9 / 57
第二章
チチンカの屈辱
しおりを挟むロウコは呆然とした。
あの一瞬で何があった?
野営地には、ナシュカ族の男たちが血まみれで倒れていた。あちこち切り刻まれ服を裂かれている。
チチンカ・パイパイを見つけると、その身を起こして揺すぶった。
「何があった?」
「う……」
チチンカが目を開けた。
ロウコの底光りする紫の瞳から、辛そうに目をそらす。
「こんな無様な私を見ないでください。腰を……覆ってください」
そう言えば、衣服の中でもズボンの損傷が一番酷い。ビリビリに裂かれ、乱暴に剥ぎ取られている。
筋肉質の太腿から尻までが、むき出しだ。
「パンチラ族か!?」
チチンカは、目を閉じた。その目尻から涙が滑り落ちる。
「辱められた。こんな無様な我々を見ないで欲しい。あの者たちは見境がない。だが、貴方は特に美しいから……気をつけて」
……ケツ処女を奪われたということか。
大して興味もないが、一応形だけでも同情はしてやった。
「大丈夫だ。貴様は無様などではない」
なるほど、そう言えば砦から妻を連れ去られた開拓者たちも、皆屈辱に打ち震えていた。
妻を奪われたことに対する憤りではなく、おそらくケツを奪われたことへの──。
「ケツなどくれてやれ、男の尊厳はそんなことでは奪えぬ」
この男、性格のわりにけっこういいことを言う。チチンカが目を見開く。
「俺が復讐してきてやる。パンチラ族のケツの穴に神剣をぶっ刺してくる。だから安らかに眠れ」
チチンカは何か小さく囁く。ロウコが口元に耳を近づけた。
「なんだ? もっと大きい声で言え」
「…パッ…パッチラ族で……す。あと、致命傷では無いので勝手に殺さないで──」
ガクッと意識を失うチチンカ。
他の戦士たちも昏倒させられている。殴り倒されたのだろうか。全員生気はあり、殺されてはいないようだった。
それにしても、皆が皆、ズボンを剥ぎ取られたり破き取られたり──。
やたら服装を気にする男たちだったので、これは激怒するのではないか? そんなどうでもいいことがふと浮かんだが、すぐに首を振り、リンファオを探した。
しかし、彼女はいなかった。
と、いうか、土蜘蛛の『気』の気配もまったく感じられない。奴らを追ったのだろうか……。
しかし、焚き火の光に照らされた地面の上に、ある物を見つけ凍りつく。
「拐われたのか? あの小娘が?」
地に打ち捨てられるように転がっていたのは、土蜘蛛の面と、ひと振りの神剣。
──血まみれの『不死鳥』だった。
0
お気に入りに追加
29
あなたにおすすめの小説
隣の人妻としているいけないこと
ヘロディア
恋愛
主人公は、隣人である人妻と浮気している。単なる隣人に過ぎなかったのが、いつからか惹かれ、見事に関係を築いてしまったのだ。
そして、人妻と付き合うスリル、その妖艶な容姿を自分のものにした優越感を得て、彼が自惚れるには十分だった。
しかし、そんな日々もいつかは終わる。ある日、ホテルで彼女と二人きりで行為を進める中、主人公は彼女の着物にGPSを発見する。
彼女の夫がしかけたものと思われ…
隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました
ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら……
という、とんでもないお話を書きました。
ぜひ読んでください。
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
連続寸止めで、イキたくて泣かされちゃう女の子のお話
まゆら
恋愛
投稿を閲覧いただき、ありがとうございます(*ˊᵕˋ*)
「一日中、イかされちゃうのと、イケないままと、どっちが良い?」
久しぶりの恋人とのお休みに、食事中も映画を見ている時も、ずっと気持ち良くされちゃう女の子のお話です。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる