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第六章

リュディガー現る

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 気づくと、茶色い壁の室内にいた。分厚い日干し煉瓦の建物の中だ。

 日光や外気から遮られた室内は、匂いに酔っていた私にとって、涼しくて心地いい空間だった。

 一つ問題があるとしたら、見知らぬ男の腕の中にいるということ。しかも魔族。たぶん、重要キャラ。だって吉田エリザベスが好きそうなイケメンだもん。アッサールよりガッチリはしているけれど、ムキムキというほどでもない。甘くも辛くもない程よい顔立ちの……。

 これはたぶん──いや、たぶんじゃないな。もう絶対主要キャラ。間違いなくリュディガー。

 ただ、なんていうか、張り付いたような笑顔がものすごくわざとらしくて怖いんだけど? やり手のセールスマンみたい。

「あの、わたし、怪しいものではないのよ。……リュディガー……なのよね?」
「やだなぁ、ボク自分の名前なんて言ってませんよね? なんでそう思うんですか?」

 朗らかに聞かれて困り果てる。なんでと言われても、なんとなく、としか……。

「アッサールの仲間ですか?」
「やっぱり! アッサールも来てるのね? 何? 二人でもう話し合った?」

 リュディガーらしき男はにっこり笑い、それから──突然私の首を絞めた!

 いきなりサイコパァァス!

「ちょ、ギブッ、ギブッ!」

 思い切り蹴りを入れる。相手の股間に。金玉には当たらなかったようだが、男は思わぬ反撃に手を放した。

「なにするの……よ」
「男の股間を狙うなんて、だいぶお下品なお嬢さんですね」

 いきなり首絞める方があかんて。

「アッサールの配下なら、大魔王陣ということです。ボクの仲間になるのと、殺されるのどっちがいい?」
「まずそれ聞いてから首絞めてよ!」

 男は笑顔を崩さず、肩をすくめる。

「だって、弱そうだから。あまり戦力にならない魔族は要らないんですよね。ボクは配下を選ぶ魔王になります。少数精鋭」

 私は急にアッサールが心配になった。

「アッサールはどこ?」

 男は、まるでチャックでも開けるかのように、右手一本で空間を割いた。

 こういう能力を、魔力を抑えたまま発揮できるってすごいな。私にはそういう細やかな技がつかえないのに。っていうか……魔力を封じた状態だと何もできないぞ?

「覗いてみてください」

 私はおそるおそる中に首を入れた。

「アッサール!」

 血だらけで倒れているアッサールが目に入り、私は悲鳴をあげていた。コウモリの羽が一枚しかない。その脇に根元から引きちぎられた羽が落ちていた。

 私はその亜空間に入ろうとして、首根っこを掴まれ引きずり戻された。痛いいたたた!

「彼は説得に応じるまで、お仕置き部屋から出られません」
「何よ、説得って」

 こいつやっぱサイコパスじゃん、聖王と違う意味でなんかやばい!

「新しく生まれた魔王ではなく、このリュディガーに仕えてほしいという提案ですよ」

 提案じゃなくて脅しでしょうが。

「出して治してあげてよ!」
「冗談でしょう? やっと閉じ込めたんですよ?」

 トーブの前ボタンを外していき、素肌を見せるリュディガー。八ブロックに割れた腹筋に、大きな傷がついていた。

「ボクもずっと寝込んでいたんです。アッサールにやられたこの傷を治すためにね。深くてなかなか消えなくて参りました。勝てたのは奇跡ですよ」

 ほうっと息をつくリュディガー。確かに、疲労の色が濃い。アッサール、このサイコパス相手にがんばったのね。

「アッサールから攻撃してきたわけじゃないでしょ? 彼は戦いに来たわけじゃないもの、出してあげてよ!」
「だってボクが魔王になろうとしているのに、魔王の配下に戻れだなんてバカなことを言うんですもん」

 笑顔で吐き捨てると、私をじろりと眺める。ギクッ。

 わ、私は魔王ではないですよ、貴方の縄張りを荒らしに来たわけじゃないですよ?

