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第四章

マリエール、強姦の危機

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 朝のパトロールから戻ったマリエールは、またまた泡ぶろを楽しんでいた。彼女は本当にお風呂が大好きなのだ。

 やはり、家に男がいないのは気を遣わなくていい。好きな時間に入れるし、家の中をプロテクター無しで、シャツ一枚でウロウロできる。

 解放感。
 
 かしゃかしゃとラベンダーの香りがするシャンプーと石鹸で髪の毛を洗い、ふんだんな温泉の水で洗い流す。

 やっとすっきりした。

 荒野に住むなら、アターソン社のシャワー装置は欠かせないのだ。すぐ埃まみれになるから。

 そのうち東部から、陶器製のバスタブも取り寄せようと考えていた。

(マーシャルにはどこか別の家を探してもらおう)

 別に見張られてるわけじゃないんだから、助手が他の場所に住んだって連邦政府にも州にもばれやしない。

 通いにすれば、おたがいムラムラ──じゃないイライラすることもないだろう。

 だいたいなんで、住む場所まで指示されなければならないのか。

 大きな木の盥から立ち上がりスポンジを放り投げると、ウォールフックからバスタオルをひっぱる。

 頭から被り髪の毛を拭いていると、パンッという音と扉を蹴破られる音がした。

 マリエールは舌打ちし、壁に掛けてあったホルスターに手を伸ばす。

「やめとけ」

 ゾクッとするような、冷酷な声が響いた。

 マリエールはそっと手を引いた。バスタオルを頭から下にずらして体を隠す。

 視界が良くなると、バスルームの戸口に立っている白い帽子に白いブーツの大柄な男が見えた。赤いスカーフで顔下半分を隠しているため、まるで銀行強盗のように見える。

「何かご用?」

 マリエールは動じていないふりをして目を細め、レクサス・レンジャーの恰好をした男を眺めた。背後に同じ格好の男たちを連れている。

「あの時の礼をしにきた」

 スカーフを外す。割れた顎が現れる。

「ああ、あの時の牛泥棒」

 保安官は軽蔑しきった声で告げた。

「ネイサンだ。お前のお仲間を一人、締め上げた」

 それからネイサンと名乗った男は、嘗め回すようにマリエールの頭のてっぺんから下まで見る。

「女だったんだな」

 他の男たちがニヤニヤと笑いながら入ってくる。

「へい、ボス。順番だぜ、独り占めは無しだ。なんなら、国境の向こうに連れて行ってもいいんじゃないか」
「黙れ」

 ネイサンと名乗ったケツ顎が、冷酷な視線で仲間をねめつける。

「国境?」

 マリエールがバスタオルで体を拭きながら、何食わぬ顔で盥から出る。

「動くな、と言ったぞ」
「楽しみたいんでしょう?」

 マリエールはとろけるような笑みでリーダーを見上げる。

「優しくしてくれるなら、大人しくするわ。貴方いい男だし。でも──」

 盥の脇のモカシンブーツに目をやる。

「全裸にブーツって、ちょっと興奮しない?」

 ケツ顎が唇を舐めた。

「いいぜ、履けよ。その代わり、たっぷりサービスしてくれんだろううな?」

 不遜な態度で銃を下ろす。

 マリエールは真っ白い足を片方ずつ入れると、立ち上がって膝上まで上げた。体を折り曲げたことによりバスタオルがはらりと落ち、豊かな乳房がたゆんっと揺れ下がる。濡れた長い髪がそれを隠した。

