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蛟の隠れ家編
リンファオ輪姦の危機
しおりを挟む三人目の蛟の首をへし折った後、リンファオは床に倒れ伏した。
周囲がざわついている。
四人目が格子扉を開けて入ってこようとする気配に、再びよろけながらも立ち上がる。
「次に死にたいのは貴様か」
やっと搾り出した声は、弱々しくかすれている。
それでも、渾身の力をこめて相手を睨みつける眼力は通じたらしい。
蛟の男は躊躇した。
「どれだけ食い物を食ってないんだ? こいつ化物か」
笑いながら、ケンが進み出る。
「そう、化け物なんだ。まだ駄目らしいな。力が尽きていない。雑魚では勝てまい」
「雑魚だと!?」
牢を取り囲んでいた蛟の若者たちが、気色ばむ。
東の大陸特有の細身な彼らにとって、ケンは劣等感を抱かせる存在だった。
北方の民は、自分たちより一回りは体躯が大きい。
一人が、青い目のケンに噛み付いた。
「貴様のような混血に、仕切られたくはないわっ」
純血でもないくせに、リーダー気取りなのが気に入らないのだ。
ケンは、そう言った仲間の顔を冷めた目で見つめた。
「その混血が欲しくてこの娘を攫ったのだろう。蛟の混血を蔑むのは、貴様ら一族のやり方を否定するのと同じことだ。だいたいお前らに、この娘が連れてこれたか?」
ぐっと黙り込む仲間たちを見回す。
「俺がこの土蜘蛛の娘を牽制している間に、仲間の遺体を運び出せ。この娘の力が完全に尽きて、動けなくなるのを待つんだ。今まで待ったんだ。もう少し待てるだろう」
ケンは、リンファオと三体の遺体の間に立ちふさがり、仲間が作業しやすいようにした。
遺体を担いだ若者たちがいなくなり、二人きりになっても、ケンは牢の中にとどまった。
ケンがリンファオに一歩近づく。リンファオはびくっと後ろに下がった。
「いいぞ、その調子であの雑魚どもから自分を守れ」
このケンという男は、僅かだが、リンファオにこっそり食事を運んできていた。
多少食べたところで、リンファオが気功を使えないと知っているからだ。
避妊薬の効き目が切れれば、他の男たちに好きなようにされる。それは我慢ならん。そう言って、ある程度の力を、リンファオに残してくれていたのだ。
最初から、この男に勝てなかった。妙な術で気功を封じられたが、それでもリンファオは充分に戦える。だけど、この男はつよい。気功術が使えて、万全の状態でなければ難しい。間違いなく、蛟では最高の手練なのだろう。
悔しいが、ここに来てからずっとこの男に抑えつけられて、犯されている。
「もうアターソンの薬は切れているはずだ。だからあいつらも、お前の体力が無くなるのを待ちきれないのさ」
逃げようとするリンファオを捕まえて、引き寄せる。
手刀がケンの首筋に飛んできたが、危ういところで防いだ。
「ったく。いいかげん慣れろよ」
リンファオを引き倒し、手早く着物を剥ぎ取った。
普通ならガリガリの骨と皮になっているだろうが、さすが伝説の化け物だけある。
連れてこられたときよりは痩せている、といった程度だ。
ここに来てからろくな入浴が出来ていないが、それでも嫌な臭いがしないのは、排泄を含め老廃物的なものが出ないからだ。
その全てを、生命維持の気力と体力に変えてしまう。
睡眠もあまり取らないですむようだが、今はなるべく体力を温存させようとしているのか、基本的に目を瞑って眠っている。
内臓の配置も人間と同じなのか気になるところだ、ケンは相手のきれいな顔を見ながらそう思った。
リンファオは、屈辱に顔をゆがめる。
沐浴用の熱い湯を持ってくるたびに、隙を見てガブガブ飲みこみ、それすら力に変えようとしたリンファオだ。
もっと何か口に入れて、この男を殺さなければ。
リンファオは、口を開いて相手の喉笛に噛み付こうとした。こうなれば人間の血肉で何とかするしかない、と考えたのだ。
「あっぶね」
ケンはリンファオの顎関節を掴み、口を閉ざさないようにして難を逃れた。未だに猛獣並みの抵抗に合う。
「もう少し女らしく出来ないのか? わんぱく小僧かおまえ」
そういうと、顎を固定したまま相手の口腔をなぶった。
ぬるりとした感触にリンファオの身体が一瞬強張り、やがて脱力した。がんばりすぎて、疲れたのだ。
ケンほどの男とやり合うには、三日に一度の芋一本じゃ足りない。せめて、肉か魚――生き物を食べないと……。
「そう、俺の時は大人しくしてな」
悄然とするリンファオから唇を離し、ケンはそう言って微笑んだ。
「俺を食ったって美味くはないぜ?」
大きくて無骨な手が、やさしく胸を揉んでくる。
「っ……や……」
リンファオは弱々しく顔をそらした。
最初に抵抗するから、けっきょくいつも途中で力が出なくなる。疲労で、されるがままになってしまう。
ケンの眼差しは、優しい。それがやけに頭にくる。だって、やってることは強姦じゃないか。
「どうして? やるならさっさとやればいい。なんでいつもそんな優しく……あ、愛撫するんだ。そんな必要ないだろう。孕ませるのが目的なら――っ」
ケンは少女の乳首を摘まんで、にんまり笑った。この娘は、さっさと突っ込んで出せ、と言いたいのか?
