53 / 98
蛟の隠れ家編
一方的な虐殺
しおりを挟む(2章開幕です!短めですが……)
隆人はティナの案内で長いこと過ごしてきた迷宮から遂に出ることに成功する。そしてその先に広がっていたのはまさに大都市といえるものであった。
「うわ、すごいなこれは……」
「どうですかリュート様、これが迷宮都市です」
迷宮都市ディアラ、それはグランザム連合王国に位置する都市であり、その地下に広がる迷宮によって栄えている。
その迷宮ーー大迷宮ディアラはその世界でも最大規模の迷宮でありその底は見えず、一説には世界の果てに続いているのではないかとも言われる程の魔境である。
その一方で今なお数多くの冒険者達にとっての憧れの場であり毎日多くの冒険者が迷宮にもぐる。
そしてその冒険者を相手にする商店や宿ができ、それが村になりやがて街になった。
現在その規模は王国の都市でも最大クラスにまでなっており、迷宮を中心とした半径2キロの円状の都市に数万人がひしめきあっている。
ちなみに、世界には他にもいくつか迷宮都市があるが、その全てが元となった迷宮の名称をそのまま都市の名称としている。
「予想以上に大きいね、これは驚いたな」
「迷宮から見て北が貴族区、東が商業区、南側の一部が行政区で、南側の残りと西側が住居区になっているんですよ」
この都市に始めてきた隆人に、ある意味先輩と言えるティナが迷宮都市の構造を教えてくれる。
ちなみに、今更だがこの世界には貴族が存在する。この王国にいるのは官僚として政治的な立場を持つ法衣貴族と、自分達の領地を持ちそこを管理している領地貴族の二種類が存在する。と、この辺の話はおいおい出てくるとして、この迷宮都市も貴族の領地である。
そしてこの規模の都市をまかされる程の貴族となると派閥を持っており、その派閥内の貴族達の別邸と呼べるものがあるのが、先の貴族区なのである。
街の北側にあるが基本的に一般市民はほとんど近づかない場所でもある。
「先ずはギルド……冒険者ギルドに行きましょう!私の帰還報告とリュート様もこの都市に滞在するのであれば登録しておいた方がいいですし」
「そうだね、しばらくはここを拠点にするだろうし身分がないのは色々不便そうだ」
「冒険者ギルドはすぐそこにあります、場所としては商業区になりますね」
一応冒険者ギルドは政府とは独立した組織であり、街の商業区に存在することが多い。
迷宮の出口から商業区の方面に進むこと数分、隆人達は冒険者ギルドに着いた。周辺と比べて一際大きな建物で横には厩舎のようなものもある。
ティナは慣れた足取りでギルドの中に入っていき、隆人もそれに着いていくようにギルドに入った。
「広いね、そして……うぅん……」
「どうしたのですか?リュート様」
「いや、テンプレだなって思ってね」
「てんぷれ?何のことでしょう?」
「……なんでもないよ」
冒険者ギルドの中は一言で言えば「予想通り」であった。入って右側に受付のようなところが何列かあり、そこに何人かの冒険者が列を作っている。そして左側は酒場のようになっていた。アルコールが入った冒険者達が騒いでいる。
まさにテンプレ、小説やゲームの中にある冒険者ギルドのイメージそのものだった。
「ではリュート様、受付の列に並びましょうか。冒険者登録は受付で申請すればできますよ」
「ありがとう、助かるよ。にしてもなんか騒がしくないか?」
たしかに、ギルドの中の様子は忙しないといったものである。職員達もあたふたと動き回っているし、冒険者達も忙しそうに準備している。
「ねぇ君、何かあったのかい?」
「なんだお前知らないのか?下層にAランクの魔物が出たらしい!さっき下層探索中のパーティが一つ壊滅状況で帰ってきて、ギルドに着くなり大声で報告してきたんだよ。今緊急の討伐隊の招集やらなんやらでギルドは大騒ぎさ」
隆人はその場にいた冒険者1人に話を聞く。それによると迷宮で問題が起き、ギルドはその対処に追われているということらしい。
