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第1章

あったかい

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「イオン、なに拗ねてんの?」

「拗ねてないもん。」


サラダを盛り付けながら、こっちも見ないで返事をするイオン。分かりやすいわねぇ。

「イオンはリュートさんのこと好き?」

「な!ななな、何言ってるの?母さん。」

「あら、それじゃ嫌いなの?」

「いや、その…嫌いじゃない…デス。」

イオンの肩に乗ってるまうちゃんは、イオンと私の顔を交互に見ている。ほんっと、可愛いわね。まうちゃんもイオンも。

「素敵な出逢いをしたい、そして恋をしたい、可愛いお嫁さんになりたいって言ってたの誰だっけねー。」

イオンの隣に立ち、頭に手を乗せる。

「イオン、恋ってね、楽しくて、ドキドキして、めんどくさいものなのよ。」

「え、めんどくさいの?」

「そうよ。」

「母さんも父さんに恋をしたときめんどくさかった?」

「そうね、めんどくさかったわ。色々と。でも、ジョルジュの気持ちはめんどくさいなんて思ったことないのよ。」

「じゃあ、何がめんどくさかったの?」

「んー、そうねぇ。1番めんどくさかったのは、辺境伯の旦那かな。」

「ぶふっ。」

「ま、この話はまた後にしましょ。みんなお腹空かしてるわ。」








母さんに姉さんのことを任せて、僕とリュートさんは、父さんの座ってるテーブル席に着いた。

「あの、ジョルジュさん。」

「ん?なんだい?」

剣の手入れをしていた父さんが顔をあげる。分かりやすく緊張してるリュートさん。

「私は、家族の温かさを知らずに育ってきました。赤ん坊の時に、教会の前に捨てられたんです。神父様に拾われた後、孤児院で育ちました。今日、初めてお会いしたのに、家族団欒の食事に誘って頂いて、とても嬉しかったです。」

「そうか。」

そう言って、父さんはリュートさんの顔をじっと見ている。ふざけていない時の父さんは、騎士団長だけあって、目ヂカラが凄い。それでも、目を逸らさずにリュートさんも父さんを見ている。


「私は、イオンさんに好意を持っています。」

「そうか。私もだ。」

いやいや、父さん。それはちょっと違うよね。

「イオンさんにはまだ、自分の気持ちを伝えていませんが好きになって貰えるように努力したいと思っています。」

「ま、この先どうなるかはわからないけどな。男として1つだけ言っておく。女を泣かすような奴は認めないからな。」

「はい!」


なんかカッコ良くまとめちゃったよ。
さすが父さん。

と、そこに母さんと姉さんが晩ごはんを運んできた。

「ご飯にしましょ!」

「まう~!」

まうちゃんもなんだか楽しそう。

最初はなんだかぎこちなかった姉さんも、
食事が進むにつれ、いつもの調子に戻った。リュートさんは、母さんと姉さんにも自分の過去の話をして、みんなで食べるご飯はとても美味しいと楽しそうに笑っていた。僕は、この家族団欒を普通だと思っていたけど、そうじゃないんだね。これは幸せな事なんだ。

と、考えたところでふと思い出した。
兄さんはいつ帰ってくるんだろ?













(なるほどねー。そっかそっか。ひとりぼっちだった卵(ドラゴン)と孤児だったあいつの魂が引き合ったのかもねー。ねー、イオンちゃん、聞いてる?)

うん。聞いてる。

(あいつもドラゴンもイオンちゃんを好きになる気持ち、なんとなくわかるなー。イオンちゃんの魂ってさ、あったかいんだよ。ほんわかしてるっていうの?そんな感じなんだよね。)

ほんわか…か。チャリバーもそう感じるの?

(そうだね。ま、俺とイオンちゃんは魂が引き合ってるわけじゃなく、別の共鳴してる関係だけど、魂のあったかさはわかるよ。)

ふーん。
ベッドに横になり、まうちゃんを撫でる。

(今日は色々あったんでしょー?もうおやすみ。俺ももう黙るよ。)

うん、ありがとう。おやすみなさい、チャリバー。
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