「この方が楽しいだろう? たっぷり濡れたほうが入れやすい」
みるみる赤くなるリンファオに、ケンは興奮し、呻いた。
何度抱いても、諦めないリンファオが気に入っていた。諦めないからこそ、いつまでも屈辱に打ち震える。
抵抗するぶん体力を使わされるが、戦いみたいで好きだ。そんな彼女の態度が、自分をこれほどまで駆り立てると気づいていない。
リンファオは顔を背けたまま、目を閉じた。
しかし、摘ままれたせいで固くなった乳首ごと、形のいい白い乳房を舐め上げると、ふっと息を漏らす。
これだけ何度も抱けば、無垢な少女でも女の体になってくる。
丁寧に白いふわふわを両手でこねくり回し、いきり立つように尖っている可愛らしい乳首を、しつこく舌で転がした。
「んっ……んっ」
堪えている声。なるべく反応しないように頑張っているのだろうが、それがよけい可愛い。
分かってないんだろうな、とケンはにんまり笑う。遠慮なくピンピンに尖った乳首を口で吸い上げ、わざと音を立ててみる。
腰が突っ張るところを見ると、ものすごく感じているのだろう。
なぜなら土蜘蛛は、五感に優れているから。
カリッと乳首を軽く噛むと、ビクビクと腰が動いた。その隙に内ももに手を伸ばす。
「感度がいいなぁ、べちょべちょだ」
リンファオはハッと息を呑む。いやいやするように首を振った。
「黙ってよ、さっさとやって――はぅっ」
いきなり指を入れられた。
「楽しもうぜ。とろとろなんだからさ、気持ちいいんだろ?」
「やっ……違う」
目を開いて、羞恥に震えながらこちらを睨みつけてくる。
(それそれ、その顔が一番そそる)
彼女の目を見ながら、ケンは蜜で潤った中をクリンとかき回した。
「ひうっ」
睨みつけていたはずのリンファオの瞳が、せつなそうにとろける。
「ほら、気持ちいいんだ。俺の指を引きちぎりそうに締め付けてるぞ……こっちはどうだ?」
親指で愛液だらけの肉の芽を転がしてみた。
「あっぁああああっ」
思わず大きな声が出て、リンファオはさらに真っ赤になった。白い肌が火照る様は艶やかだ。
「それで……いい」
ケンは額に汗を浮かべ、少女を見下ろす。ガキのくせに、なんてぇ色気だ。
我慢できない。
襞を広げ、自分のものをあてがった。毎回そうだ。余裕がなくなる。
「入れる……ぞ?」
少女が返事をする前に、ずぷっと亀頭がうまる。
まとわりつく肉の壁に、今度はケンが声をあげそうになる。
毎回思うが、リンファオの中身は、おかしい。
熱く蕩ける蜜の壺は火傷するほどで、咀嚼するようにケンのモノを飲み込む。根本まで吸い込まれ、搾り上げられる。
(人じゃない)
土蜘蛛の女とは、こういうものなのか。
ケンはたまらず、腰を打ち付けた。この少女相手だと、あっという間にイってしまう。
いつもなら相手の女が満足するまで続けられるのに、この少女だとだめだ。男として恥ずかしいくらい――。
肉を打ち付ける音が、牢の中に響く。
少女の息遣いが、ますます動きを速めた。愛液が、お互いの結合部を濡らし、飛び散る。
(たまらない。もう、この娘以外抱けないかもしれない)
気持ちよさのあまり、ケンは気絶しそうになった。
ここでそんなことになったら、次に目覚めるのはあの世だ。この娘は自分を殺すだろうから。
繋がったまま、リンファオの小ぶりな丸い尻を抱え上げ半身を起こさせた。そのぷりんとした若い乳房に、顔をうずめる。
掛け値なしの天国。殺されるならそれもいい。
ケンはさらに腰を動かした。座位で奪うと、少女の深いところをえぐり、最奥を突いているのがわかる。
リンファオは成すがままだった。ただ耐えるしかないのだろう。
彼女はケンにしがみつき、唇を噛み、必死でこらえている。それが分かる。
「声を出せ、気持ちいいのを我慢するな」
「やっ……んっんっんっちがっ――あっ」
ふわっとリンファオの頭がのけぞる。達したのだ。
ケンはほっとして己を解き放った。毎回先にイクのは勘弁だ。ダセェ。
