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第七章
罠に落ちた者たち
しおりを挟む三艦長は、ルチニアの臣に宮殿内部を案内されていた。
ドーム状の天井には海の女神の宗教画が、彩色タイルのモザイクで表現されている。
その鍾乳石飾りのアーチや浮き彫り装飾は、本土の教会にはない美しさだ。
孔雀の羽の模様もかくやという天井の下を通ると、巨大な水盤に湛えられた静かな水面が一同を迎える。
ちょうど採光窓からの陽光が水に反射し、天井に水面の揺らめきを映した。
思わず一行が溜め息をつくほど、繊細かつ緻密な構成だ。
「すごいな」
リッツがアルフォンソに囁く。しかし副司令官はブルッと震えながら首をふった。
「おれ、密集してるものダメなんだ。蜂の巣っぽいからじっと見てられねぇ」
フランソルが窓から外を見ると、この建物を囲むように四本のミナレットが立っているのが分かる。
「ここは、寺院ですか?」
フランソルの言葉に、案内役の初老の男が重々しく頷いた。
「王は海神の代理ですからな。王の居城は神の立ちよるところでなければならないのです。たしか貴方がたの国の王も、そうなのでしょう?」
アルフォンソとリッツが、フランソルの背後で顔を見合わせ、含み笑いをもらした。
うちの皇帝は自分が神だと思ってますよ、とは言えない。
フランソルが咳払いをする。
「ところで、王と我らが姫はどちらに?」
リッケンベルヘ大尉をはじめ、複数の海尉たちに付き添われたアンリエッタは、王と他大勢の家臣たちとともに、別の館に連れて行かれた。
「来客の館です。こちらには、女性は立ち入ることができませんので」
案内役はそう言うと、一際美しい回廊の先にある、アーチ型の扉に三人を案内した。
そう言えばこの爺、小指をやたら立てて歩くな。アルフォンソが一応聞いてみる。
「あなたは、チンコ無い系?」
「宦官です!」
彼は、扉の両脇に立っていた内股ぎみの兵士たちに、扉を開けさせる。
(こいつらもチンコ無い系か)
痛そう……リッツは思った。
扉が開いた途端、ふわっと馴染みの香の香りが押し寄せた。
一瞬客人たちは、目がくらみそうになる。
ややして、三人は同時に室内に目を向け、呆気にとられた。
「女性は立ち入ることが出来ない、って言わなかったっけ?」
リッツが唖然として呟く。
案内された大部屋の床上には、高価そうなルチニア絨毯が無数に敷かれ、酒の壷や、珍しい料理が並べられている。
その周囲に置かれた見事な刺繍の筒型クッションにもたれるように、ほぼ裸に近い褐色の肌の女たちが、身を横たえているではないか。
「この者たちは、いいのです」
案内役は大真面目に言った。
「ここは国王の後宮。彼女たちは、国王の妻たちです」
ぎょっとした三人の目の前で、ひときわ美しい女が腰をくねらせながら近くまでやってきた。
「取りまとめ役の、ラシャータと申します」
大して肌を覆っていない服。お腹は丸出しだし、ゆったり膨らんだ下衣は透け透けだった。
ビーズや小さなコインのたくさんぶら下がったブラを凝視し、リッツは思わず呟く。
「カイトの言ってたことも、あながち嘘じゃねえな」
ラシャータはにっこり笑うと、三人を中に誘い込む。
「長い航海お疲れでしょう。我が主人に代わり、妻であるわたくしたちが、あなた方をおもてなしいたします」
案内役は満足そうに頷くと、ラシャータに任せて去っていってしまった。
背後の扉が閉じられた途端、フランソルは警戒して周囲を見渡す。
しかし、室内には女しかいない。
ラシャータは、そんな艦長たちの腕に自らの褐色の腕を絡めると、宴の席に導いた。
「さあ、思う存分召し上がれ。ここにあるお酒も料理も、そして私たちも、あなた方へのねぎらいのため、王が用意したもの」
「あんたたちも?」
アルフォンソが耳ざとく聞き返す。
「ええ、王はあなた方を尊き客人と見なし、妻である私たちをお貸ししたのです。今宵は、お好きなだけ、ルチニアの女を堪能くださいまし」
ラシャータは三人の腰に目をやると、うっとり笑った。
「さぁ、銃と剣をお外しになって。そんな無粋なもの、この楽園では必要ありませんことよ」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
突然周囲が歪み、レオナール・リッケンベルヘは床に膝を付いた。
ルチニア王に連れられて、一部の士官たちと偽大使アンリエッタを警護しながら入った、王宮の一室だった。
(まずい)
そう思った時には、他の帝国の者達も次々と倒れふしていた。
しかし、同じ空間にいるサフワ王やルチニア家臣たちは、平然とレオナールたちを見下ろしている。
「おや、船旅でお疲れのようですな」
サフワは気遣うように、周囲を見渡した。
「すこし休まれるがよろしい。大使はこちらでお預かりしましょう」
サフワはうずくまっているアンリエッタを抱き上げると、香炉のたくさん置いてあるその部屋から出て行った。
レオナールはその後姿を見送るしかなかった。やがてその視界も霞み、意識は泥に飲み込まれていった。
一方、港に停泊した神風艦隊には、たくさんの料理が運び込まれていた。
兵士たちは珍しい異国のご馳走に迷わず群がり、香辛料たっぷりの料理に舌鼓を打つ。
