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第1章

荷馬車でゴー!

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オソメさんとジェフリーさんがそんな会話をしていたことなんて、つゆしらず。
私はいつも通りにお屋敷で仕事をしている。

「今日もまうちゃんと家に居るから安心して仕事してきてね!」

と、カミュが言ってくれたので安心。
仕事が終わったら、リュートさんも一緒にみんなで晩ご飯を食べることになっている。流石に連日顔を合わせていると、リュートさんとカミュの火花も出ないかと思いきや、私が見ていないところでバチバチとやっているそうだ。まうちゃんが教えてくれた。さーて、今日も残業回避すべく頑張ろうっと!


「イオンちゃん、ちょっと御使い頼まれてくれない?」

おっふ、びっくりした。
背後から先輩侍女さんが声を掛けてきた。

「はい!」

「良いお返事ねっ。マンドリル商会でこれを受け取ってきて欲しいんだけど…。」

控え書きを手渡された。

「代金は先に支払い済みだから。あ、でもちょっと重いかもしれないのよね。」

「大丈夫です!わかりました。早速行ってきますね!」

と、お屋敷を出て、てくてく歩きはじめた。

マンドリル商会は、あのロザリーさんのお父さんが営んでいて、『なんでも揃うマンドリル商会!』と言われるくらい手広く色々な品物を扱っている。

最近では、ロザリーさんも若い女性向けの商品を担当していて、なかなか評判も良いみたい。1人娘だから、将来はお父さんの跡を継ぐのかなー。




商会は街の広場に面していて立地もサイコー!店構えも立派だった。

「こんにちわ~。」

「いらっしゃいませ!あら、イオンさん。」

どどーん、とロザリーさんが店内に仁王立ち。迫力あるぅ。

「あ、ども。今日は、注文していたお品物を受け取りに来ました。これが控え書きです。」

「かしこまりましたわ。少しお待ちになってね。」

お店の奥に行き、両手で抱えるくらいの大きな箱を持って戻ってきた。
あちゃー、なんか重そう。私、持って帰れるかな。

どんっ、とカウンターに置き
「こちらになりますわ。」

「あのー、ロザリーさん。私、この中身が何か聞いてないんですが、何が入っているんですか?」

「ええと、伝票には贈答用天使のソース20セットって書いてありますわ。」

天使のソースかよ!
あれ重いんだよね…。婆ちゃんとの買い物を思い出す…。しかも贈答用のセットって…。誰にあげるの?

「はぁ、わかりました。」

「ねぇ、宜しければうちの荷馬車でお送りしましょうか?」

え、ほんと?ロザリーさん優しい~。

「ありがとうございます。助かります!」


て、なぜ?
1頭立ての4輪の荷馬車の御者台には、
ロザリーさんと私が座っている。

「ロザリーさん自らが送ってくれるなんて…。馬車を操れるなんてすごいですね。」

「これくらい、朝飯前ですわ。それより、ちょっと貴女とお話がしたかったんですの。」

「はぁ。お話ですか?」

またジェフリーさんのことかなーって思ったんだけど…。

馬車はゆっくりと動き始めた。
ロザリーさんは、真っ直ぐ前を見ながら、
少し憮然とした表情をしている。

「今年の向日葵の精について、貴女何か聞いてらっしゃる?」

あ、そっち?

「参加者が6人になったっていうのは聞いてます。」

「5人ですのよ。1人減ったんですの。」

「えっ。」

丁度、私以外の5人でメイクレッスンをしようということになって、集まった帰りに階段から落ちてケガをしたそうだ。あれ?なんで私誘われなかったんだろ。

「それを、聞いた私、女の勘が閃きましたの。何か怪しいって。」

また女の勘デター。あ、オソメさんはオカマの勘だけど。

「色々と考え過ぎて、疑心暗鬼になりつつありましたのよ。」

いや、誘われてない私の方が疑心暗鬼なんだけど。

「ちなみに、そのメイクレッスンていつだったんですか?」

「2日前のことですわ。」

あ、その日は確か仕事終わって、急いでリュートさんと待ち合わせの場所に行って、オソメさんの工房に顔を出して…と忙しかったんだっけ。

「貴女にも声を掛けようと思ったら、もうお屋敷に居なかったんですのよ。」

そういうことだったのね。仲間外れかと思っちゃった。

「初めは貴女が何かしたのではないかと思ったんですのよ。」

何かとは!何ですかねー?

「参加者を減らす裏工作をしているかと思ったんですの。でも、貴女みたいな天然でボーッとしてる方にそんなこと出来る訳がありませんものね。」

ちょっと、ディスられてるんだけど…。

「それで、辞退した方々に1人ずつ話を聞いてみたんですの。こういうやり方が1番許せないの!」

グッと眉間に皺を寄せたロザリーさんは、
とても凛々しかった。ただ、フリフリロリロリのワンピースには似つかわしくなかったけど。
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