そして隆人達にとってこの話は聞き覚えなんてものではない。「下層」「Aランクの魔物」という単語で大体の予想がついた。
「ねぇ、そのAランクの魔物ってもしかしてサイクロプスじゃない?」
「なんだ知ってるじゃないか、そうだよ35階層にサイクロプスが出たんだ、DかCランクまでしかいないはずの下層でAランクなんて前代未聞の大事件だよ!」
「…………リュート様」
「うん、多分……ね」
そこまで聞いて隆人達は納得した。ここで騒ぎになっているAランクの魔物は十中八九アイツだろう。
「これは、思った以上に大騒ぎになっちゃったんですね……。早く報告しないと手遅れになりそうです」
「俺の冒険者登録は後回しだね」
早くサイクロプスの討伐報告をしないとと受付に並ぶーーわけもなく、緊急用にすぐ横に準備されている別受付の方に向かう。
「すいません!緊急の報告なんですけど!」
「……どうしました?」
ティナの声にギルドの中から人が出てくる。ティナがサイクロプスの討伐についての報告をする。
「ーーというわけで、サイクロプスについては討伐完了しました」
「わかりました。一応確認は必要ですが警戒レベルは下げても良さそうですね」
とりあえず一通りの説明を終え、ひと段落と思ったところで……
「ティナちゃん!無事だったんだね!」
そんな声と共に男4人組のパーティが近づいてくる。
0
お気に入りに追加
67
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
あなたが残した世界で
天海月
恋愛
「ロザリア様、あなたは俺が生涯をかけてお守りすると誓いましょう」王女であるロザリアに、そう約束した初恋の騎士アーロンは、ある事件の後、彼女との誓いを破り突然その姿を消してしまう。
八年後、生贄に選ばれてしまったロザリアは、最期に彼に一目会いたいとアーロンを探し、彼と再会を果たすが・・・。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
再会した彼は予想外のポジションへ登りつめていた【完結済】
高瀬 八鳳
恋愛
お読み下さりありがとうございます。本編10話、外伝7話で完結しました。頂いた感想、本当に嬉しく拝見しました。本当に有難うございます。どうぞ宜しくお願いいたします。
死ぬ間際、サラディナーサの目の前にあらわれた可愛らしい少年。ひとりぼっちで死にたくない彼女は、少年にしばらく一緒にいてほしいと頼んだ。彼との穏やかな時間に癒されながらも、最後まで自身の理不尽な人生に怒りを捨てきれなかったサラディナーサ。
気がつくと赤児として生まれ変わっていた。彼女は、前世での悔恨を払拭しようと、勉学に励み、女性の地位向上に励む。
そして、とある会場で出会った一人の男性。彼は、前世で私の最後の時に付き添ってくれたあの天使かもしれない。そうだとすれば、私は彼にどうやって恩を返せばいいのかしら……。
彼は、予想外に変容していた。
※ 重く悲しい描写や残酷な表現が出てくるかもしれません。辛い気持ちの描写等が苦手な方にはおすすめできませんのでご注意ください。女性にとって不快な場面もあります。
小説家になろう さん、カクヨム さん等他サイトにも重複投稿しております。
この作品にはもしかしたら一部、15歳未満の方に不適切な描写が含まれる、かもしれません。
表紙画のみAIで生成したものを使っています。
子持ちの私は、夫に駆け落ちされました
月山 歩
恋愛
産まれたばかりの赤子を抱いた私は、砦に働きに行ったきり、帰って来ない夫を心配して、鍛錬場を訪れた。すると、夫の上司は夫が仕事中に駆け落ちしていなくなったことを教えてくれた。食べる物がなく、フラフラだった私は、その場で意識を失った。赤子を抱いた私を気の毒に思った公爵家でお世話になることに。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる