王立魔法図書館

『犯罪のない国調査記録』

　あるところに、「犯罪のない国」と呼ばれる国があった。

　今、全世界で異常気象、環境破壊、食糧不足など問題が多発している。そんな中、犯罪のない国なんて存在しないと言われていた。

　しかし、その国は世界犯罪調査委員会の報告によれば犯罪数が0だったらしい。

　そこで私は、その国へ出向き調査することにした。




　その国が今に至るには以下のようなことがあったのだ。

　そもそも、犯罪とはなんだろうと考えたこの国の人々は

「法律で殺人を犯罪と言っているから犯罪である。我々は法を増やしすぎた。かつて我々が神の下で暮らしていた頃には人間がしてはいけないこと、つまり罪は１つだけだった。ならば法律をなくせば罪が減るではないか！！」

　そう考えたらしい。

　なるほどこうやって犯罪の種類を減らすことによってあたかも犯罪のが少ないようになっているのか……

　これが“犯罪のない国”の正体か……













　







　しかし、さらに調べてみるとそうではないことがわかった。

　法律を無くしたところでこの国の犯罪は減らなかった。むしろ犯罪(一般的な国での犯罪であり当時のこの国では犯罪はでない)は減らなかった。

　“犯罪ではない”＝イコール“やっていい”ではないという行政の声も届かず犯罪は増加していった。

　その結果、国は荒れに荒れ衰退していった。食料の奪い合い、意味の無い殺人、環境破壊など国は崩壊し国民はたくさん死んでしまった。

　そして国民は1人残らずいなくなった。

　そしてこの国で犯罪はなくなった。


　── 『犯罪のない国調査記録』ソイ・モース著より一部抜粋