 彼は私の挙動不審な態度には気づかずぼやく。

「おまけに妙な気配がたくさん入り込んできたせいで、おちおち休んでもいられない。疲れてヘロヘロだし……ふむ、貴女いいですね」

 にこっと笑い、笑顔で腕を上げる。長い人差し指をスッと一直線、私に向かって降ろした。

 ぱさっと布が裂ける。砂避け外気避け用に被っていたローブと、衣服が床に落ちた。

 全裸じゃないけど、ヘビ夫妻プロデュースのやたらエロい下着だけにされ、私は悲鳴をあげて体を隠す。聖王と同じ展開キター!

 その時何かが手首に絡まり、腕を引っ張り上げる。万力で天井側に持ち上げられ、宙吊りにされてしまう。

 ヘビ? 見上げると、ニュルニュルした何かは、リュディガーの背の後ろから出ていた。

 気づかなかったのは、それが床を這い、壁を上って天井から私に襲い掛かったからだ。

 他の何本かは、私の身体にまといつき、締め上げた。

「おお、腿丈の網タイツですか。ガーターベルトで留めやがって、このビッチめ。パンティは総レースでスッケスケ。まったく、まるきり娼婦じゃないですか。うん、しめつけられてせり出したオッパイが可愛いな。黒いブラも、乳首のところ穴開いてるデザインなんですね。先端が飛び出てるじゃないですか」

 別の一本の触手が、私の乳首をチロチロいたぶる。ヘビ夫妻、なんでこんな下着しか作ってくれなかったのよ! 完全にやる気満々女じゃん。

「いやっ、はうっうっ、乳首いじくらないで! 触手プレイなんて嫌よ!」
「そんな下着では説得力ゼロですよ」

 DAーYOーNE!? 私もそう思う!

「もがくだけ無駄。香りの小道を歩いたんですから、魔力は使えません。気づきにくいでしょうが、あれは一応結界なんですよね」

 ピンと乳首を弾かれてビクンとなる。そのせいで揺れた私の乳房を愛でるように、リュディガーは目を細めた。

「まあ、あなたには、魔力なんてぜんぜんないようですけどね。本当にアッサールの部下ですか?」

 リュディガーは笑顔のまま、嘗め回すように私の頭のてっぺんからつま先まで眺め考え込む。

「変だな。魔力は美しさとなり表面に現れると言いますからね。あなた、本当はもっと強いのでしょうか?」
「そうよ、強いわよっ。あなたなんて、ケチョンケチョンにしてや──ふぐっ」

 触手が一本、私の口に入りこむ。大きくにんまり笑うリュディガー。

「だったら、私の疲労回復薬になりそうだ」

 触手は、さらに深く口内に侵入し、蠢く。

「舐めて、しゃぶってください」
「んっっん……んん」

 さんざん抜き差しされ、息が続かず、思い切り吸い上げていた。何か苦いものが出てくる。

「おっと、すみません。我慢汁出ちゃいました。ボクめちゃくちゃ早漏なんですよね」

 ニヤニヤするリュディガー。まって、触手一本一本がチ◯コなん!?

 リュディガーの手が伸ばされる。むんずと両方の乳を掴まれた。

「大きさ、柔らかさ、感度、全て完璧です。これからはアッサールと共に私の部下になりなさい。君はもしかすると、内包する魔力が高いのかもしれない。精を高めるために、その身体をボクに毎日差し出すといいですよ」

 乳房をさわるかさわらないかのフェザータッチで撫で回され、敏感な乳首が飛び出すのがやけにはっきり分かった。私は顔をそむけて屈辱に堪える。

「はは、苛めすぎたかな、乳首が赤くなってる。こんなに尖らせちゃって、可愛いっ」

 たまらず、震えたため息を出してしまう私。

「だ、だめ……これ以上やめ……」

 逃れようともがく。でも、パイオツが揺れただけだった。

「誘っているようにしか見えませんね、あ、やばいな。だいぶストライクだ」

 彼の瞳に熱がこもり、カプッと耳たぶを噛まれた。

「んっ」

 耳の穴に入り込んでくる舌の感触。あれ……?

