうしてるかも。そういうやつだ。それに、国内の敵は排除させたと思っているから、私の利用価値もあまり見出していない」
「敵の半分はガセなのになぁ」

 アーヴァインはニヤッと笑う。

「おまえがフランソルから指示を受けて暗殺した奴らは皆、ニコロス至上主義の──貴族出身で国教会の聖職者だったり、元陸軍出身の邪魔な連中ばかりだ。ニコロスは自分が目をかけていた部下にばかり裏切られ、ますます人間不信になったことだろう。だいぶ深酒するようになったらしいからな」

 リンファオは目をむいた。この男たちの敵を倒すのに、利用されていたということだ。

「狂信的なニコロス信奉者たちまで殺せば、お前がこちらに操られていたことに気づいたかもしれない。だが、親衛隊には手を出してないからな。だいぶ掃除が進んだ」

 いや掃除って……。

「まあ、そいつらは絶対に寝返らないから、曲者なんだよな」
「今度はそいつらを殺れって? 私のこと、いつから知っていた?」
「おまえが来る前からだよ。ラムリム市で偶然おまえに会った、アルフォンソ・ヴァンダーノ大佐からの情報だ」

 髭の大男を思い出すリンファオ。

「それからおまえの足取りを推測した。特区にも諜報員を送って何があったか調べさせた。他国の間者が介入してそうな事故は、情報部も調べることになっているのに、爆発事故の調査報告すら開示され無かった。それどころか皇帝直々、情報部が入ることを禁じた。怪しいことこの上ない」

 アーヴァイン・ヘルツはちょっと息継ぎをし、再び話しだした。

「──そして、水軍幹部の死が続いた。俺も狙われるかと思ったぞ。治安維持で海に居て良かった。何とかお前を手に入れたいと思っていたら、お前の方から飛び込んできてくれたわけだ」

 こいつらの方が、皇帝よりうわ手だったらしい。リンファオは息を付いた。

「もういい。……残ってるニコロスの信奉者たちを殺せばいいの?」

 どうせ、やることは一緒なんだ。だが、親衛隊は国教会騎士団として、領地に私軍を持っている。開き直って全滅させるにも、一人ではやっかいだ。気功を使わなければならないかもしれない。

 それで番人たちに捕まったら、拷問されてシャオリーの居所を聞き出される前に自害してやる。そう決意した。

 しかし次の言葉を聞いて愕然となった。

「標的は、皇帝の護衛集団『土蜘蛛』だ。断ったらおまえの家族は殺す。皇帝の前に引き出すだけでいいんだ。簡単なこった」

 そりゃ、リンファオの家族を殺すのは簡単だろう。だが──。

「……九人、いや、私のいない後補充されたとして、十人の精鋭がいるんだよ?」

 青ざめた顔で呟くリンファオ。しかしアーヴァイン・ヘルツは不敵に笑うだけだった。

「フランソルはお前を相当買っていたぞ。情報も入ってる。最年少の巫女あがりの剣士らしいじゃないか」

 リンファオは仰天した。

 土蜘蛛の──自分の秘密をどうやって探ったのだろう。あのフランソルとかいう男は何者なのだろう。

「た、ただの人間に土蜘蛛の能力が測れるものかっ。私はずっと同胞レベルと戦っていない……それを選り抜きの、しかも複数の相手をいきなりしろなんて、正気の沙汰じゃない」

 できるわけがないのだ。

「麒麟という民族を知っているか? 東の国の神獣という意味ではないぞ。それを神と崇める、おまえらと同じ少数民族だ」

 リンファオが紫の瞳を瞬かせる。アーヴァインはそれに見とれそうになり、一瞬頭をふった。

「そいつらを見つけだした。大枚はたいて、見つかった部族の五人、全て雇った。一人をおまえにつける」
「本物なのか?」

 法力のこもった円陣を描き、結界とする一族。その結界の中にいる者の力を無力化するという。

 だけど蛟と違い、土蜘蛛やクラーシュと同じで、半ば生存すら伝説化している。小グループごとに分かれて生息しているという説もある。

「さらに、もうすぐ土蜘蛛の里で五十年ぶりだかの大祭があるだろう? 残念ながらニコロスは全ては帰省させないだろうが、護衛の数は減るはずだ」

 ほんとうに、そうだろうか。リンファオは訝しんだ。

 大祭は一族の大事な儀式の日だ。里から招集命令は出るだろうが、雇い主がそれを受理するかどうかはまた別である。現に、一度クーデター未遂があってから、小さな祭りでも土蜘蛛が全員引き上げることは無くなった。

 アーヴァインは、リンファオの様子に気づいて頷く。

「まあ、その時は、命をかけるしかないな。おまえが失敗したところで、俺たちに足はつかない。傍観どころか、皇帝を守るそぶりをする。軍には何の痛手もないんだ。だがまあ、おまえが失敗した場合、おまえの家族がどうなるかは分かるよな?」

 けっきょく捨て駒ということなのだ。リンファオは唇を噛んだ。

「自分の家族も守れなかった男の、そんな危険な話に乗れと?」

 それを言った途端、男の形相が変わった。歪んだ、と思ったのは一瞬で、笑ったのだ。

「なあ、おまえ、何人殺したんだ? 俺の家族の話を知ってるなら、よけい受けるよな? 何をするか分からないぜ、復讐に狂った男は」

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