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新たな仲間と王国へ
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「はぁはぁ、うっそだろ? 遠すぎるぜ」
割と歩いてる筈なんだがさっきから周りの景色が変わってる気がしない。
「ふぅ、一旦休憩がてら魔法の練習でもしようかな」
と、俺が魔法を発動しようとした所で後方から叫び声が聞こえた。
「めんどくさい予感……。でも、見殺しってのも目覚め悪いよな……」
深いため息をつきながら立ち上がり声のした方向へと歩き出す。
男に飛びかかって来ていた小さい狼と男の間に割り込み魔法を展開する。
「【障壁】」
俺と男を囲む様に四角形の壁が出来上がり、壁に当たった狼の牙が見事に砕け散る。
あ、やっべ……魔力込めすぎた。やっぱり加減が分かんねーな。
俺は、魔法を解き一度男の方に目線を送り痛みで転げ回ってる狼の元へと近づく。
「ほら、大人しくしろって。いった!! 噛むなよ! 悪かったって! 」
腕に噛み付いている狼を優しく引き剥がし回復の魔法を唱える。
「【ヒール】」
男が何か言っているが……どうしよう、聞いてあげた方がいいのかね?
「何故、治す! そんなゴミささっと殺してしまえばいいだろう! 殺せ!」
こいつ……相手が弱った途端に態度がでかくなりやがった……一番嫌いなタイプだわ。
などと、思いながら男を見ていると目に少しの痛みが走った後、頭に文字が流れ込んできた。
名前【レミア・アラントン】
属性【炎】
年齢【18】
なんだこれ……あぁ、これが天使の眼の効果ねにゃるほど。
俺は、男から視線を外し大人しくなった狼を見る。
種類【ゴーストウルフ】
属性【闇】
備考
伝説に出てくる魔物。その毛皮は高値で取引される事から乱獲され、今では絶滅危惧種としてギルドに登録されている。
ここ、数十年の間存在が確認されておらず、絶滅したと言う説も浮上している。
受けた恩は必ず返すと言う義理堅い魔物でもある。
伝説の魔物ねぇ……て言うか、こいつ子供だよな?親は何処に行ったのかね。
周りの魔力を探るもそれらしい魔力は感じられなかった。
「おい! 聞いているのか! 早く殺せ! この俺様を襲った奴だぞ! 万死に値するだろ!」
「うるさいよお前。やりたきゃ自分でやれよ。その腰に付いている立派な剣は飾りか?」
「ぶ、無礼だぞ! 俺様を誰だと思っている!?」
「いや、知らねーし。興味もないし。ちと、うるさいから眠っててくれな?」
俺は、男の腹を殴り気絶させ木に向かって蹴り飛ばす。
……強くね? こんなに、身体能力高くなかった筈だが……っとそれより今は……。
俺は、狼の方を振り向き目線をなるべく近くする為地面に座り込む。
「多分、分かんないと思うけど親は? 」
「……」
狼は、首を傾げ不思議そうに俺を見ていた。
まあ、だよな……さて、どうしたもんかなぁ。
こう言う時に魔法でなんとか出来ればいいんだが、今の所それらしい魔法は見当たらないしなぁ。
俺が、顎に手を置き考えていると頭に声が響いた。
(えっと、聞こえてるかな?)
「ふぁ!? 誰だ!? 何処にいる! 」
女の声だったな……サリエルか?
(何処も何も君の足元にさっきから居るよ?)
俺の足元? っと、言う事は……。
俺は、狼を見つめ「ハハッ……まさかな」と呟く。
(そのまさかだよ! さっきは治してくれてありがとう! まあ、私の牙を折ったのも君なんだけどね。)
「えぇ!! お前、喋れんの!? と言うか、牙を折ったのはマジでごめん」
(喋れるって言うか、テレパシー的な奴だよ。牙を折ったのはいいんだよ。
治してくれたしねーそれで、何かお礼をしたいんだけどあいにく今、何も無くて……)
狼は耳をしゅんとさせ、俯く。
やっば、馬鹿みたいに可愛い。
どうしよう……頭撫でたら怒られるかな……でも、ちょっとだけなら。
(あははは!! くすぐったいよぉ!)
「あ、体が勝手にすまん。それにしてもお礼かぁ。別にいらないけどなぁ」
折ったの俺だしそれにしてもこいつ、毛ふわふわだな。気持ちよっ。
(そう言うわけには行かないよ! 私のプライドが許さないもん! あ、そうだ! なら君が死ぬまで私を使い魔として側に置いてくれないかな? 私、まだ子供だけど役には立つよ!)
「うん、まあ別にいいんだけどさ。お前、親は?」
と、俺が聞くと狼の顔が暗くなっていった。
はい、おきまりの地雷踏んだなこれは。
(私が、赤ちゃんの頃に殺されちゃった……)
「それは、悪い事を聞いた。すまん」
(ううん、いいの。過ぎた事だし……)
空気が重い……この空気は耐えられない……ので、契約してしまおう。
「汝、盟約に従い我が使い魔として身を捧げる事を誓うか? 」
(誓います)
狼が、そういうと、俺と狼の間に一枚の紙と黒く光る万年筆が現れる。
俺は、その紙に自分の名前と狼につけた名前……星菜と書き加え狼の前に差し出す。
(星菜……いい名前をありがとう)
星菜が、紙に自分の肉球を押し当てると紙が半分に分かれ俺と星菜の中へと消えていった。
これが、この世界の使い魔契約で今のは契約書。主人となる方が、二人の名前を書き相手が名前を気に入ってくれると契約が完了するって感じだ。
あの、万年筆は契約する者の属性によって光の色が異なり違う色の万年筆では契約はできない。
「さて、契約も済んだし。早速、聞かせて貰おうか」
(何を?)
星菜は、俺の足を必死によじ登りながら聞き返してくる。
「……王国への道をだ」
(なんだ、迷子なのね。それならあっちだよ……って凛! 鼻血! 鼻血! )
「おっと、星菜が可愛すぎて鼻血出ちまったじゃねーか」
(え? 私の所為なの?)
俺たちはそんなたわいもない会話をしながら王国を目指した。
男? 勿論、放置だ。まあ、死にはしないだろう。
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