 私は必死に快感をこらえた。なんかいやな予感。

「おっと、気づきましたか? ボクの触手から出る液は、媚薬入りなんです」
「やっぱ、こんな展開──」

 聖王と同じじゃん! 吉田さん、ワンパターン! 悔しくて涙がにじむ。もしや、男性向け投稿サイトに変えるつもりか、吉田エリザベスよ。

 それでも相手をキッと睨みつけた。だって、本当なら配下だったはずなのよ? 腐っても魔王。やられっぱなしなわけにはいかない。

「ハハッ、いいなぁ、君。ゾクゾクする」

 ついにリュディガーから笑顔が消えた。真顔になり、まじまじと私を見つめる。

「いやほんとに、拾い物だったかもしれません」

 今度は唇に食いつかれた。厚ぼったい舌が侵入し、口内を貪られる。私の舌を持っていきそうなほど吸い付き、唾液まみれにされた。

「やっぱり触手を使うより、自分で味わい、いたぶる方が気持ちいいな」

 リュディガーの手が背後に回り、お尻を掴みあげる。

「丸いお尻も、プリンとしていて可愛い」

 リュディガーは、さんざんお尻を撫でまわした後、私の網タイツに包まれた片足を持ち上げた。レースのパンティの隙間から指を入れてくる。肉の襞を掻き分けられ、私は身をよじった。

「さて、蜜がたっぷりのここをね」

 くちゅ──と指を差し込まれた。

「ふっ……」

 卑猥な音を立てられ、屈辱で涙が浮かぶ。でも、悔しいから声が出ないように唇を噛んでいた。

「こうして可愛がる」

 クリンッと、膣の中で指を回転され、私はすぐに屈服し嬌声をあげてしまった。

「あはは、敏感だな。誰かに可愛がられたばかりですか?」

 聖王の媚薬の影響だろうか。自分でも下半身が愛液でびちゃびちゃなのが分かる。

「で、君。アッサールのなんなの? 恋人なんですか?」

 ご主人様よ、と答えるべきか。なにか違う意味になりそう。

「あああっ触らないで」

 中に指を入れられ、感じる場所をしつこく擦られる。さらには、親指で転がされていた肉の突起を弾かれた。我ながら淫らな声が上がり、それを聞いたリュディガーの金色の瞳が欲望にだろうか、ギラッと光る。

「俄然興味が出ました。触手とボクの、どっちで貫かれたい?」

 どっちも、イヤ!

「往生際悪いですね、そういう女王気質は嫌いじゃないです」

 拘束された腕が前に引っ張られる。前のめりに倒れて這いつくばったところを固定され、冷や汗が流れた。こ、これは──後背位!

「女王きどりのお高く止まった女性を、犬みたいに背後から犯すの好きなんですよ、僕」

 四つん這いの私の腰を掴み、持ち上げるリュディガー。熱いものがお尻の割れ目にヌルッとあてがわれる。

「挿しまーす」
「やっ──」

 その時だ。

 空気が悲鳴のように裂ける音がして、空間が破かれた。リュディガーが私を放し、飛びずさって身構える。

「貴様、何をしている」

 残った片方の羽を引きちぎり、リュディガーの亜空間を破って出てきたアッサールは、私を見て顔色を変えた。

「君の彼女? すごくいいですね。ボクにくださいよ」

 リュディガーは笑う。

「そうしたら、魔王の配下になってやってもいいですよ」

  止めるまでもなく、アッサールが全魔力を開放した。

 
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