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禁断の恋

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 手首を縛って押し倒した男を見下ろしながら、仮面の女は震える吐息をつく。

 もうやるしかない。彼がいるこの世界で、もう少しだけ生きていたい。


※ ※ ※ ※


「神父様、私は許されない恋をしました」

 告解室の小窓が開くと、絵麻はそこに居るはずの司祭に向かってそう言った。

 信者でもない絵麻の告白を聞いてくれるその相手こそ、絵麻が恋をした人物である。

「その人は、好きになってはいけない人です。でも彼以外、考えられない」

 黙って聞いてくれているのが分かる。かすかな息遣いがするから。

「好きで、好きで、こう……なんていうか、ムラムラして。このままでは、私、彼を襲ってしまいそうです」

 司祭は小さなため息をついた。絵麻はビクッとなった。やばいこれ、呆れてる?

 しばらくの沈黙の後、低く、耳に心地よい声が応えた。

「私は、父と子と聖霊の御名によって、貴女の罪をゆるします」

 え? 許しちゃうの?

「神に立ち返り罪をゆるされた人は幸せです。安心して……お帰りください」

 なんか……適当にあしらわれてないか。

 絵麻はコクッと唾を飲み込んだ。小窓はもう閉じてしまっていた。取り敢えずアーメンと言いながら告解室を出た。

 この後のミサの準備で忙しいのだろうか……。ちゃんと聞いてくれただろうか。

 絵麻はもう片方の部屋の、ゆるしの秘跡を行っているであろう告解室を振り返り、しょんぼりして教会を出た。
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