孤独な美少女剣士は暴君の刺客となる~私を孕ませようなんて百年早いわ!~

世界のボボ誤字王

文字の大きさ
上 下
41 / 98
研究特区編

北方組の下ネタ

しおりを挟む


 各地から任務を終えて戻ってきた剣士が里に増えたとき、シショウはやっとほぼ毎日のお勤めから解放された。

 ──干からびるところだった。


「正直、生き地獄だった」

 シショウは、同じ儀式の時に神剣遣いになった顔なじみと、久々に話した。

 自分の村で醸造した角マムシの焼酎を持ってきたシショウに、ブライは北国の特産であるウォッカを手土産としてくれた。

 醸造酒のアルコール分は、気力として放出してしまい、土蜘蛛は酔えない。しかし蒸留酒はなぜか体に留まり、酩酊することができる。

 なので、もっぱら祭りでは焼酎が振舞われる。

 料理と同じく、その土地の酒が楽しめるのが、遠征時の魅力である。


 酒が入ると、シショウの愚痴はとまらなくなった。

「子供がなかなか出来ないのは、俺の種のせいかもしれないのに。何で毎日群がられなけりゃいけないんだっ」

 ブライはその大きく開いた口に、ショットグラスから飛ばしたウォッカを投げ込む。

 アルコール度数九十六パーセントの、現地人ですらそのまま飲まないというやつを放り込まれ、さすがにゲホゲホ咳こむシショウ。

 喉が焼けそうだ。

 その背中を叩いてやったのはイシンである。本人は平然と瓶ごとやっている。

「うらやましいことで。こちとらずっと北の女三昧だったって言うのに」

 その土地の女も楽しみたいが、残念ながら土蜘蛛の美的感覚からすると、里の女とは比べようがない。

「まあまあ。そこまで悪くは無かったじゃないか」

 ブライが笑いながらフォローするが、イシンは首をふった。

「色は白かったがな。だけど身体はいかついし、その上固い」

 さらに言うと、年配女性の劣化の激しさは引くほどだ。イシンは落ち着いたしとやかさのある年上女性が好きなのだが、北方の熟女は白熊のようだった。

「南の仕事が入ったら、褐色の肌も拝める。長老たちは、何で南の仕事を取ってこない?」

 イシンは不満そうだ。ブライは柳眉を潜めた。

「頭がチリチリだって聞いたぜ? アソコの毛に火をつけたら喜ぶって本当か?」

 シショウは脱力してため息をついた。

 彼らは年上だからか、顔に似合わず下品な話も平気でする。

 だが正直今は、各国の女の話なんてどうでもいい。

 リンファオ以外、もう女はうんざり。

 山猫が迷い混んできても、雌なら石を投げて追い払いたい気分だ。

「北の連中が戻ってきたなら、俺はお役御免だな。明日の船でシェルツェブルクに戻るよ」

 ほっとしたように言うと、イシンとブライは顔を見合わせた。

「え、だって長老が言ってたぜ」
「シショウの種は貴重だから、巫女が一人孕むまで続けてもらうって」

 天がひっくり返ったようなショックだった。

 シショウは頭を抱えた。

 もし不能だったら、どうする? 自分だって同族交配の産物だ。種が死んでる可能性が大いにある。

 それが分かるまで、里の外へ出られないってことじゃないか。

(くそっ、リンファオ)

 あのもやし小僧の、リンファオを見る目が気に入らない。

 もしあの研究者が、リンファオを見初めたらどうする? 警護対象の特権を利用して、護られてやる代わりにパイオツを見せろとか迫ったら?

 それに、ロウコだって。リンファオを見張るうちに、惚れてしまったらどうする?

 二人とも、どうみても変態だ。しかもロウコはロリコンな気がする。

 さらに他の護衛や、大学から研修に来る若者たちも居る。

 誰かが、面の中をうっかり見てしまったら?

 一番怖いのは──。

(俺のこと忘れられていたら、どうしよう)

 離れていて不安なのは、シショウも同じだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

元彼にハメ婚させられちゃいました

鳴宮鶉子
恋愛
元彼にハメ婚させられちゃいました

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

子持ちの私は、夫に駆け落ちされました

月山 歩
恋愛
産まれたばかりの赤子を抱いた私は、砦に働きに行ったきり、帰って来ない夫を心配して、鍛錬場を訪れた。すると、夫の上司は夫が仕事中に駆け落ちしていなくなったことを教えてくれた。食べる物がなく、フラフラだった私は、その場で意識を失った。赤子を抱いた私を気の毒に思った公爵家でお世話になることに。

黒の神官と夜のお世話役

苺野 あん
恋愛
辺境の神殿で雑用係として慎ましく暮らしていたアンジェリアは、王都からやって来る上級神官の夜のお世話役に任命されてしまう。それも黒の神官という異名を持ち、様々な悪い噂に包まれた恐ろしい相手だ。ところが実際に現れたのは、アンジェリアの想像とは違っていて……。※完結しました

処理中です...