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第五章

目覚めたら海の上

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 帝国軍が乗ってきた艦は、哨戒、偵察用の六等級のフリゲートのみである。

 あくまでも植民地視察という名目で行ったのだから、艦隊を率いて行くわけにはいかなかった。

 そんな戦う準備満載で近づいて、潜伏している敵に逃げられることを恐れたのだ。

 だが、ノヴァ島から来た同じ国の艦は、容赦無くレトローシアを脱出した彼らを攻撃してきた。



 どうなっているんだ。

 艦長のドゥーケは、艦尾甲板から相手の艦を呆然と見つめる。

「艦長っ! 艦長っ!! どうして我が国の艦隊が攻撃してくるんですかっ!?」

 舵輪にしがみついていた操舵手と、ビクナルにしっかり掴まっていた航海長の喚き声が響くが、ドゥーケには返事が出来なかった。

 そんなことこっちだって知りたい。

 気絶しているフランソルはまだ目が覚めないし、おそらく彼とて、明確な答えは出せないはずなのだ。

 一つだけ分かったのは、その艦が明らかにアリビアの艦のはずなのに、国旗がまだ帝国旗のままであったことである。

 再び砲弾を受け、船首の乗組員たちの身体が吹っ飛ぶ。

 散弾を用いているし、有効射程距離も長い。積み上げたハンモックの束など、何の防御にもなっていない。

(やはり我が国の砲だ)

 ドゥーケは歯ぎしりする。

「何の騒ぎだ?」

 声を聞いて、ドゥーケは安堵の涙を流しそうになった。梯子を登ってきたのはフランソル・ミシュターロだったからだ。

 自分の上司にぶん殴られて、無理やり船に詰め込まれたことを思い出したのかいないのか、どちらにしろ、その青い顔は引きつっている。

「攻撃を受けています。ノヴァ島の駐留艦隊かと──思われます」

 血だらけの副艦長が、艦尾によじ登ってきた。

「風上を取られていますが、この強風です。浸水の危険性があるので、やつら三層目の砲蓋は開けられないはずです。こちらから砲撃しますかっ?」

 フランソルは、まだぼんやりしている頭を軽く押さえると、首を振った。

「いや、大した装甲もしてない船底に穴を開けられたくはない。速度は我らの方が速い。とりあえず逃げろ」

 命令した途端、衝撃が襲った。

「お、遅かったみたいです、少将」

 浸水っ、繰り返します、中甲板浸水、という伝声管からの乗組員の叫び声。

 喫水下にくらったらしい。フランソルはまた気絶したくなった。




※ ※ ※ ※ ※




 何日経った? 時間の感覚が分からない。

 適度な休みを入れられ、同じことを繰り返された。食事も入浴もアカリア人の奴隷が世話をした。

 媚薬入りの香を焚かれているせいと、度重なる輪姦で疲れ、ぐったりしたカティラ。

 そんな彼女を抱き上げ、湯浴みさせている時も、いやらしい目と手つきで洗われる。

 サルヴァトーレはいつまでこんなことをさせるのだろう。他の皆は、どうしているの? 

──ゲルク……まだ帰ってきてないのだろうか。


 カティラは一人の時間を見計らい、なんとか脱出しようと部屋をうろついた。

 足輪を外されても、窓には頑丈な鉄格子がはまり、ドアにはもちろん鍵がしっかりかけられている。

 カティラはそこからアカリア人たちがやってくるのを恐れた。

 ちょうど、奴隷部屋にモンテール・ファーガソンが訪れるのを恐れていたように。

 一番傷ついたのは、アカリア人たちによる陵辱のせいではない。

 幼馴染が、いつもそれを冷ややかな目で傍観していたことだ。

 カティラが姦されているところを、ずっと見ている。

 あれほど助け合い、励ましあい、奴隷時代を耐えてきたのに、この仕打ちは何だろう。

 悔しくて涙がこぼれた。犯されながら、カティラは悔し紛れに言う。

「貴方のこと、好きだったのに」

 サルヴァトーレは肩をすくめた。

「僕は今も好きだ。だけどあなたは、僕を……僕を裏切った。僕を置き去りにして、他の男のモノになった」

 裏切った?

 カティラは奴隷に背後から突かれながらも、気丈にサルヴァトーレを睨みつけた。

「一緒に行こうって、言ったわ」
「僕は残れと言った」

 平行線だ。カティラは仰向けにされ、のしかかられながら唇を噛んだ。

 奴隷がその唇に口づけしようとすると、サルヴァトーレは激しく怒り狂い、奴隷を殴りつける。

「そんなことはするな。身の程を知れ」

 キスはダメで、姦すのはいいわけ? カティラには訳がわからない。

 不思議なことに、部屋に奴隷しかいない時も、口にキスをされそうになると、どこからかサヴィが飛んでくる。

 覗き穴でもあるのだろうか。


 その時、扉がノックされ、執事のような小奇麗な身なりの男が入ってきた。

 サルヴァトーレの耳に何事か囁く。彼は立ち上がった。

 アカリア人たちに命令する。

「今日の分のお仕置きはまだ終わってない。僕……私が戻るまで続けろ。ただし身体に傷をつけたら殺すからな」
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