防御に全振りの異世界ゲーム

arice

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  さて、ユナが使い魔になってから次の日


「金を稼ぎに行こう。ギルドあんのかな」


「あるよー案内してあげるよ」


  との事なので、大人しくユナについていくことにしよう。



「ここが、この街のギルドだよー」


  ふむ、何処からどう見ても民家だな。まあ、金さえ稼げればなんでもいいや。


「すいません」


「いらっしゃいませ!  今日はどう言ったご用件でしょうか? 」


「依頼を受けたいんですが」


  俺は、受付の人に腕輪を見せながら言葉を続ける。


「今、この通り最低クラスなので出来るだけ難易度の高い物をお願いします」



「そうですねぇ……それでしたらこちらなんか如何ですか? 」


  受付の人に渡された依頼書を受け取り内容を確認する。


「ベヒーモス 一頭の討伐か……因みにこれ、何人用ですか? 」


「そちら、三重奏トリオ用となっております」


  3人用のクエストを二人でやらないと行けない訳か……。まあ、ユナも居るし大丈夫だろ。



「分かりました、これを受けさせて頂きます」


  俺は、誓約書にサインと血判を押しギルドを後にした。


  ちなみに、二重奏デュオとか三重奏トリオなどはただ単に難易度を表すだけなので一人で三重奏トリオとかを受ける事が可能だそうだ。


  まあ、そんな事するのは命知らずか余程自分の腕に自信がある奴の二択だけどな。



「何受けたの?  」


「ん?  ベヒーモスの討伐。金も良かったしこれくらいの難易度だったら行けるだろ」


「ちなみにいくら?  」


「一人辺り2万レイス。俺達は二人だから多分もうちょい貰えると思う」


「了解」



  俺達はベヒーモスが居る山岳を目指して街を出た。転移を使わなかったのは向かう途中に出てくる魔物を狩って素材を会得する為だ。



「ここが、ベヒーモスの住処のレギス山脈か」


「でかいね」


  確かに。デカすぎる気もするが……。デカさは見た感じ富士山くらいかな。


「星奈 何処に居るか分かるか?」


『んー、そこら中に血の匂いと獣の匂いがするから分からないね』


「そうか……。リンネ!  空からはどうだ!?」


『無理だな、霧が濃くて全く見えぬ』


  こうなったら足で探すしかないか……。めんどくさ。


「それじゃ、適度に休憩を取りながら進もう。それと、ユナ?  いつまで外に居るんだ?」


「え?  ずっとだよ? 」


  ユナを戻そうとするも一向に帰ってくれないのだ。
  んで、使い魔達がどこに帰るのかと言うと基本的には、主人の身体の中が住処となっている。


「まあ、いっか。遅れずについて来いよ?」


「はーい」


  それから、俺達は自分達の勘を頼りに歩き回り、たまに向かってくるゴブリンなどの下級魔物を殺しては素材を回収しながら頂上を目指した。



「はぁはぁ、つらい」


「全然いねーな」


「気配すら感じないねー」


  て言うか、そもそもこんなクソみたいに広い所から探せって方が無理だよな。


「一旦この辺で休憩しよう。ユナ、火を焚いてくれ」


「おまかせ~」


  ユナが、人差し指から小さい火の玉を出し俺達が集めた木材に火をつける。


「しかし、冷えるなぁ。シオン、大丈夫か?」


「このパーカーのお陰で寒くないよ。ありがとう」


  シオンは、ぬこ耳パーカーのフードを深く被りながらはぁっと息を吐く。


  この気温だしあんまり長居はできないな……。早く見つけて温泉に入ろう。


「ねぇ、二人とも?  ラブラブな所申し訳無いんだけどね……後ろ危ないよ?」



  と、ユナの言葉に後ろを振り向いた瞬間ベヒーモスと思われる魔物の一撃が俺を襲った。



「ガハッ!!  いってぇ、んの野郎よくもやりやがったな」


「ユナさん!  もっと早く言ってよ!!」


「いやー、なんかラブラブだったから入りづらかったよ」


  ふざけんなよまじで……あと一歩障壁が間に合わなかったら俺死んでたからね?  