上陸出来ない不満も忘れるほどの美味さだ。
ココナッツミルクの効いたカレーや、胡椒などスパイスがふんだんに使われた鶏肉には刺激があり、帝国の兵士たちの食欲を増進した。
そこに、強力な痺れ薬が含まれていることにも気づかなかった。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
盗賊たちに一巡されたころだろうか。マリアは身も心もボロボロに傷つき、泣きながら身を任せるだけになっていた。
ジョルジェはそんな彼女を救い出したくて何度も暴れたが、そのたびに殴りつけられ、もはや抵抗する力も残っていなかった。
再び海賊の首領の番に回ってきた。
「今度はすぐにはイかねえぜ、お嬢さん」
ぐったりした身体を抱き上げ、唾液だらけの頬に張り付いた金髪をどける。
高貴な顔立ち。だからこそ汚されていることが、よけいに海賊の首領を興奮させた。
腿を押し広げると、ドロリと仲間たちの精液が出てくる。
一瞬顔をしかめたが、構わずすぐに自分のを突っ込んだ。
「んっ……あぁあっ」
マリアの感度は衰えることが無いらしい。
十人近くに絶え間なく輪姦されたというのに、まだ腰をびくつかせる彼女に驚かされた。
それに、まとわりついていくるこの肉の壁。
何層ものひだが温かく包み込み、先ほどより強く締め付ける。
もう手下の前で恥をかきたくない。
手下も全員早かったが、彼はボスなのだ。もう誰にもダセーとは言わせない。誰にもだ。
「耐えてやるちきしょぉお」
海賊の首領は叫び声とともに腰を動かした。
「耐えなくて結構!」
と、突然船長室の扉が開き、大声が響いた。
床に這いつくばったジョルジェがやっとのことで顔をあげると、東風の艦長カイト・レンブランが、帝国の兵士に支えられて立っていた。
「勝手に俺たちの司令官オモチャにしてんじゃねーぞ」
怒りのあまり搾り出すような声で言うと、右手に構えた銃が火を噴いた。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
笛の音が聞こえる。
アンリエッタは、不可思議な空間にいた。
麝香のような香りが辺りを漂い、自分の肉体がその空気に溶けてしまっているかのような、心地のいい浮遊感。
すこし前に、ちょっとだけ試したことがある、新種の麻薬を吸った時となんとなく似た感覚。
体中が、熱を持っているかのように火照っている。
ざわり、と何かが身体を這った。
それは、火照ったアンリエッタの皮膚に張り付くように進む。
胸の谷間を這うように、ぬめぬめとしたモノが体を縦断し、やがて太腿をこじ開ける。
「あっ何? 嫌ん」
鳥肌が立つような、そんな愛撫。
腿をこじ開け、それはアンリエッタの秘所に潜り込もうとしている。
「あああぁああ!? 太いっ」
そして長い!
誰なの? こんなに立派なのを持っている殿方は。
アンリエッタはゆっくりと目を開けた。途端感じる複数の視線。
アンリエッタは驚いて身を起こした。
彼女は、大きな天蓋つきのベッドに横たわっていた。
その周囲を浅黒い顔の男たちが取り囲み、自分を食い入るように見つめている。
え? 見学?
「きゃぁああ」
アンリエッタは相変わらず秘所を攻撃してくるその物体の正体に、やっと気づいた。
真っ黒な大蛇ではないか。それも何匹も。
一匹の大蛇は黒い頭をもたげると、二つに裂けた舌をチロチロと出しながら、アンリエッタの豊かな胸をまさぐる。
もう一匹は恐怖で逃げようとするアンリエッタを羽交い絞めにし、彼女の自由を奪っていた。
そしてもう一匹は執拗にアンリエッタの花園を、そのひび割れた頭でこじ開けようとする。
「駄目っ、なんてことをあああぁああ!」
アンリエッタは必死にヘビの頭を抜こうとした。
ベッドのすぐ脇で笛を吹いていた男が、音色を変えた。
すると、三匹のヘビの絶妙な動きに拍車がかかり、やがてアンリエッタは嫌悪感も忘れて身を任せるようになる。
「あたし、こんなプレイ初めて。あんっあんあんあんっ」
自ら腰を浮かせてヘビの頭を迎え入れた。ぬるりと襞を掻き分け、ぐちゅっと音をたてながら潜り込む。
蛇頭は、彼女の子宮の奥にまで到達し、その首を上下左右に激しく動かした。
「ひぃあっ。イクっイッちゃうう」
周囲の男たちが興奮して身を乗り出す気配がした。
今のアンリエッタの姿は、まるで縛られた肉の塊のようになっている。
ヘビに巻きつかれた胸元は必要以上に強調され、大きな山が二つせり出し、その乳首は極限まで屹立していた。
そこへ、ヘビの頭が迫り、大きな口を開けてかぶりつく。
「いたぁいっ……あらん、痛気持ちいいわ」
きちんと調教されているようだ。ヘビは甘噛みを繰り返す。
観られている、縛られている、そしておぞましい大蛇に犯されているという異様な状況が、アンリエッタをこれまで感じたことがないほど高ぶらせた。
絶叫とともに、アンリエッタは頂点に達していた。
一瞬ぐったりした彼女だが、すぐにうっとりした目でヘビを見つめた。
「いらっしゃい。舐め舐めしてあげるわ」
ヘビは誘われるように、彼女の口元に近づいた。
アンリエッタはポッテリした唇を開くと、優しくヘビの頭をくわえ込んだ。
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