しばらく、二人は抱き合ったまま、荒く息をついていた。
「もう、目を開ける力も残ってないのか?」
硬く閉じたままの瞼。気絶したのだろうか。
ケンが心配になって顔を覗き込んだ時、閉じた瞼の端から、透明の雫が零れ落ちた。
少女の絶望したようなむせび泣きに、ケンはドキッとした。
「このままでは妊娠してしまう……もうしているかもしれない」
囁くように言うリンファオ。当然、こちらとしてはそのつもりなのだ。
アターソンの薬は切れた頃だ。しばらくはケン一人しか彼女を抱けないだろうが、体力が尽きたら――。
「……いけすかないやつらだが、同族になってしまえばそれほど気にならない」
ケンは咳払いする。
「しかしだな、抵抗を止めて俺の妻になるなら、他のやつらには手出しさせな――」
「あいつが殺しに来る」
リンファオは震えながら言った。
「え?」
「もし子供が出来たら、私も子供も」
こうなってしまったら、もはやそれが一番怖かった。
ケンはただ事ではないほどの怯えように、目を見張った。
「なるほど。掟とやらか。それを破れば、仲間から嬲り殺しに遭うというわけか」
「気功が使えなければ、あいつには勝てない」
「俺が守る」
リンファオは驚いて、スミレ色の目を開けた。
ケンの無骨な手が、少女の額に張り付いた美しい筋のある黒髪をどける。
この男の自分に対する扱いはなぜか丁寧で、接し方がまるで恋人だ。それがリンファオを戸惑わせる。
「無理だよ。今のところ、あいつに勝てるやつはいない。頼む。もし私が妊娠したら、この変な術をといてくれ。自分の身は自分で守る」
ケンは首をかしげた。
「仮にそうなったとして、もしおまえに力を与えてしまったら逃げるだろう。そして、望まぬ子ならば堕ろす。アターソンの護衛なら、そういう薬も簡単に手に入りやすいことだしな」
リンファオは、大きな目で懇願した。
「逃げないと約束する。いや、逃げるかもしれないけど、子供は堕ろさない。絶対に」
おいおい、逃げるかもしれないなんて言っちゃダメだろう。ケンは思わず吹き出していた。
正直なところはまだガキだ。
「術を解くことは、俺にはもう出来ないよ。リラックスした心の隙を突かないと、このクラーシュの目の幻影は通じない。捕まっているおまえに幻影術は効かない。そして全てを委ねるほど愛した相手でないと、俺の封印はとけない」
言ってからなぜか、胸の奥がチクチクした。土蜘蛛の少年とまぐわっていた光景を思い出す。
「残念だったな。あの少年なら……土蜘蛛の気功なら、内部から術を解くことが出来たかもしれないのに。今やおまえは、俺の腕の中だ」
そしておもむろに少女の柔らかい襞を押し広げ、いつの間にか復活していた怒張を再び挿入した。
リンファオの体が強ばる。悔しげに見上げる紫の瞳を見つめ、ケンは思わずその瞼に口づけしていた。
生まれつき身体能力に恵まれ、何でもこなしてきた彼は、何かにはまったことがない。北方の冷たい顔立ちは、蛟の女たちの間でも好評で、女に不自由したことはなかった。
だから、一人に溺れるという経験は初めてだった。ましてや、嫉妬するなんて。
「大丈夫だ。俺が、俺の一族からも、おまえの一族からも守ってやる」
胸にかき抱いた少女は頼りなく、ケンは自分が口にした言葉はけして嘘ではないと確信した。
この娘を守りたい、今はっきりとそう感じている。柄では無いと分かっていても、自分のやりたいことを抑えるつもりはない。
ゆっくりと動きながら、その引き締まった内部に陶酔する。
そこに力はある。羨ましいほどの気力が眠っている。
最初から分かっていたはずだ。この娘は、蛟の肉人形になる器ではない。母とは違う。
心は決まっていた。自分でも、驚くほどあっさりと。
――この土蜘蛛を、ここから逃がすしかない。
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