「まあ、いいや。さて、ようやくあったまれるな!  シオンは左から頼む」


  俺は、口の中の血を吐き出しシオンとは逆の方向からベヒーモスに突っ込む。


「ガルアァァア!!」


  ベヒーモスが振るってきた前足を、体を捻り避けそのついでにベヒーモスの前足の甲を切りつける。


「おっほ!  かってぇ!!」


  そして、着地と同時に距離を取りシオンに向かっていた尻尾をハンドガンを撃ち弾き返す。


  シオンの振るった大鎌がベヒーモスの後ろ足を切りつけるがかすり傷が付いた程度だった。


「硬い……どうすれば」


  俺とシオンの組み合わせってどうも火力が圧倒的に足りないらしい。だから、こうして物理防御の高い奴が出てきたら今みたいに苦戦を強いられるんだよ。


「ここで、星奈とかの力を借りるのはずるいような気がするな……」


「星奈ちゃんとかは強すぎるんだよ。来て、コクア」


『お呼びですか!  む?  ベヒーモスかこれはまた厄介な』


  どうやら、シオンは使い魔と一緒に戦う様だ。


「どうする?  星奈も行くか?」


『うーん、めんどくさいかなぁ』


「私も遠慮しとくー」


『我の出る幕でも無いだろう』


  ……うちの使い魔達はなんでこうもやる気が無いのだろうか?  俺のせいか?


「じゃあ、ユナ。星奈を頼むぞ」


「はいはーい」


  俺はユナに星奈を預け軍刀を握り直しベヒーモスへ突っ込む。


  俺に向かって来ていたベヒーモスの前足をコクアが体当たりで弾き尻尾をシオンが切り裂く。


「ナイスアシスト!!」


『主の為だ、お前の為じゃ無い』


  えぇ……何もしてないのに嫌われたんだが。



  ベヒーモスの頭突きを滑り込みで避け地面を滑りながら回転しベヒーモスの足を切り裂く。


  身を翻しベヒーモスの尻尾の付け根を切り裂き背中を走りベヒーモスの目にハンドガンを放ち、着地と同時にシオンを抱きかかえその場から離れる。


  その瞬間、さっきまでシオンのいた場所に火炎放射が吐かれ地面が溶けていく。


「ふぅ、間一髪って所だな」


「リン君……そこは」


  と、どうやらお胸様をがっつり掴んでた様だ。


「さて、どうするかな。これだけやってさほどダメージは見られないか」


  ベヒーモスが口に炎を溜め炎を球の形に形成していく。


「あのデカさ……避けれないな。なら……」


  ベヒーモスが、一度炎を飲み込み火球を放つ。その大きさは俺達の視界を覆う程の大きさだった。


「初披露だ。【フレイ・シルド】」


  俺達の前に真っ赤な丸い盾が現れ火球を消しとばす。


「今のは……」


「炎属性の魔法、攻撃に耐性のあるシールドを張る魔法だ。他にも色んな属性に対応した魔法があるぞ」


これが、無属性の利点だ。



「さて、とどめ行くぞ?」


「うん」


  俺は障壁でシオンを空へ押し上げベヒーモスの注意を引く為にハンドガンを撃ち続ける。


「お、こっち向いたな?  コクア!!」


『分かっておるわ!!ゆけ!!  主!』


  コクアが自分の前足にシオンを乗せ力一杯にシオンを投げ飛ばす。


  投げられたシオンが銃口を後ろに向け引き金を引き更に加速する。


「これで……終わり!!」


  物凄い勢いで、シオンが鎌を振るいベヒーモスの首を一刀両断する。


  着地の時に地面に小さいクレーターが出来たところを見ると相当な速さだったみたいだな。


「何とか、勝ったな」


「ちかれた」


  俺は、コクアにもたれ掛かるシオンを横目に見ながらベヒーモスを解体して行く。


  帰りは、シオンが疲れたとか言って転移で帰る事になった。


「はい、確認しました。ベヒーモス討伐完了とさせて頂きます。こちらが報酬とそれから、こちらをお受け取り下さい」


  報酬を懐に入れ、青色のブレスレットを渡された。


「え?  もう輪舞曲ロンドですか?  俺達まだ、一個しかクリアしてませんが」


「はい、ベヒーモスの討伐は本当はギルドに正式に参加しているメンバーが3人がかりで倒す魔物でございますので」


  ほぁ!?  おかしいな……俺はロークラス用の依頼を受けた筈だったんだが……。


「まあ、いいや。ありがとうございます。また来ますね」


  俺は受付の人に手を振り返しギルドを後にした。



「よろしかったのですか?  ギルドマスター」


「ああ、あいつらには丁度いい依頼だったろ。さて、わしも仕事の続きをしようかの」


  ギルドマスターと呼ばれた仙人みたいなおじさんはほっほっほっとあご髭を撫でながら自室へと帰っていった。
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