防御に全振りの異世界ゲーム

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ダンジョン「始まりの洞窟」–3–

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「レイン!  右から来るぞ!」


「おうよ!」


  中央の道に進んだ俺たちは今、ゴブリンの群れと戦闘をしていた。
  右の道みたいに罠とかは無かったがいかんせん敵が多く苦戦中。


「くそ、こいつらどんだけ出てくるのだ」


「ベリアさん!  後ろ!」


  ベリアの背後から三匹のゴブリンがベリアに向かって小刀を振り下ろす……がベリアに当たる前にルナの放った矢によってゴブリン共が絶命する。

「助かったぞい」


「お礼は後よ!  リン!  どうするの?  このままじゃ消耗していくだけだわ」


  そうだよな、倒しても倒しても出てくるし…。


「突破するしかないか……お前ら遅れずについてこいよ?」


  俺は、軍刀を構え直し正面に展開されていたゴブリン達を切り裂き道の奥へと突き進む。



「はぁはぁ、何とか巻いたか」


「リン君、これって……」


  俺達の前にはでかい鉄の扉があった。


「恐らく、ボス部屋だろうな」


  この禍々しい気配と言い、敵の数と言いどうやら中央の道が正解の道だったらしい。


「開けるぞ?」


  俺が聞くと全員が頷くのを確認し扉を開ける。そしてその瞬間、黒い波導みたいなのが俺達を襲った。


「ダメージは無い?  今のは何だったんだ?」


  俺が疑問を口にするとレイン達では無い声が聞こえてきた。


『【絶望の波導】当たったものを絶望に追い込む魔法だ。しかし、お前には効かなかった様だな』



  扉の奥からのそりと象の頭を持ち腕が4本生えている化け物が姿を現わす。


『我が名はイビルエレファント。このダンジョンを作ったものだ。よくぞ、ここまで辿り着いた!  まずは、褒めてやろう。
  しかし、絶望の波導を受けたそこの四人はもう使い物にならないな』


  イビルエレファントが口を開けて笑いレイン達を指差す。


  俺が、レイン達の方向を見ると全員がうつ伏せで倒れ苦しそうな声を上げていた。


「なるほどね、過去のトラウマを思い出させる魔法か」


『ほぉ、絶望に落ちないどころか効果を見破るとは大した奴だ』


  俺は、シオンの近くにしゃがみこみシオンから流れていた涙を指で拭き取る。


「戯言はいい、さっさとかかってこい」


『ふん!  強がりを、ならば今ここで殺してやる!』


  イビルエレファントが振るってきた4本の斧を俺は軍刀を逆手に持ち防ぐ。


『な!  受け止めるどころか、微動だにしないだと!?』


「お前は、してはいけないことをした様だな……シオンを泣かせやがって……楽に死ねると思うなよ?」


  俺は、軍刀で斧を全て上へ弾き怯んだイビルエレファントの肩から腰にかけて斜めに切り裂く。


『ぐわぁぁ!!な、何だお前は!!  なんなんだよ! こんな奴がいるなんて聞いてないぞ!  ミレイス!』


  さっきの威厳が嘘みたいにイビルエレファントは化け物を見るみたいな目をして俺を見つめる。


「おいおい、まだ戦えんだろ?  やろうぜ?」


  逃げようとしていたイビルエレファントの鼻を掴み鼻を切りとばす、鼻を投げ捨て4本の手を切り裂き腹に蹴りを入れる。


「あ、あいつあんなに強かったのか……」


  イビルエレファントが弱った事によって魔法の効力が落ち、レイン達が意識を取り戻した様だ。


「お前らもうちょい寝てていいぞ……おっと、お前はどこに行くのかな?」


  這いずりながら逃げようとしていたイビルエレファントの足を切り飛ばし背中を踏みつける。


『た……すけてくれ』


「ん?  ごめん何だって?  聞こえないわ」


  背中を踏みつけながら背中にハンドガンを撃ちまくる。


「リン君……」


「あんた!  もうやめなさいよ!」


「……やり過ぎた」


  ルナの声に我に返った俺は下でビクビクっと痙攣しているイビルエレファントを見てため息を吐く。


  そして、軍刀で首を切り飛ばし軍刀に付いた血をふるい落とし鞘に納める。


「ゴーレムの方が強かったなぁ」


  イビルエレファントは、魔法防御が高い変わりに物理防御が圧倒的に低い魔物だ。本来なら、こんな森には居ないはず……いつもは、魔界に生息している筈なんだが。


「ミレイス……誰かは知らんが良い度胸だ」


  レイン達の無事を確かめる為に振り向いた瞬間ルナからのきつい平手打ちが俺の頬を捉え、いい音が洞窟内に響く。


「いくら相手が魔物だからってやり過ぎよ!」


「……悪かったよ」


ってぇ、女からの平手打ちとか久しぶりに食らったわ……。


「悪い、先外出てるわ」


  ダンジョンと言う物はボスさえ倒せば道中の雑魚は逃げて行く為帰り道は安心して帰れる仕組みとなっている。



  俺は、入り口から少し離れた岩に腰掛け王国で買っていたスモークウッド……所謂、タバコに火をつけ煙を吐く。


  ちなみにスモークウッドは害をなす成分が一切入っておらず、逆に体にいい成分が多く含まれていて、匂いもスモークウッドによって異なる為、愛用している人が多数いる。


「リン君……」


「ダメだな俺は……キレるとすぐ周りが見えなくなる」


  スモークウッドを人差し指と中指で挟みながら空を見上げる。


「私の為に怒ってくれたんだよね?」


「どうだろうな……」


  俺はスモークウッドを投げ捨てながら立ち上がる。
  あ、スモークウッドは土に還るからな君達はポイ捨てなんてしちゃダメだぞ?


「さてと、暗くなるのはここまでだ。レイン達と合流しようか」


「うん」


  その後、レイン達と合流をしてルナに謝罪とお礼を言ったが目も合わせてくれなかった。


「これから、リン達はどうするんだ?」


「湯の町に向かう、そこからは帝国を目指す」


「そうか、ならここでお別れだな」


「わしは、この先の村で用事があるからわしもここでお別れじゃな」


「…」


「そっか、じゃあまた何処かで会えたら飯でも食いに行こうぜ」


「そん時はリンの奢りだな」


「おいおい、俺はロークラスだぞ?  レインの奢りだろ」


っと、言葉を交わし俺達は別々の方向へと歩き出す。



「……んで、ルナはなんで付いてきてんの?」


「勘違いしないで方向が一緒なだけよ」


  ルナは冷たく言葉を返す。


「星奈、一気に行こう」


『え?  いいけど、あの子は?』


  んー、そうだなぁ。俺が悪かったしなぁ。


「乗って行くか?」


「フェ、フェンリル!?  貴方、何者なのよ」


「しがない旅人さ」


  俺は、シオンの手を引っ張り星奈の背中に乗せルナに向かって手を差し出す。


「方向が一緒って事は湯の町通るんだろ?  ついでだし乗ってけよ」


「貴方の手を借りるのは感に触るわ。お断りさせて貰うわ」


あーらら、嫌われたもんだなこれは……。


「そっか、じゃあルナも元気でな」


「バイバイ」


  シオンが手を振るとルナは目を背けながらも手をシオンに向かって振り返す。


『それじゃ、落ちないでね』


  星奈が、力強く地面を蹴ると俺達の姿が一瞬で見えなくなる。



「ふふふ、いいおもちゃみーっけ」


  リン達が去った後ルナは三日月型に口を歪め、その場から姿を消す。
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