転生したら悪役令嬢を陥れようとした悪党でした【Ｒ１８】

まー、カモるのは変わらないよね

　店主に送っていくと言った手前、店から連れ出さなきゃならない。酔っ払いに居座られるのは迷惑そうだから。

　若者の腕を肩に担ぎあげ、どうにか店から引きずり出した。

　鉱山労働者舐めんなよ。

　本当なら昔よくやったように、このままどこかの連れ込み宿に押し込んで、相手に一発やったと思わせてお金を取るつもりだったけど、こいつは私の本性知ってるしな……。

　よし、道端に捨てて行こう。

　だって重たい魔鉱石を運んでいた訳じゃなくて、ひたすらピカピカに磨く細かい作業だったわけだからね。

　そんなに力持ちなわけじゃない。店から出すだけで精一杯。

　歩道に置き去りにし、車道を降りて反対側に渡ろうとした。

　午後の大通りは馬車が行き交い、なかなか渡れない。

　その時、ユベールの野郎がムクッと起き上がった。

「ううう、寒っ」

　フラフラと立ち上がり、前後不覚に陥っているのか、はたまたバカなのか、車道に出ようとした。

「ちょっ──」

　停車している乗合馬車の陰から、辻馬車が近づいてくるところだった。

　ほっとこうとは思ったけど、目の前で人に死なれるのは寝覚めが悪い。

　私は駆け出すと彼の腕を引っ付かみ、引きずりよせた。

　勢い余ってひっくり返る私は、そのまま舗装された歩道に後頭部を打ち付けていた。


　その瞬間、思い出した。

　前世の記憶を。


　私はこの世界の人間ではなかった。