 ネイサンは生唾を飲み込んだ。インディゴ染めのジーンズの前が膨らんでいるのを意識する。まさか撃ち合いをしたあの度胸のある保安官が、こんな色気のある女だったとは。

 マリエールはブーツを上げるふりをして、中に隠していた手の平サイズの小さな銃をそっと手に取った。

「私、ケツアゴは嫌いじゃないのよ」

 片手ですくい上げるように乳房を隠しながら、右手でブーツを最後まで上げきる。男たちの欲望したたる視線の中、代表してネイサンが一歩近づいた。

 男が前に立った次の瞬間、マリエールは目にも止まらぬ速さで銃を抜き放つ。ネイサンに向けたのはアターソン社製のマフピストルだ。

 だがタッチの差で腕を跳ね上げられ、天井に穴が開いた。ギシッときしむほど手首を握られ、マリエールは銃を落としてしまう。

 その額に銃口が押し当てられた。

 マリエールは、感嘆の息をついた。この男、ただ顎が割れているだけではない。速い。

「ヘンリーコンシールドガン二連式か。おまえやるな」

 ネイサンも同じく瞳に賞賛の色を浮かべながらそう呟いた。

 おい、と背後の部下に命じる。部下が急いで、銃を向けられたまま動けないマリエールの両手を縛る。

「お前さん相手に油断するつもりはねぇよ」

 男は白いステットソンを脱ぎ、マリエールにかぶせる。壁掛けフックに縛った両腕のロープをひっかけて立たされる女は、無力だった。

 美しい裸身をおしげもなく晒しながらも、こちらを射殺しそうな目でねめつけてくる。

「プライドの高い女は嫌いじゃない」

 ネイサンはニヤッと笑い、女に近づいた。髪の毛を掴んで上向かせ、唇を乱暴に奪う。

 噛みつこうにも、顎を固定されて動かせない。

「……っ」

 息が、できない。だらだらと口の端から唾液が落ちていく。首を振ってなんとか逃れた。

「ああ、美味かった」

 咳き込んで涙目の女を見て、わざとそう言う。

 こういう時、恥じ入っては相手を悦に入らせるだけだ。だからぐっと顔をあげて我慢した。

 しかし、突然乳房を掴み上げられ、ひっと息を呑んでしまう。

「いい乳だ。火事で死ななくて良かったぜ」
「──っ!」

 マリエールが目線で殺せそうなほど睨みつけた。

「貴様が、アーヴァインを」
「保安官なんて要らない、そうだろ? この州の奴らは色々吹き込んだら予想通りに踊ってくれる。先住民も、白人もな」

 太い指で、乳輪をゆっくりと撫でまわす。まだ湿った肌が粟立ち、乳首が立ち上がる。

 ネイサンはそれを見て興奮したのか、舌で舐め上げ、わざと音をたてて吸った。周囲でひゅーっと声が上がった。

 マリエールの体は、まだサボテンの影響が残っていた。目を閉じ、唇を噛んで刺激から逃れようとするも、下腹部の疼きが止められなかった。

 元来、感じやすい性質なのだ。

 フランソルが居たら「あー、それ母方の血筋ですよ」と言っていたかもしれないが、五感に優れた父方の血筋かもしれなかった。

「この匂いは?」

 ネイサンがごくっと唾を飲み込む。それから、まだサボテンの痕の残る白い太腿に目をやり、無理やり片足を持ち上げた。

「やっ──」
「濡れてる」

 ネイサンはしゃがみこんだ。内ももに向かって、れろりと白い肌を舐め上げる。

「んっ」

 思わず声が出て、また周囲から歓声があがった。

「ボス、そいつをよがらせてやれよ」
「ブーツ履いて、ステットソンを被った女が犯されるところ見たかったんだ」

 ネイサンは笑う。

「まあ、待てよ」

 ネイサンの舌が、襞をかき分けてマリエールの蜜の穴に差し込まれた。

「ふぅ……ぅ」

 マリエールが屈辱と快楽の涙をこぼす。くりんと、長い舌が柔らかい粘膜をかき回す。

「あっ──だ……めっ」
「ゆっくり楽しもうぜ」

 男の前歯が肉の突起にあたる。カリッと甘く噛まれた。腰が大きく動く。

「ひやんっ」

 男は愛液だらけの口の周りを舐め、立ち上がった。太ももを開かせたまま、自分のズボンの前を寛げる。

「だめだ、俺が我慢できねぇ」

 亀頭をぷすっと差し込む。

「あっ、痛っ」

 ネイサンの目が見開かれた。周囲がよけい盛り上がる。

「その女、処女じゃねーのか」

 たしかに、これだけ濡れているのに、なかなか入らない。

「そうなのか、女」

 マリエールはきっと睨みつける。ネイサンはうるんだ目でそんな保安官を見下ろした。

「初物いただいちゃえボス」
「そのあと俺たちで可愛がってやるぜ」
「はやくやっちまえよボス。どうせその女、連邦国の人間なんだ」

 マリエールがそれを聞いて目を見開いたその時だ。外で騒ぎがおこった。

 おそらく、見慣れぬ馬の集団が保安官事務所の前に止まっているのをみて、町民が騒ぎ出したのだ。

「ちっ、来い」

 ネイサンはマリエールを肩に担ぎ上げ、外に出る。

「あああ、保安官!」
「なんて姿を──」
「きさまらっ、その格好。なんでレクサス・レンジャーが!?」

 追いすがろうとする町民たちを、部下が銃で牽制する。

 ネイサンはマリエールを抱いたまま、一番大きな馬に乗って駆けだした。

 あばれるマリエールの耳にささやく。

「なあに、ゆっくり楽しもうぜ」
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